信仰の自由に関する国際報告書(2010年7~12月版)―日本に関する部分

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

国務省民主主義・人権・労働局

2011年9月13日発表

 日本国憲法、その他の法律および政策は信仰(信教)の自由を保護しており、政府は実際に、こうした保護をおおむね実施した。

 政府は法律上も、実際上も、信仰の自由をおおむね尊重した。本報告書の報告期間(2010年7月1日から12月31日まで)中、政府が信仰の自由を尊重する状況に変化はなかった。

 宗教的な帰属、信条、または実践に基づく、社会的な虐待または差別に関する報告が何件かあった。

 米国政府は、人権促進に向けた総合的政策の一環として、信仰の自由に関して日本政府と話し合いをしている。

第1節 宗教統計

 日本の総面積は37万7839平方キロメートル、総人口は1億2740万人である。政府は宗教団体に対し信者数の報告を義務付けていないため、各宗教の信者数を正確に把握することは困難である。文化庁の報告によると、各宗教団体の報告による信者数は2008年12月現在、合計2億700万人であった。この数字は日本の総人口よりも大幅に多く、日本国民の多くが複数の宗教を信仰していることを表している。例えば、多くの日本人は仏教と神道の両方の儀式を実践している。

 2008年の統計を掲載した2010年発行の文化庁の宗教年鑑によると、信者数は、神道が1億800万人、仏教が8800万人、キリスト教が230万人、「その他」の宗教が890万人いる。

 日本国内のイスラム教徒の数に関する政府統計はない。イスラミックセンター・ジャパンの概算では、日本にはおよそ10万人から11万人のイスラム教徒がいる。

 2008年12月現在、1951年の宗教法人法に基づき政府が認識している仏教宗派は155ある。主な仏教宗派は、天台系、真言系、浄土系、禅系(曹洞宗と臨済宗)、日蓮系および奈良仏教系の6宗派である。このほかにも、仏教系在家信者団体が多数あり、そのひとつである創価学会は、800万「世帯」の信者数を報告している。神道の主な宗派は、神社本庁と教派神道の2つである。

第2節 政府による信仰の自由の尊重の現状

法的・政策的枠組み

 政府による国際的な法的基準の受け入れ状況については、国別人権報告書の付録Cを参照(http://www.state.gov/g/drl/rls/hrrpt/2010/appendices/index.htm)。

 日本国憲法、その他の法律および政策は信仰の自由を保護しており、政府は実際に、こうした保護を実施した。

 文化庁によると、2008年12月現在、22万2723の宗教団体のうち18万2202団体が宗教法人として政府に認証されている。政府は、宗教団体の登録または認証申請を義務付けてはいないが、認証された宗教法人には税制面の利点がある。2008年までに宗教団体の82%以上が認証を受けている。

 1995年に東京で発生した、オウム真理教による地下鉄サリン事件を受けて改正された宗教法人法は、認証を受けた宗教団体を監督する権限を政府に与えている。同法により、認証された宗教団体は資産を政府に開示することが義務付けられ、政府には、営利活動に関する規定に違反している疑いがある場合に調査を行う権限が与えられた。宗教団体がこうした規定に違反した場合、当局は当該団体の営利活動を停止する権限を持つ。

 政府はいかなる宗教上の祭日も国の祝日としていない。

信仰の自由に対する制限

 政府は法律上も、実際上も、信仰の自由をおおむね尊重した。本報告書の報告期間中、政府による信仰の自由の尊重の状況に変化はなかった。

 日本国内に宗教を理由とする囚人や被収容者などの悪用の報告はなかった。

第3節 信仰の自由の享受に影響を及ぼす社会行動の現状

 ほとんどの宗教団体が、信仰の自由は広く容認・尊重されていると報告しているが、宗教的な帰属、信条、または実践に基づく、社会的な虐待に関する報告が何件かあった。

 10月20日、福井県のモスクの前に駐車した車が放火され、「外人GET OUT(出て行け)」と記した張り紙があった。主に福井在住の外国人大学生が通うこのモスクの指導者は、この事件をまれにしか起きない特殊な事例であり、自分たちは地域社会と良好な関係を築いていると述べた。警察はこの事件の捜査を開始した。

 ディプログラマーが家族と協力して、統一教会、エホバの証人、その他少数派宗教の信者を数年間にわたり拉致してきたとの報告があった。報告件数は1990年代以降、大幅に減少した。統一教会は、本報告書の報告期間中に6人の会員が拉致され、そのうち2人は2010年12月末時点でまだ監禁状態にあったと報告した。1人は警察による両親への事情聴取の後で解放されたとの報告があった。こうした報告を第三者により確認することはできなかった。統一教会が報告を誇張あるいは捏造(ねつぞう)したと非難する非政府組織(NGO)もあった。家族と専門のディプログラマーにより、自らの意思に反して12年以上にわたり拘束されていたと報告された統一教会の成人会員は、2008年に解放された。検察は、証拠不十分で本件を不起訴とした。10月6日、検察審査会は不起訴処分が相当であるという判断を下した。

 12月には、日本のあるチェーン店が、米国を拠点とするユダヤ系団体から抗議を受け、ナチスの制服の販売を中止した。

 本報告書の報告期間中、宗教の違いを超えた意義深い取り組みが継続された。異宗教の団体から成るNGOの日本宗教連盟は、宗教文化の振興と平和への貢献のために活動した。イスラミックセンター・ジャパンのメンバーは教会で講演し、キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒、仏教徒と共に宗教間の平和の祈りに参加した。9月に、諸宗教の団体で構成される世界宗教者平和会議日本委員会は、一般国民のイスラムに関する知識を深める取り組みとして、イスラム指導者の国際会議を開催した。同じく9月には、宗教的調和と非暴力の推進のため、日本各地から諸宗教の指導者が参加する別の会合も開催した。この会合には有力政治家や宗教指導者など1000人以上が参加した。

第4節 米国政府の政策

 米国政府は、人権促進に関する総合的な政策の一環として、信仰の自由に関して日本政府と話し合いをしている。