壊滅的な威力を持つ小惑星から人類を守る計画

*この日本語文書は国務省の国際情報プログラム課により運営されているウェブサイト「シェアアメリカ(ShareAmerica)」に掲載された記事の参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

2014年10月20日

S・イングバー

 小惑星は毎日地球に衝突している。ほとんどがちり程度の大きさの岩か氷の塊なので、地球に害を及ぼすことはない。だが中には恐竜を絶滅させてしまった小惑星ように恐ろしいものもある。


知られている唯一の地球トロヤ群小惑星(地球と同様の軌道を有する小惑星)を示したNASAのイラスト

 米国航空宇宙局(NASA)の6月の発表によると、少なくとも1万個の危険な物体が地球に接近している。ちょうど1年前、直径約20メートルの隕石(いんせき)がロシア上空で爆発した。中型原子爆弾に匹敵する破壊力であった。地上にいた人は、隕石が発した太陽の30倍という強さの光線によりやけどを負い、少なくとも1210人が飛散した建物の破片やガラスで負傷した。

 幸いにも、小惑星の衝突が予測できることが多いので、火山の噴火や津波などの他の自然災害とは異なり、予防が可能である。2016年にフル稼動を目指す小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)に参加すると良い。

 NASAが資金を拠出しハワイ大学が開発したATLASは、160キロメートルの距離をおいて設置した2台の天体望遠鏡から成る。この望遠鏡は、空に光る明るい星の100万分の1の明るさしかない物体を探知できる。ATLASは、このような星と小惑星を区別し、一晩中、小惑星のスナップ写真だけを撮影する。この写真に基づいて世界中の天文学者は、小惑星の軌道を数時間以内に判断することができる。

 「我々が対象とするのは、『死の突入』といわれる軌道に乗っている小惑星だ」と、この望遠鏡のソフトウエアを担当する技師のラリー・デノー氏は言う。一国を消滅させるほどの100メガトン級の破壊力を持った小惑星のことである。衝突予想地域に居住する人々が避難することができるよう、最も早くて3週間前に警報を発することが可能になる。


ハワイ島にあるマウナケア天文台には、ATLAS望遠鏡の1台が設置されている

 科学者がこの事前警報を利用して、小惑星が地球に衝突する前にその方向を変えることができる日が来るかもしれない。研究中の技術として、天体上のピンボール・マシンのように小惑星の進む方向を変えるものや、無重力宇宙船を利用して、小惑星を別の軌道に引き寄せるものがある。

 「どの時点でこれが科学上の問題から国家安全保障上の問題になるのだろう」とデノー氏は言う。初めは全てがSFのように聞こえるかもしれないが、両方の課題に取り組むのに今ほど適した時期はこれまでになかった。

 小惑星と宇宙の事象に興味があるならば、危険な物体の方向を変えるために、米国、ロシア、ヨーロッパ諸国が共同で取り組んでいるNEOShield(英語)の活動を参照。NASAの無料アプリ「Asteroid Watch Widget」(英語)を使って、地球に接近する小惑星を定期的にチェックしよう。NASAの「NASA’s Asteroid Watch」(英語)には、小惑星の活動に関する最新情報と写真が掲載されている。