米国と欧州連合が日本郵政に関する懸念を表明

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

(プレスリリースおよびその背景説明 英文はこちら

2010年5月21日、ジュネーブ

 米国のマイケル・パンク世界貿易機関(WTO)大使と欧州連合(EU)のジョン・クラーク臨時代理大使は本日(5月21日)、日本の北島信一・在 ジュネーブ国際機関日本政府代表部大使とジュネーブで協議し、保険・銀行・宅配部門において日本郵政と民間企業との間で対等な競争条件が欠如していること への、米国とEUの長期にわたる深刻な懸念を表明した。

 「米国とEUは日本と協議し、WTO協定の下で日本が履行を約束した内国民待遇(輸入品・サービスに適用される待遇が、同種の国内産品・サービス と比べて差別的であってはならないという原則)規定に照らし、日本政府による日本郵政への優遇措置について米国とEUが深く懸念していることを強調した」 とパンク大使は説明した。

 パンク大使とクラーク臨時代理大使は、日本郵政の民営化の是非は日本が決定すべき事項であり、米国とEUは中立的立場を維持すると述べた。しか し、国会に提出された郵政改革関連法案が、日本郵政が民間企業に比べて有利な待遇を受けることへの米国とEUの懸念に対処していない点については、落胆の 気持ちを表明した。また、日本郵政の業務に民間よりも緩やかな規制が課せられる等、日本郵政が競争上さらに有利となる条項が法案に盛り込まれている点でも 共通の懸念を示した。

 さらにパンク大使とクラーク臨時代理大使は、対等な競争条件が確立される前に、日本郵政の保険会社および銀行の事業範囲拡大を認める規定についての憂慮を伝えた。

 「日本が郵政改革関連法案の国会審議等を進める際に、対等な競争条件に関する米国とEUの懸念に対処し、WTO(協定の)義務を果たすことを強く 要請する」とクラーク臨時代理大使は述べた。パンク大使とクラーク臨時代理大使は、こうした懸念に対処するために、米国とEUは日本との協力を続けていく と強調した。

背景説明

民営化については賛成でも反対でもなく、対等な競争条件の欠如に関する懸念

 米国とEUは、日本郵政の民営化の是非については中立的立場を維持している。しかし、日本郵政の改革は競争条件に深刻な影響を及ぼす可能性がある ことから、米国とEUは日本政府に対し、WTO協定の義務に沿って、日本の銀行、保険、宅配市場において日本郵政各社と民間競合企業との間に対等な競争条 件を確立するために必要なあらゆる措置を取るよう、引き続き要請していく。

日本郵政に関する長期にわたる懸念

 米国とEUは長年にわたり、日本郵政の保険、銀行、宅配業務が、同一のサービスを提供する民間企業と比較して優遇されている問題を指摘してきた。 我々が懸念しているのは、こうした優遇措置が、外国企業を含む民間企業に悪影響を及ぼす形で、日本郵政の業務に有利な競争条件を提供してきた点である。例 えば、かんぽ生命は、郵便局ネットワークを優先的に利用できるため、民間金融機関に比べ非常に有利な立場に立っている。極めて重要な目標は、日本のWTO 協定の義務と整合する形で、日本郵政各社と民間業界との間に対等な競争条件を確立することである。

日本の郵政改革関連法案に関する新たな懸念

 米国とEUは、郵政改革関連法案の内容が日本郵政に新たな競争上の優位を与え、競争条件がさらに日本郵政各社に有利なものになると深く懸念している。一例として、日本郵政の監査・報告義務を民間に比べ緩やかにする条項が挙げられる。

 また、これとは別に、我々は日本に対し、対等な競争条件が確保されるまで、日本郵政の保険・銀行業務に対する既存の制限を維持するよう要請してき た。現行法案は日本郵政の事業範囲の拡大を容易にしている。先に競争上の優位を取り除くことなく、日本郵政に新商品もしくは改訂商品の発売を認めること は、現在の問題を悪化させ、競合商品を販売している民間企業に直接悪影響を与えることになる。

WTO協定上の懸念

 WTOの「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」の下で、日本は保険サービスに関して内国民待遇規定の完全な履行を約束している。米国と EUは日本に対し、郵政改革関連法案の審議等を進めるに当たり、対等な競争条件に関する米国とEUの懸念に対処し、WTO協定の義務を順守するよう要請す る。