APEC女性と経済サミットでのクリントン国務長官の講演(抜粋)

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

ウェスティン・セントフランシス・ホテル、カリフォルニア州サンフランシスコ

2011年9月16日 

 皆さん、おはようございます。ありがとうございます。(中略)

 アジア太平洋経済協力(APEC)女性と経済サミットも終わりに近付き、私たちは女性の資本と市場へのアクセスの向上、女性の能力と技能の育成、官民両部門での女性指導者の台頭への支援に向けたAPECと各参加国・地域の決意を確認する宣言をAPEC史上初めて採択しようとしています。ここサンフランシスコはこの宣言が採択されるにふさわしい場所です。なぜなら66年前に国連憲章が調印されたのは、ここから1.6キロメートルほどしか離れていないハーブスト劇場だったからです。実は皆さんが集うこのサミットは、あの重要な出来事を祝い、歴史がここサンフランシスコでつくられると認識する場なのです。なぜならサンフランシスコはこのような経済に関する議論にふさわしい場所であり、全ての人々を受け入れ、すべての人々に機会を与える精神を持つ社会として広く知られているからです。私は米国と米国民を代表し、皆さん一人一人とそれぞれの国を心から歓迎し、このサミットに出席していただいたこと、そして私たちと共にこの重大な使命を担っていただけることに心から感謝します。

 このサミットのオブザーバーや報道関係者、そしておそらく私たち出席者も、私たちの目的は主に、女性の権利の向上と女性のための公正と平等の実現であると言いたい衝動に駆られるでしょう。もちろんこれが崇高な目的であることは確かですし、私にとっても非常に大切ですが、初めに多少物議をかもす危険を承知の上で申し上げますと、私たちの目標は女性だけでなくあらゆる人々にも関係する、より大胆なものだと思います。21世紀初めの今日、私たちは経済を成長させ、全ての国とその国民に確実に繁栄を提供するという大きな課題に直面しています。私たちは性別や年齢を問わず国民一人一人に対し、雇用、貯蓄と消費、幸福の追求の機会をより多く提供し、最終的にはそれぞれが神から与えられた潜在能力に見合った生活をしてもらいたいと思っています。

 これは語るには明快で単純なビジョンです。しかしそれを実現し、皆が求める経済の拡大を達成するには、今後何十年間も各国・地域の経済のけん引に不可欠な成長の源泉を掘り起こす必要があります。そして女性こそが、その不可欠な成長の源泉なのです。世界中のあらゆる場所で経済モデルの歪みが生じてきている中、働く女性が直面している障壁をそのままにしておく余裕は誰にもありません。女性の経済参加を増やし、女性の効率と生産性を向上させることにより、各国・経済の競争力と成長に劇的な効果が生まれます。誰もが国の経済活動に参加する機会を得れば、全ての人がより豊かになれます。より多くの人々が世界の国内総生産(GDP)に貢献できます。またハイチやパプアニューギニアなどの国・地域の生産性が向上すれば、先進国と途上国との格差は大幅に減少します。

 しかしそのように素晴らしい、地球規模の夢は、改革の枝葉末節に時間を費やしても実現しません。率直に言えば、ここにいる私たちだけで取り組んで実現できるものでもありません。根本的な変化、つまり政府による法律や政策の策定および施行の仕方、企業の投資および経営方法、人々の市場での選択についてパラダイムシフトが必要です。

 前途に待ち受けるこうした仕事は変革をもたらすという点で、これまでの世界の経済史上の重大な転換点に匹敵すると思います。19世紀には多くの国々が農業経済から工業経済への移行を始めました。そしてその時代の発明や大量生産が20世紀に情報化時代と知識経済をもたらし、かつてないほどの革新と繁栄をもたらしました。

 情報が国境を越え、農家が携帯電話で銀行と取引したり、都会から遠く離れた村に住む子どもたちが遠隔学習する機会が生まれている21世紀初頭の今、私たちは「参加の時代」に入りつつあると思います。それは性別などの個人の特性にかかわらず、各個人が世界市場に貢献する貴重なメンバーになろうとしている時代です。

 APECに参加する国・地域の中にはかなり前からこうした転換が進んでいるところもある一方で、最近端緒についたばかりのところもあります。しかし全体として進展はあまりにも遅く、あまりにも不均等です。ただ女性の経済参加の拡大に加え、女性の才能と技能の分配の改善に起因する生産性の向上により、いたるところで大幅な経済成長が促進されたのは疑いありません。より効率的かつ迅速に転換を進めている国・地域は、(経済成長で)そうでない国・地域をはるかのしのいでいます。

 この取り組みに真剣であるなら、つまり女性の経済参加と参加の仕方のいずれにおいても働く女性のための平等を本当に実現したいのなら、女性にとって不利に作用する構造的・社会的障壁を取り除かなくてはなりません。私がこのように呼びかけているのはそれが正しいことだからではありません――確かに正しいと信じてはいますが。それは子どもたちと自分たちの国のために必要だからです。女性の経済進出が家族と国家の繁栄につながるからです。

 私の夫はあらゆる人が関わるべきだと主張する際に、無駄にできる人は一人もいないとよく言います。それは本当だと思います。すべての国でより多くの経済機会を体系的かつ継続的に追求するという現代の大きな課題に関して言えば、無駄にできる人は一人もいませんし、当然ながら無駄にできるジェンダーもありません。

 その証拠を見てみましょう。女性の潜在能力を掘り起こし国の経済活動に女性を全面的に参加させることの正当性を主張するには、すでに女性がいかに経済成長を促進しているかをまず説明する必要があります。APECに参加する21の国・地域は世界有数の活力に富んだ国・地域です。APEC全体で世界の総生産の半分以上を占め、APECに参加する国・地域の女性の60%以上が正規の就業者です。店を持ち、事業を経営し、農作物を収穫し、電子機器を組み立て、ソフトウエアを設計しています。

 英国のエコノミスト誌が指摘するように、過去10年間の先進国における女性の雇用増加がもたらした世界経済の成長幅は非常に大きく、中国がもたらした成長幅を上回っています。またマッキンゼー社の調査によると、米国では女性の総労働力に占める割合が過去40年間で37%から48%近くまで増加し、生産額では予想以上の実績を挙げていることが分かりました。

 労働市場で女性が占める割合がこのようにささやかながら増加したことに起因する生産性の増大幅は、現在の米国のGDPの約4分の1に当たります。金額にすると3兆5000億ドルを超え、ドイツのGDPよりも多く、中国や日本のGDPの半分以上に当たります。

 (女性に)大きな期待が持てることははっきりしています。ならば何が問題なのでしょうか。女性がすでにこれほど経済成長に貢献しているなら、私たちの考え方、市場、政策を大幅に変更する必要があるのはなぜでしょう。このサミットで宣言を出す必要があるのはなぜでしょう。進展が必ずしも成功を約束しないからです。確かにアジア太平洋地域の国・地域では女性の経済参加の進展には大きなばらつきがあります。法律、習慣、これらを支持する価値観が女性の(経済への)全面参加の障害となっています。

 米国で、そしてAPECのあらゆる参加国・地域で、多くの女性が今も脇役を務め、正規の就業の場で自分にとって意義のある仕事を見つけられません。雇用されたとしても非常に明確に区別され、仕事上で一段低い立場にとどめられる人もいます。女性の可能性を制限する法的あるいは社会的な規制の網もあります。あるいは最高の地位への昇進を阻む「ガラスの天井」に直面している人もいます。

 フォーチュン・グローバル500社で女性CEOはわずか11人で、全体の3%未満です。APEC地域には男性と同じ相続権を与えられていない女性もいます。そのため父親が所有していた土地や事業を女性は相続できません。子どもに市民権を与える権限がない女性もおり、そのために家族への住宅供給や教育が制限されたり、在留許可を頻繁に更新しなければならないために働くことが困難になっています。女性に対する課税が男性と違うところもあります。融資を拒否されることが非常に多く、男性の後見人なしでの銀行口座の開設、契約書への署名、不動産の購入、会社の設立、訴訟が禁止されている場合さえあります。子どもを持つ前は男性と同じくらいの収入を得ていたにもかかわらず、子どもを持ってからは収入が減った女性もおり、シングルマザーの場合は収入がさらに少ない場合もあります。

 このような障壁や制約には公式のものも非公式のものもあり、各国・地域の経済に全面的に参加し、被雇用者として、あるいは起業家として家族を扶養する女性の能力を損なっています。このような障壁はアジア太平洋地域に特有ではありません。同じような障壁が違う形で世界中どこにでも存在します。しかしここは世界で最も活力にあふれる経済地域であるので、私たちの行動が他のあらゆる地域に影響を与えます。

 障壁の中には旧習がそのまま残り、新しい経済の現実や正義の概念を反映していないものもあります。家族を扶養するため男性がより報酬の高い仕事に就けるようにする経済秩序を維持する障壁もあれば、今も残る文化的規範や、危険や不健康とされる仕事から女性を守る必要があるという考えを反映している障壁もあります。

 実際にはより強固な社会の構築に必要な経済成長を自ら拒否する方が危険です。また女性にとって不健康なのは、経済成長に全面的に貢献する機会が与えられないことです。なぜなら誰もが、そして誰よりまもず彼女たちの家族が一層豊かになる機会を奪われるからです。

 経済秩序は自動的に存続するものではありません。経済政策の決定者、政治指導者、財界指導者による大小さまざまな、数え切れないほど多くの決定を通じてつくられ、つくり直されます。ですから女性の機会を向上させたいのであれば、まず女性(の進出)を制限する特有の課題に明確に対処する健全な経済政策を策定しなければなりません。その理由を申し上げましょう。ゴールドマン・サックスの報告書によると、女性の労働参加への障壁が減少すれば、米国のGDPは9%増加するそうです。確かに今もこうした障壁はあります。ユーロ圏ではGDPが13%増加し――これは今必要とされています――日本では16%増加します。男女間格差を縮小して女性の潜在能力を発揮させれば、中国、ロシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、韓国などいくつかのAPEC参加国では、2020年までに国民1人当たりの収入が14%増加することもありえます。

 もちろん収入が増加すれば消費も増加し、それ自体がさらなる成長の後押しとなります。そしてここでもまた女性が大きく貢献します。ボストン・コンサルティング・グループの調査では、女性が決定権を持つ消費の金額は2014年までに全世界で15兆ドルに上ると結論付けてています。さらに2028年までには、世界中の消費支出の約3分の2が女性が決定権を持つ支出になると言っています。

 データをもう少し深く掘り下げると、女性による消費の質と貯蓄額の両方から建設的な利益が生じることが分かります。複数の調査結果から、女性は自らの収入から、食物、医療、家の修繕、自分自身や子どもの教育費により多く支出していることが分かっているからです。端的に言えば、女性は再投資します。またこの種の支出はさらなる雇用の拡大や地方経済の多様化につながる乗数効果を持ちます。それがひいては高い教育を受けた、より健康な市民の確保だけでなく、市場が冷え込んだ場合の緩衝材にもなります。

 調査では女性が男性より貯蓄するとの結果も出ています。聴衆の中にこのデータに驚く女性がいらっしゃいますか。準工業国20カ国のデータによれば、女性が生み出す収入が世帯収入に占める割合が1ポイント上昇するごとに国内貯蓄額の合計は約15ベーシスポイント上昇するそうです。貯蓄率の向上は課税基盤の強化にもつながります。

 企業の投資、販売、採用において女性への機会均等をより効果的に実施すれば、収益性と企業統治の面で恩恵を受けます。マッキンゼーの調査では、経営者の3分の1が新興市場で女性のエンパワーメントに投資した結果、増益になったと報告しています。また別の調査では、企業の経営陣の女性比率の高さと業績の間で強い相関性が証明されています。世界銀行の調査では、女性の労働者と管理職に対する差別をなくすことで、労働者1人当たりの生産性が25~40%向上しうることが分かっています。また多くの国では、女性が特定の部門で働くことを妨げる障壁を減らせば、労働者の男女間の生産性格差を3分の1から2分の1程度縮小できます。

 このような業績の向上を達成できるのは、障壁の除去により女性の才能と技能をさらに効率的に活用できるからです。そして今日のグローバル化した世界では、この競争力がかつてないほど重要です。こうした全てのことが、私が最も言いたい点の裏付けになっています。すなわち、女性が経済的潜在能力を自由に発揮できれば、地域社会、国、世界の経済実績が向上します。

 私が意味するところを説明するために経済の一部門である農業を見てみましょう。世界各地で農業主導の経済成長をけん引する上で、女性が重要な役割を果たしていることが分かっています。中国やインドの目覚しい台頭で見てきたように、農業は開発の強力な原動力です。APEC参加国・地域の中にも、女性が農業労働力の半分近くを占めているところがあります。女性は種を植え、家畜を世話し、農作物を収穫し、収穫物を市場で売り、食物を保存し、食べるために調理するなど、一連の農業関連活動のあらゆる側面を支えています。

 しかし今日の農業における女性の役割については、こうした作業の全てに女性が関わっているにもかかわらず、こうした努力に対しあまり大きな成果が上がっていません。女性の農業従事者は男性より最大30%生産性が低いのですが、それは労働時間が短いからでも、努力が足りないからでもありません。女性農業従事者が利用できる資源が少ないからです。入手できる肥料や道具が少なく、種苗の品質も悪く、訓練や土地をできる機会も男性より少なくなっています。しかも家事はほとんど女性がしなければならないので、農作業にかける時間も男性よりずっと少ないのです。このような資源面での格差が縮小し、資源が平等に、さらにはより効率的に分配されれば、農業の生産性での男女間格差はなくなるでしょう。それには利点があります。例えばネパールでは、女性に相続権があるので母親が土地を所有していることが多く、重症の低体重児の数が少ないのです。

 私たちは途上国・地域の成長を加速させると同時に、地球のために安価な食物の生産を拡大するチャンスを得ています。国連食糧農業機関によれば、途上国・地域で女性の進出を阻んでいる資源の入手についての格差を縮小した場合、毎年世界中で今より1億5000万人多くの人に食料を供給できるようになり、その他にも世帯収入の増加、市場の効率化、農業貿易の拡大などの結果が得られます。

 経済の他の部門でも同じような影響が見られます。なぜなら女性の起業家精神が旺盛だからです。女性が経営する企業はインドネシアでは50万社以上、韓国では40万社近くに上ります。中国では小規模企業全体の20%を女性が経営しています。アジア全体では、地域の経済的飛躍に不可欠な軽工業部門で女性がこれまで優位に立っており、これは今後も続きます。エコノミストの予想によれば、女性が経営する企業は現在、米国の雇用全体の16%を提供しており、今後7年間に見込まれる新規雇用の3分の1近くを創出します。

 そのような証拠がすぐ手近にあるため、男女格差が小さいほど経済生産性が向上するという直接的相関関係が世界経済フォーラムの「男女格差報告」で示されたのはあまり驚くことではありません。世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長は「国が成長し繁栄するには、女性と少女を(男性と)平等に扱う必要がある」と結論付けています。今日ここで私たちが採択する宣言は、より多くの女性が労働者、起業家、ビジネスリーダーとして潜在能力を発揮できるようにし、男女格差をなくす第一歩となり得ます。

 この宣言に掲げた目標は非常に具体的です。女性に資本へのアクセスを与え、女性起業家が自らのアイデアを、非常に大きな成長と雇用創出の源泉となる中小企業へと転換できるようにするため全力を注ぎます。女性があらゆる金融サービスを利用できるよう法および規制体系の精査・改革を求めます。そうした改革は、女性たちが子どもの幸福を犠牲にせずにキャリアを追求する助けにもなりえます。

 起業した女性たちが事業を継続できるよう、女性の市場アクセスを改善しなければなりません。例えばいわゆる情報の非対称性という問題を正す必要があります。これは先ほど農業について議論したように、利用できる貿易および技術支援プログラムについて女性に情報が提供されていないという問題です。

 このような多くの取り組みを具体化することを目指す国務省のプログラムが2つあります。「繁栄へ続く道(Pathway to Prosperity)」と呼ばれるプログラムは、小規模企業の経営者、小規模農家、職人が地元で、あるいは地域貿易を通じて事業を活性化させるのを支援することを目的に、南北アメリカ大陸の15カ国の政策決定者と民間指導者を結び付けます。また「アフリカ女性起業プログラム(African Women’s Entrepreneurship Program)」は、アフリカ成長・機会法(AGOA)の対象国の女性に働きかけ、AGOAによる支援を活用するための情報やツールを提供します。

 最後に官民両部門で女性指導者の台頭を支援しなければなりません。なぜなら彼女たちはこうした課題について直接の体験から得た知識を持ち、理解しているからです。そして障壁を取り除いて女性を全ての経済部門に参加させるための政策やプログラムを策定する上で、彼女たちの考え方には大きな価値があるからです。

 この目標の達成に向け、すでに大きな一歩を踏み出した企業もあります。ゴールドマン・サックスは、同社の「1万人の女性(10000 Women)」キャンペーンで、途上国・地域の次世代の女性ビジネスリーダーを教育しています。コカコーラの「ファイブ・バイ・トゥエンティ」キャンペーンは、2020年までに世界中で500万人の女性起業家を支援することを目標に掲げています。さらに今週、ウォルマートがその購買力を生かし、女性起業家を支援するため、女性経営者の企業からの商品購入額を2016年までに世界中で200億ドルに倍増すると発表しました。加えて、同社に商品を供給する外国の農場や工場で働く女性を含め、女性の職能開発を支援するために1億ドルを投資する予定です。

 このようなプログラムは、世界中の企業の女性への投資姿勢に必要な恒久的転換の始まりにすぎません。

 私が「参加の時代」と呼ぶ時代を導き入れることの難しさを私が甘く見ているわけではありません。法律を変えるには政治的意思が必要です。文化や行動を変えるには社会の意思が必要です。この全てに政府、市民社会そして民間部門の指導力が必要です。たとえ国家が女性の経済参加を促し女性の生産性を向上させるために積極的な構造改革を追求しても、いつも期待通りの結果が得られるとは限りません。ですから継続が必要です。私たちの長期計画には粘り強さが欠かせません。

 経済秩序の変更は困難かもしれないし、どんなに政策上の戦略が優れていようと、それがもたらす前進には限りがあります。一方で障壁を取り除くためだけでなく、私たち全員がこの分野に積極的に投資し関与するために、私たちは皆、選択しなければなりません。今日ここに出席している皆さんはAPEC全域の指導者であり、ここに来ることも、女性と経済の問題に重点的に取り組んでAPEC全体に影響するメッセージを発信することもすべて皆さんの選択です。少女たちに学業の継続と技能の習得を奨励したり、(女性たちが)銀行と交渉し、懸命に働いて自分と子どものために成果をあげようとする女性への融資の重要性を理解してもらうために、指導者や市民は多くの決断をするでしょう。そうすることで、女性にとっての「参加の時代」の質を高めるために大いに役立つでしょう。

 他にも気を配らなくてはならない分野が数多くあります。医学研究費が男性と女性に平等に投資されているかを確かめる必要があります。故意に、あるいは不注意により、税制で女性が差別されることがあってはなりません。また女性にも生産性が高く貢献的な社会の一員となる機会を平等に与えなければなりません。

 今日の世界では壮大で大胆なアイデアが求められています。それは私たちが実行している多くのことが、求める成果を挙げていないからです。女性の就職が容易になり、女性がもっと容易に家庭、地域社会、国の財産を利用できるようになれば、景気を刺激する波及効果が出てくるでしょう。多くの人はそこからさまざまな利益を得られると言いますが、私は多少控えめな目標を設定したいと思います。確かに(女性の進出が促されれば)食料が増産され、教育機会が増え、金融の安定性が高まり、恩恵を受ける家庭が世界中で増えるでしょう。そして社会のあらゆる階層が利益を受けます。

 しかし私たちの意志と努力の確かな裏付けがなければ、私たちの宣言は無意味になります。将来人々がこのサミットを振り返り、このように言ってもらえれば、このサミットは歴史に残るものとなるかもしれません。「サンフランシスコで開かれたあの会合では、アジア太平洋全域から有力な人たちが集まり、それまで一度も語られなかったことが話された。女性を参加させることは良いことだ、あるいは正しいことだと言っただけではない。皆で知恵を絞り、障害に真剣に取り組むと宣言したのだ。なぜならこれにより、自分たちが代表する全ての人々が恩恵を受けるからだ」と。

 その後は、私たちが関心を寄せる問題をきちんと追求しているか確認するため、進捗(しんちょく)状況を評価する必要があります。自分たちの生活では確かにやっていますが、国や地域全体で進捗状況を評価することが重要です。このサミットを終えてそれぞれの政府や企業に戻り、雇用の促進、国家の債務の削減、国・地域間の貿易の拡大などに取り組みながら、常に頭の片隅では女性をこうした成果に貢献させるにはどうすればよいかを考えれば、何らかの進展があり、何をすべきかの主張だけでなく、どれだけ進んでいるかの評価・追跡においても先頭に立つことになると確信しています。

 共に長い旅路を歩んでいくことを考え、サンフランシスコに集まっていただき本当にありがとうございます。こうして見渡せば、過去50年どころか過去30年の間に目覚しい発展を遂げた国々を代表する友人たちがアジア太平洋全域から集まってくれたようです。目標を達成するには時間がかかります。協調して取り組む必要があります。しかしこの「参加の時代」の将来性を追求し、女性の経済的潜在能力を掘り起こし活用するようになれば、新たなより良い未来がやってくると確信しています。

 だからこそ米国民を代表してここに出席し、2011年9月16日にここサンフランシスコで始まったことの証人となることを光栄に思います。これは私たち皆にとって明るい未来の始まりです。本当にありがとうございました。