クリントン国務長官のアジアの地域機構に関する演説-理念と優先事項

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

イースト・ウエスト・センター、ハワイ州ホノルル

2010年1月12日

 ありがとうございます。チャールズ(モリソン・イースト・ウエスト・センター所長)、ご紹介ありがとうございました。イースト・ウエスト・セン ターが50周年を迎える年の初めに、このとても素晴らしい場所にある美しいキャンパスに来ることができて大変うれしく思います。また列席者に数多くの友人 を見つけてうれしく思っています。(以下あいさつ略)

 アジアにおける米国の未来という非常に重要なテーマについて話を始める前に、ハイチの状況について少しお話ししたいと思います。米国は現在も、こ の壊滅的地震について、被災地やハイチ国民への影響などの情報収集を続けています。またハイチとその周辺地域に対し、全面的な支援を提供しており、民間と 軍の両面で災害救助ならびに人道支援を実施します。被災者、その家族や大切な方々には、心からお見舞い申し上げます。

 1959年に、当時上院議員だったリンドン・ジョンソンが、東洋と西洋の知識人が手を携えることができる機関の創設を提案した時、本日私たちが話 題にしている地域が今とどれほど違っていたか、想像することさえ困難です。イースト・ウエスト・センターが開設されてからの50年間に、これほど劇的な変 化を遂げた地域はほかにありません。これほどの発展を遂げることができたのは、非常に多くの人々の勤勉さと創意のたまものです。そしてそれを維持できたの は、米国が関与し、安全保障と支援を提供してきたからです。

 イースト・ウエスト・センターは、アイデアの創出や専門家の研修の支援を通じて、この劇的変化の一翼を担ってきました。ここで研修を受けたある若 い女性専門家は、マイクロファイナンスや農村地域の経済発展の先駆者となったのですが、彼女の息子は米国大統領になりました。列席者の皆さんには、現在の この地域と世界情勢を左右する経済、政治、安全保障問題に対する意識を高め、理解を深めてくれたことに心から感謝します。

 新政権誕生からほぼ1年たとうとする今、アジア太平洋地域との関係が米国の優先事項のひとつであることは明らかです。オバマ大統領は人格形成期 を、ここハワイとインドネシアで過ごしました。大統領の世界に対する見方には、アジアとそこに暮らす人々に対する感謝と尊敬の気持ちが反映されています。 私は、太平洋を挟んだアジア各国とのきずなを強固にすることに全力を注いでいます。そして大統領は、生まれ故郷のホノルルで2011年にアジア太平洋経済 協力会議(APEC)首脳会議が開催されることを、楽しみにしています。そして下院議員、知事、市長や他の人たちから、決定するのが最も難しい事項は、首 脳全員に贈るアロハシャツをどれにするかだ、と聞いています。

 こうしたさまざまな理由から、米国は昨年1月に、アジア太平洋諸国との関係の再活性化を図るための基盤造りに着手しました。国務長官として、私の 初めての外遊先はアジアであり、過去11カ月の間で実に今回が4回目のアジア訪問になります。オバマ大統領は、シンガポールで開かれたAPEC首脳会議に 出席するとともに、中国、日本、韓国を訪問しました。米国は、金融・政治面での新しい世界的な力の均衡を反映して、多数のアジア諸国が参加するG20首脳 会議の定期開催を支持しました。米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会談も初めて開催しました。この地域において米軍の確固たる存在の維持を 促すグアム国際協定、そしてASEAN友好協力条約にも署名しました。オバマ大統領夫妻が初めてホスト役を務めた国賓が、アジアの指導者の1人であるイン ドのシン首相だったことも偶然ではありません。

 米国は、長い歴史のあるきずなを強め、新たなパートナーシップを築き、既存の国際機関と協力して共通の利益を追求し、政府だけでなく、この広大なアジア地域の、あらゆる場所に暮らす人々と直接関わりを持つべく努力しています。

 まずは明白な前提から始めます。それは、米国の未来は、アジア太平洋地域の未来と結び付いており、この地域の未来は米国によって左右される、とい うことです。米国は、これまでと同じように、経済・戦略面で指導力を発揮することに強い関心を持ち、一方アジアは、米国が活力ある経済パートナーであり、 安定をもたらす軍事的影響力を持ち続けることに強い関心があります。

 米国とアジアは、経済的に密接不可分です。米国企業は毎年、3200億ドルに上る製品とサービスをアジア太平洋諸国向けに輸出しており、高賃金の 仕事を無数に創出しています。また、非常に多くの米国の兵士が、この地域の安全を保障しています。これは、何世代にもわたり米軍が担ってきた任務です。ロ バート・ゲーツ国防長官の言葉を借りると、米国はアジアのお客さまではなく、アジアの住人なのです。

 その反面、アジアも米国内で重要な存在です。この地域から祖先が移住してきた米国人は1300万人以上います。1世代前には貧困にあえいでいたア ジアの国の中には、世界で最も高い生活水準を誇るようになった国もあります。東アジア地域は、2015年までに、極度の貧困層の割合を対1990年比で半 減させる、というミレニアム開発目標をすでに達成しました。

 また、アジアを抜きにして、地球規模の安全保障および人道問題を解決することはできません。アジア諸国はイランにおける核拡散の防止、アフガニスタンでの学校や診療所の建設、コンゴ民主共和国での平和維持活動、そしてアフリカの角沖での海賊との戦いに貢献しています。

 しかし一方で、アジアの発展が約束されているわけではありません。アジアには新興国だけでなく、孤立した政権も存在しますし、長年の課題に加え前 例のない脅威も存在しています。核拡散、軍事競争、自然災害、暴力的な過激主義、金融危機、気候変動、そして病気といった危険が、国境を越え、共通のリス クとなっています。

 アジア太平洋地域の国々が、それぞれ異なる課題に直面していることを認識しなければなりません。経済発展よりも政治的な発展が先行した国もありま すが、その逆の国もあります。確実に改革を進めている国がある一方で、従来ある、あるいは新たに生じた不安定な情勢と格闘している国があります。地域協力 によってこのような多様な課題を克服し、広範囲に及ぶ繁栄と政治的発展の機会をさらにつくり出していかなければなりません。

 戦略上の重要な事実として、アジアには、中国やインドなどの新興国から、従来指導的立場にある日本、韓国、オーストラリア、そして影響力を増しつ つあるインドネシアなどの東南アジア諸国まで、影響力を持つ国々が活発に共存しつつ、この地域がさまざまな課題や機会に直面している、ということがありま す。そして米国は今後も、力強く永続的な2国間関係を維持していくだけでなく、個々の国やアジア地域が直面する困難に対処する手助けをする上で中心的な役 割も果たしていきます。こうした新しい状況は、効果的な協力を実現する可能性を最大限に高め、信頼を構築し、競争による摩擦を抑制する機構を必要としま す。

 アジアの指導者たちは長年、地域協力の強化について議論してきました。アジアの経済、政治、安全保障の構造は変化しています。地域機関は、アジア が変化する上で、重要な役割を果たしてきました。しかし将来に目を向けると、これらの機関はさらに素晴らしい役割を果たすことができるでしょうし、果たさ なければなければならない、と思います。これは、この1年間に私が言葉を交わしたアジア指導者や市民たちの多くから聞いたメッセージです。今は、地域協力 を深める可能性がありますし、その必要性が増しています。

 建物の構造がどれもそうであるように、国家間の地域機構にも強固な基盤が必要です。そこで本日は、アジア地域での米国の継続的関与と指導力、そし て多国間協力の問題に対する米国の取り組みを決定付ける理念の概要を説明したいと思います。この取り組みを策定するに当たり、米国は、アジア太平洋地域の パートナー諸国の意見を幅広く聞いてきました。今回の歴訪、さらにその後も、こうした話し合いを続けることを望んでいます。

 第1に、米国の同盟関係は地域への関与の礎です。米国と、日本、韓国、オーストラリア、タイ、フィリピンとの同盟は、近代史において最も成功して いる2国間パートナーシップに数えられています。こうした2国間関係がもたらす安全保障と安定は、この地域の成功と発展にとって不可欠な役割を果たしてき ました。共通の価値観と戦略的利益により、この地域では概して平和が続き、何世代にもわたり、成長・繁栄することができました。そしてこうした共通の価値 観と利益は、今も安定と安全保障の維持のために非常に重要です。米国がこれらの2国間関係に力を注ぐことは、アジア諸国のグループ形成と一致し、これを促 進するものです。

 米国は、条約に基づく同盟以外にも、主要国との関係強化に力を注いでいます。インドとは戦略的対話を、中国とは戦略的および経済的対話を、またイ ンドネシアとは包括的パートナーシップを追求しています。さらにベトナムのような新しいパートナーや、シンガポールのような長く続いてきたパートナーとの 関係強化にも努めています。多国間協力の強化は、すでに築かれた2国間のパートナーシップを尊重し、それを基盤にするものでなければなりません。

 第2に、地域機関や地域での活動は、さらに共通化が進む明確な目標の達成を促す機能を果たすべきです。例えば、安全と安定の向上、経済機会と成長の拡大、民主主義と人権の促進といった目標です。

 地域の安全保障を促進するためには、私たちは核拡散、領土紛争、軍事競争といった21世紀に存在し続ける脅威に立ち向かわなければなりません。

 経済機会を推進するためには、貿易および投資障壁を下げ、市場の透明性を高め、より均衡のとれた、包含的で持続可能な形での経済成長の促進を重視 する必要があります。APECのような地域機関は、この分野においてすでに多大な進展を遂げました。加えて米国は、アジア太平洋地域の多くの主要国との間 の連携を進めるメカニズムとして、環太平洋パートナーシップ協定の貿易交渉を行っています。

 政治的発展をさらに推し進めるには、人権を擁護し開かれた社会を推進する活動を支援しなければなりません。米国は、2008年12月にASEAN の新憲章が発効した時に、同機関が政府間人権委員会の設立を決定したことを評価しています。同委員会や他の地域的イニシアチブによって、基本的な自由と人 間の尊厳の尊重が地域全体で徐々に向上することを望んでいます。

 第3に、私たちの地域機関は効果的であり、結果を重視するものでなければなりません。これは、オバマ大統領と私が就任した日からの優先事項です。 なぜなら、過去20年間のアジアの台頭によって、それまでこの地域には存在しなかった進歩の機会がもたらされたと、確信しているからです。

 地域機関の設立と運営は、具体的で実際的な要件によって動機付けられている必要があります。単に新しい組織を設けることよりも、成果を上げる組織を設立することが重要なのです。

 さて、どのような多国間機関においても対話は欠かせません。しかし、アジア諸国が地域ならびにグローバルなプレイヤーになるにつれて、私たちはよ り行動を重視しなければなりません。各機関は自らの進ちょく状況を定期的に、かつ率直に評価し、すべての参加国が積極的な役割を果たす責任があることを強 調しなければなりません。

 例えば、南アジアと東南アジアに壊滅的打撃を与えた2004年の津波の後、悲劇に直面した際に、力を結集した具体的な行動と徹底的な結果重視の姿 勢が、いかに希望を生み出すかを世界中が目の当たりにしました。津波の被害に遭った地域に対する緊急援助の枠を超えて、災害援助はより広い地域での協力を 促すきっかけとなりました。政治、軍事、そして民間同士の永続性のある関係を構築しやすくなり、自然災害に対する集団的対応能力が向上しました。私たちは この事例から教訓を得て、地球温暖化や食糧安全保障などの課題に対処する場合にも、同じように緊急性がある問題ととらえ、効率的に行動しなければなりませ ん。私は、米国がこれまでにこの分野で指導力を発揮しており、今後も発揮し続けることを誇らしく思います。昨年も、フィリピンなど、サイクロンの被害を受 けた地域での民間・軍の救援活動において、私たちは非常に重要な役割を果たしました。

 常に着実な成果を上げるには、各機関には効果的な統治が必要です。だからと言って、すべての機関が同じ意思決定メカニズムを採用する、ということ ではありません。しかし、効率的な意思決定プロセスを採用し、適切な場合には、役割と責任を分担しなければなりません。同時に、本格的な多国間機関を設立 するためには、その運営の負担を分担することが求められます。責任を果たさない国や最低限の貢献しかしない国に恩恵を与えるシステムは、必ず失敗します。

 安全保障問題では、ASEAN地域フォーラムを強化したいと考えています。米国は今後も同フォーラムに参加し、昨年5月に始まった民間・軍の災害 救助訓練など、最近の成功のさらなる拡大を望んでいます。ASEAN地域フォーラムが、災害救助と人道的活動でより大きな責任を担うには、昨年の7月にタ イで開かれた会議で発表された構想を実行しなければなりません。米国には、その円滑な実行を手助けする用意があります。また、同フォーラムはビルマの問題 など、この地域の人権問題が、地域の平和と安全保障に多大な影響を及ぼすと認識しており、これを発展させることが必要です。私がジャカルタにASEAN大 使のポストを新設した理由のひとつは、この制度化されたプロセスの強化にあります。

 第4に、求める結果を出すに当たって、柔軟性を維持し、高めようとしなければなりません。大規模な多国間機関の中には、特定の問題に対処するため に必要な手段を持たないものもあるかもしれません。米国は、意義がある場合には、特定の課題に的を絞った非公式な取り決めに参加しますし、近隣諸国の共通 の利益を推進する準地域機関を支援します。

 もうひとつの事例が6者協議で、非公式の取り決めが共通の利益を推進できる可能性を示しています。地域の主要関係国が協力し、検証可能な形での北 朝鮮の非核化を追求しています。私たちは、北朝鮮の完全かつ不可逆的な非核化に向けた進展を図ることによって、アジア太平洋諸国全体の安全保障を強化でき ると認識しており、6者協議参加国と協力して、近い将来の協議再開を目指しています。

 米国は、メコン川下流域諸国にも関与し、関係を改善してきました。加えて、日本およびオーストラリアとの間、また日本および韓国との間で、それぞ れ3国間戦略対話を行っており、マラッカ海峡における(海賊対策の)協力の指針となる非公式の取り決めもあります。そしてそれぞれが、このような多国間主 義が効果的な結果を生み出す好例となっています。私はこの後オーストラリアを訪れ、ゲーツ国防長官と共に、オーストラリアの外相および国防相との2プラス 2会談に臨みます。このような方法で、例えば、日本と中国、あるいは日本とインドとの3国間対話を通じた関与の機会が今後さらに増えることを歓迎します。

 準地域機関に関して言えば、ASEANは重要な成功例だと確信しています。ASEANは経済、社会文化、政治・安全保障の分野を横断的に統合する という大胆な決断を下しました。米国は、ASEANの強化・統合が、安定と繁栄に対するより広範な地域的利益にかなうと考えます。そのため、ASEANに 対する支持を継続するとともに、米国・ASEANの強化されたパートナーシップと、経済に特化した米国・ASEAN貿易投資枠組み協定の下で、能力開発活 動に引き続き力を入れていきます。オバマ大統領はシンガポールで、史上初めて、ASEAN加盟10カ国の首脳と貴重な会談を行いました。

 さて、このような頭文字の略語ばかりを耳にすると退屈そうにする人がいますが、このような地域機関がその加盟国にとって非常に重要であることを認 識する必要があります。そして米国が参加しなければ、敬意と関与への意欲が欠けていることの表れとなります。ですから私は、国務長官になる際に、米国がこ うした機関に参加することを明確に表明しました。人生の半分が顔を出すことかどうかは分かりませんが、外交の半分はその場にいることが肝心なのだと思いま す。

 ほかにもASEAN地域フォーラム、ASEANプラス3、上海協力機構などの新しい組織が生まれましたが、それらの多くに積極的に参加したいと考えています。

 第5に、アジア太平洋諸国として、その地域機関が有意義であるかを決定する必要があります。最近設立されたものも含め、米国はアジア諸国による機 関を尊重し、協力していきます。しかし、どの機関が私たち全体の未来を最もよく守り、発展させることができるかを、よりうまく決定することが重要です。

 それぞれの機関にはふさわしい場所と目的があります。しかし意義のある地域機関には、主要利害関係国がすべて参加することになります。それは、 APECのようにすでに確立された機関であったり、東アジア首脳会議のように最近設立されたものかもしれません。むしろ、すでに新旧の組み合わせになる可 能性の方が高いでしょう。これは協議と協力を通じて答えを見つけなければならない非常に重要な問題です。

 オバマ大統領は昨年東京を訪れた際に、米国がこのような新しい機関に全面的に関与する意思があることを表明しました。この戦略の一環として、米国 が東アジア首脳会議でどのような役割を担うか、東アジア首脳会議がより広範囲にわたる制度的環境にいかに適合するか、そしていかにすれば、どの国にとって も良い時期に開催できるよう、最も効率的な順序で地域の主要会合の予定を組むことができるか、などについての協議の開始を提案します。

 共通の原則と目標に基づき地域の経済統合を着実に進めることを目指す機関も、引き続き必要です。APECには米国とパートナー諸国が関与し、この機関が責務を確実に遂行できるようにしなければなりません。

 APECに対する支持と貢献からインド洋津波への対応まで、米国のアジア太平洋地域諸機関への関与と指導力は、どの国にとっても有益です。米国 は、この地域の他の国がまねできないやり方で、あるいはそのような行動を取るほど信頼されていない国ができないやり方で資源を提供し、協力の円滑化を図る ことができます。しかし、米国を含むいかなる国も、こうした地域機関を支配しようとするべきではありません。一方で、このような機関が成功するには、米国 が積極的に関わることが不可欠です。

 地域の協力体制を見直すに当たり、忘れてならないのは、政府だけに力が集中しているわけではないということです。私たちは市民社会運動、開発事業 に関わる非政府組織(NGO)、開発において重要かつ建設的な役割を果たす企業など、国家以外のグループが果たす積極的な役割を活用できる機関をつくり上 げるべきです。私たちは軍同士の協力を促進し、不信と誤解を減らす方法をほかにも探すべきです。

 明日私はオーストラリアに向けて出発しますが、この地域で対話を推進しているラッド首相との会談を楽しみにしています。ラッド首相の貢献は米国も評価しており、私は今回のオーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島歴訪の旅を協議継続の機会として活用するつもりです。

 アジア太平洋地域の人々は、数世紀もの間、激変に耐えてきました。地域に混乱が続いた過去の所産として今なお存在する疑念を取り除き、この地域に開放性、誠実さ、そしてすべての人々にとっての発展に満ちた未来を築くことを、私たちの協力の最終的な目標とすべきです。

 今日私は、この会合に先立ち戦艦アリゾナ記念館を訪れました。アリゾナを訪れることは、私だけに限らず、誰にとっても常に感動的な経験だと思いま す。記念館を出る際、ダーネル中将が、先日ベトナムの政府関係者を迎えたことを私に話してくれました。ベトナムからの一行が記念館から出てきた時に、待機 していた海軍の船がベトナム国旗を掲揚していたそうです。これはベトナムと米国の双方にとって実に素晴らしい瞬間でした。ベトナムの訪問団にとってはもち ろんのこと、米国側にとっても素晴らしいことでした。このような行いをする国が他にあるでしょうか。かつての敵国や競争相手、あるいは制度、文化、思想が 違う人々の成功、繁栄、発展を称賛できる国が他にあるでしょうか。

 米国はアジアに戻ってきました。この政権の誕生時にこの点について疑問があったとしても、今はその疑いの余地はありません。それでも私は、米国はアジアに戻り、ここに留まると強調したいと思います。

 2世代の間に、アジアは古いものと新しいものが混在する地域になり、生産物が大豆から人工衛星へと変わり、農村開拓地が光り輝く巨大都市に、伝統 的な書道がインスタントメッセージに、そして最も重要なことは、古い憎しみが新しいパートナーシップへと変ぼうを遂げた地域になりました。

 この地域における協力は、このような新たな現実と、内在する素晴らしい可能性を反映するものでなければなりません。そして米国は、関与の拡大と、パートナー諸国との協力を通じて、米国とこの地域が持つ素晴らしい可能性を実現することを楽しみにしています。

 どうもありがとうございました。