ファクトシート――外交・開発政策見直し報告書(QDDR)

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

2010年12月15日

QDDRとは何か

 「外交・開発政策見直し報告書(QDDR)」は新興国の台頭、不安定さの増大、技術の変革により新たな脅威だけでなく新たな機会も生まれている世 界で、いかにすれば米国国務省と米国国際開発庁(USAID)が効率性を高め、より大きな説明責任を負い、より効果的な活動ができるかの包括的な評価であ る。QDDRの中核的役割は、米国の国益をより一層推進し、米軍のより良いパートナーとなるレベルにまで米国の「文民の力」を高めるための青写真の提供で ある。文民の力を通じたリーダーシップとは、紛争の防止と解決、他国が貧困状況から脱出し繁栄する安定した民主主義国家となるための支援、グローバルな問 題に取り組むグローバルな連携の確立に向け、米国のあらゆる文民機関の資源を管理、調整することである。

 文民の力の強化に向け国務省とUSAIDは、両機関で働く外交官および国内勤務中心の事務職員の数を増やすという連邦議会の超党派の取り組みを最 大限に活用する。また新たな効率性と節約を追求し、最大の成果を上げるために資源を集中させ、連邦議会と協力し国内での米国民の保護と国外での米国の国益 の推進のために必要な資源を確保する。

 この報告書は国務省とUSAIDの外交官および開発専門家たちが、他省庁の職員や連邦議会、外部の利害関係者からの貴重な情報・意見を得て完成させた。

文民の力を通じたリーダーシップ

 クリントン国務長官が述べたように、「この新たな世紀を主導するには多くの場合、新たな方法を用いなければなければならない」。21世紀に米国の 国益と価値観を推進し、他国を主導して共通の問題を解決するには、米国の力の顔となる外交官や文民の専門家に頼らなければならない。ロバート・ゲーツ国防 長官の言葉を借りれば「国務省やUSAIDのような機関が、私が必要と考える主要な役割を果たすには、(中略)こうした機関が果たす極めて重要な役割に対 する認識が変わらなければならない」

文民の力とは何か

 文民の力とは政府および市民社会の文民や民間人の力の結集である。また世界中で米国の中核的な国益の推進を目指し互いに協力している、全世界271カ所の米国在外公館で働く外交官、100カ国以上で活動する開発専門家、その他の米国政府機関の専門家たちの力である。

 文民の力は――

  • 米国民にとって費用効率の高い投資である。
  • 武力紛争を防止し危機を管理する強力なツールである。
  • 経済成長を促し、米国製品のための市場を開き、米国内で雇用を創出する触媒である。
  • 複雑な性格を持つ21世紀の諸問題への対応に必要である。

QDDRの内容

 QDDRは以下の4つの分野での仕事の仕方の変更を国務省とUSAIDに提言している。

  1. 21世紀の外交の状況に適応すべく次の措置を講じる。
    • 各国にある米国外交使節団の最高責任者(大使)に、複数の省庁が関わる活動の最高執行責任者としての権限と説明責任を与え、米国外での文民による国際的な活動の実施を主導する。
    • 新たな課題への対応に向け組織を再編する(経済成長・エネルギー・環境担当次官および市民の安全保障・民主主義・人権担当次官、新たなエネルギー資源局および首席エコノミスト、テロ対策局設置)。
    • 首都以外の地域での関与を推進し、21世紀の国政の技術を活用する。
    • あらゆる活動において女性と少女に重点を置く。

  2. 開発の強化・近代化により成果を上げるために次の措置を講じる。
    • あらゆる側面において女性と少女の権利を重視し、米国が相対的に優位に立つ分野(食糧安全保障、世界の保健、気候変動、持続可能な経済成長、民主主義と統治、および人道支援)に投資を集中する。
    • 受け入れ国とのパートナーシップの構築、イノベーションへの投資、監視と評価の強化により、大きな成果を上げる開発を実施する。
    • USAIDを世界で傑出した開発機関とし続ける。必要な専門知識を強化し必要な組織を構築する。「Feed the Future(将来の食を守る)」プログラムの主導権を直ちに移行し、規定の基準を満たした場合には世界の保健イニシアチブ(グローバル・ヘルス・イニシ アチブ)の目標期限を2012会計年度末とする。

  3. 危機および紛争に対する文民の防止・対応能力の強化のために次の措置を講じる。
    • 国外で国防の最前線に立つのは文民であると認識し、紛争防止・対応策を文民の使命の中核と位置づける。
    • 国務省における紛争・安定化業務局の新設と、USAIDの移行イニシアチブ室の強化により、紛争防止・対応能力を構築する。
    • 脆弱(ぜいじゃく)な国家において安全保障および司法部門の改革に向けた効果的な能力を取り入れる。

  4. より賢明に仕事をして米国民のために成果を上げるべく次の措置を講じる。
    • 専門知識と革新的な問題解決能力を構築し、現在および将来の課題に対応できる専門知識を確保する。
    • 効果的かつ効率的な任務の遂行に向け、政府内の専門知識を持つ人材のさらなる活用により(外部との)契約および調達を管理する。
    • 効果の高い計画・予算を作成する。支出が最後の1ドルに至るまで確実に成果につながるようにするため、予算の割り当ての前にすべてのプログラムを評価する。

QDDRの実施

 QDDRの作業はクリントン国務長官の就任時に始まり、次回のQDDRの発表まで継続する。国務省とUSAIDはすでにこの報告書に記載されてい る改革の多くを開始している。一部は完了しており、他の改革もそれに続く予定である。管理・資源担当国務副長官とUSAID長官がQDDRの実施を監督す る。

QDDRの主な検討結果

  • 米国の国益推進に向け連邦政府の文民によるおのおのの貢献を結集し、米国の文民の力を構築する。
  • 投資の集中、イノベーションへの支援、成果の把握により開発を強化・変革し、成果を上げる。
  • 危機や紛争に対する文民の防止・対応能力を構築し、米軍が必要とし、また得てしかるべきパートナーを提供する。
  • 仕事のより賢明な遂行を通じたコストの削減、優先事項の達成のための計画・予算の作成、投資の成果の把握により、仕事の仕方を変える。