ウィリアム・バーンズ国務副長官の東京大学での講演と質疑応答

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

2011年10月27日

 北岡(伸一)教授、ご紹介と温かい歓迎の言葉をありがとうございます。本日、東京大学を訪れることができ、とても光栄です。

 東京大学の学部、大学院、そして研究所は世界最高水準にあります。何人もの卒業生が化学、物理学、文学、平和の分野でノーベル賞を受賞しています。とりわけ本日は、かつてのフルブライト奨学生で、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌敏博士の名前を冠したこのホールで講演でき名誉に思います。

 米国人としては、東大に素晴らしいアメリカ研究プログラムがあると知り、うれしく思います。外交官としては、東大が果たしてきた、日本のトップの外交官の多くを教育するという歴史的に重要な役割を称賛します。私はこれまでに、そのうちの何人かと一緒に仕事をしてきました。ですから繰り返しますが、このように高名な歴史ある大学で皆様にお会いできて非常に光栄に思っています。

 国務副長官としての私の最初のアジア訪問が日本から始まるのは当然のことです。当然のことですが、初めてではありません。覚えていらっしゃると思いますが、クリントン国務長官は、就任後初の訪問国として日本を選びました。オバマ大統領がアジアで最初に訪れたのも東京であり、さらに付け加えれば、ホワイトハウスの大統領執務室で大統領が初めて会見した外国の指導者は日本の首相でした。

 日本が米国にとって引き続き非常に重要であることは、今日ここにいる誰の目にも明らかですし、私たちの発言と行動を通じ世界中で明らかとなっています。2国間の安全保障同盟から、地域および国際的な課題への共同の取り組み、非常に重要な経済関係、そして日米それぞれの文化を豊かにし、両国民をさらに緊密に結び付ける友情と国民同士の絆に至るまで、日米関係はまさに地球規模のパートナーシップです。

 私は東京で、日本のあらゆる政府機関やさまざまな政党の幹部と会合を持ちました。彼らは皆党派を超えて、日米同盟の重要性を支持しています。この考えは先月ニューヨークで、野田首相がオバマ大統領にはっきりと表明しました。最近、米国の議員はほとんど全ての事柄について意見が合わないように見えますが、日本との強固な関係は全員が支持しています。

 先月には大統領が野田首相と、国務長官が玄葉外務大臣とそれぞれニューヨークで会談し、今週は国防長官が日本を訪問するなど、米国は野田内閣とすでに多くの緊密な協議をしており、私の今回の訪問はこれらの会合を踏まえたものです。来月にはフランスでG20、ホノルルでオバマ大統領が議長を務めるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、バリで東アジア首脳会議など、日米両首脳が参加する多国間会議が予定されており、こうした両国の緊密な関与はこれらの会議を通して続くでしょう。米国は軍事、外交、経済面で力を有するアジア太平洋地域の一員であり、今後もアジア太平洋国家であり続けます。私たちの目の前で展開する21世紀の世界で、米国の未来にとってこれほど大切な地域は他にありません。

 クリントン国務長官が繰り返し述べたように、日米同盟は米国のアジア太平洋地域への関与における礎です。日米のパートナーシップは60年前に戦争の廃墟の中から生まれ、両国がかつて経験したことがないほど強固な同盟のひとつになりました。そして地域の平和、安定、繁栄を支え、いろいろな意味でこの地域に大きな経済成長と活力をもたらす環境を整えてきました。

 米国は同盟の下、日本の安全保障およびアジア太平洋地域の平和と安定の強化に取り組む決意です。これら2つの目標は切り離せないものであり、相互に強化し合うものです。この同盟は米国のより広範な地域的関与の多くを支えており、共通の利益と価値観、民主主義の理想、人権の尊重、法の支配という堅固な土台の上に築かれています。

 日米同盟の重要性は世界的な文脈で考えることが重要です。今日、世界と米国は転換点に来ています。クリントン国務長官が言ったように、アジア太平洋地域は現在、世界政治で主要な推進役を果たしており、この地域への米国のより深い関与が不可欠です。第2次世界大戦後、米国はさまざまな機関や国同士の関係を結び付ける、強力で永続的な大西洋横断ネットワークを築き上げました。それは今日も良い結果をもたらしています。今は太平洋を越えるネットワークを構築しなければなりません。

 米国が太平洋国家としての投資を倍増させる時期にきています。これはオバマ大統領が政権発足当初に定めた戦略的方針であり、すでに成果を挙げています。その成果は双方にもたらされています。アジアが米国の将来にとって非常に重要であるように、この地域に関与する米国はアジアの将来にとって不可欠です。

 日米同盟が米国のアジア太平洋への戦略的転換の支点となることは、疑う余地がありません。

 日米同盟の強さを測る尺度のひとつは、新たな課題に対応する優れた能力です。今年の3月、東日本大震災への対応で日米両政府が両国史上最大の合同軍事作戦を開始した時ほど、この能力がはっきり示されたことはありませんでした。

 「トモダチ作戦」と呼ばれたこの作戦の成功は、日米が友人同士として共に達成できることを説得力のある形で示しました。またこの作戦から学んだ教訓を生かし、両国の共同能力を向上させました。この経験が端的に示したのは、ほとんどの米国人や日本人が抽象的にしか理解していなかったと思われること、つまり日米同盟とは単に紙に書かれた条約や一連の軍事施設のことではなく、日米両国民と両国間の切れることのない絆だということでした。

 この場を借り、日米の2国間同盟と、さまざまな切迫した問題に対する地域および全世界的な協力関係を向上させる両国の取り組みをさらに強化する上で、私たちが取っている措置を紹介したいと思います。今年6月、歴史的な日米安全保障協議委員会、いわゆる「2プラス2」閣僚会議で、相互の安全保障に関する責任を再確認し、同盟の将来に向けた計画が示されました。

 具体的には在日米軍を再編し、優先課題への対処を向上させる一方で、米軍の駐留が現地の人々に及ぼす影響を軽減します。この過程において、これらの取り組みにより両国に共通の戦略的目標を確実に推進できるよう、日米は緊密な協議を続けます。私たちはこれらの目標に向け、すでに大きく前進しています。

 日米共通の目標には、極めて重要な2国間の防衛と地域的安全保障の問題があります。6者協議を通じて朝鮮半島の完全な非核化に取り組みながら、北朝鮮による挑発行為を抑止し、核拡散活動を阻止しなければなりません。同時に宇宙やサイバーネットワークなどに対する脅威のように、これまでになかった種類の脅威に対処する能力をさらに高めなければなりません。航行の自由の原則を守り、海賊行為を根絶し、国際法に沿う形での海事問題に対処する強固な地域の協力体制をつくらなければなりません。やるべきことがたくさんあります。

 米国と日本は共に、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム、APEC、東アジア首脳会議など重要な地域組織の有効性を高めるために精力的に取り組んでいます。これらの組織はより成熟した安全保障・経済の枠組みをアジア太平洋地域に構築する上で非常に重要であり、ひいてはこの枠組みが地域の安定と繁栄を促進します。日本と米国は法の支配と紛争の平和的解決に努力している2大民主主義国家であり、今述べたような組織をはじめとする地域的な多国間の機関や機構を継続的に発展させる上でパートナーとなるのが当然です。正式な組織に加えて、私たちはオーストラリアや韓国などの国々と有益な3カ国間協議も開催しており、この種の協議をインドやインドネシアなどの多様な国々まで拡大しつつあります。こうした対話により、同じ考えを持つ国々を集め、地域的な問題と具体的な課題をいずれも解決する能力がさらに高まるでしょう。

 しかしお話ししたように、日米関係は単に2国間または地域的なものにとどまりません。これは世界規模のパートナーシップなのです。私たちは大洋や地域を越えて共有する課題の解決に向け、共に取り組んでいるのです。アフガニスタンでは日本は、2国間援助で米国に次ぐ第2位の支援国です。日米のパートナーシップにより、アフガニスタン治安部隊の創設や、革新的な統治・開発プロジェクトが大きく前進しました。

 中東では過去10年にわたり、日本はイラクのエネルギー部門のみならず、水道やかんがいのプロジェクトで、イラクの復興と開発に不可欠な貢献をしました。日本は中東和平を長年支援してきました。これはたとえ最も難しい国際問題でも解決しようとする日本の決意を反映しており、私たちはシリアの民主化やリビアで現在進んでいる政権移行に対する日本の強い支持に感謝します。

 イランからの新たな脅威に直面する中、同国の国際義務にあからさまに違反したテロや核拡散活動を支援する個人および組織に対する制裁に向けた日本の取り組みを歓迎します。

 スーダンに関しては、国連平和維持活動の支援のため自衛隊の技師を派遣するという野田首相の最近の発表を歓迎します。

 ビルマについては、意味のある、永続的な状況の改善につながるかもしれないと私たちが期待する変化の兆しが見え始めました。より民主的な政府および社会に向かう動きを促進するに当たり、日本が重要な役割を果たすことを歓迎します。

 そして言うまでもなく、より近いところでは、この地域と世界において、その高まりつつある経済的地位にふさわしい、建設的で責任ある役割を担う国として中国が平和的に発展するのを促すため、日米は協力しています。両国は法の支配の一層の尊重と国際規範の順守を促す方法で、中国に関与しようとしています。

 世界の経済大国である日米の間で、これほど大規模かつ広範囲に貿易と投資が行われている中、両国の繁栄は相互の安全保障と密接に結びついています。ちょうど2週間前にニューヨークでクリントン国務長官が重ねて強く主張したように、外交と安全保障の問題を経済成長と繁栄の問題から切り離すのは不可能です。いずれも国際舞台における強さと指導力を生み出す不可欠な要素です。

 日本と米国はそれぞれ国内で、また世界的な金融危機の結果、多くの経済問題に直面していますが、さらに日本は今年、3月11日の東日本大震災と原子力発電所の事故からの復興という極めて難しい課題に立ち向かってきました。復興に向け多くの作業が残っていますが、この国がいかに早く日常生活を取り戻したかを見れば、日本の立ち上がる力がどれほど強いかが分かります。ほぼすべての主要なインフラがすでに完全に復旧したのは、本当に驚くべきことです。日本政府は被災地の生活の立て直しを支援するため、意欲的かつ慎重に計画した復興活動に熱心に取り組んできました。バイデン副大統領が8月の訪日時に述べたように、米国は友人として日本と共にあり、可能な限りこの復興を支援します。

 日米が国内外での困難な経済状況に対処するに当たり、両国は協力し、成熟した経済関係をさらに深化させ、アジア太平洋地域の活力ある成長を生かし、それを両国民のために役立てる必要があります。その中には貿易障壁の撤廃が含まれます。APECは環境関連の製品やサービスの貿易振興と、参加国・地域間の商用渡航の促進という目標を掲げ、まさにこうした機会を提供します。

 しかし他にもできることがあります。米国は現在、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)と呼ばれる、最先端の高度な多国間の自由貿易条約を8カ国と交渉中です。この条約は貿易障壁の低減だけでなく、経済競争の水準を上げ、単なる成長ではなくより良い成長への道筋をつけます。日本がTPPに関心を持っていることを歓迎します。もちろん、TPPへの参加の是非に関する日本の決定は、日本の優先事項と利益を慎重に考慮した上で下されると認識しています。

 これらの大きな経済的課題に取り組みながらも、私たちは経済成長の基礎的要素である、日米共同のイノベーションと研究開発を、科学、技術、エネルギーのあらゆる分野で支援し続ける必要があります。両国の経済成長をさらに推進するため、私たちがより緊密に連携し、これらの分野で新しい戦略的方向を打ち出すことが重要になるでしょう。

 日米同盟のような同盟は、世界規模の安全保障や経済的繁栄などの複雑な問題を中心に展開しているとはいえ、共通の価値観と絆の上に築かれています。両国民の絆があればこそ、両国の同盟も完全な意味を持つのです。国民同士の結びつきを強化する取り組みの中で、お互いの言語や文化を学ぶために若者を外国に送ることほど強く永続的な影響を与える方法は他にほとんどありません。

 フルブライト奨学金、マンスフィールド・フェローシップ、JETプログラム(語学指導等を行う外国青年招致事業)など、日米両政府が主催する交流プログラムの参加者はこれまでに3万5000人を超えています。両国政府職員間の交流もまた相互理解を育む上で主要な役割を担っています。日本の国会議員や米国の連邦議会議員を含む750人以上の政府職員が、これまでに政府間交流プログラムに参加しています。また専門職に就いている4000人近くの日本人が、インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)で米国について学びました。その中にはノーベル賞受賞者や村上春樹のようなベストセラー作家、4人の首相経験者がいます。同様にフルブライト・プログラムの参加者には4人の日本人ノーベル賞受賞者がいます。必然的な結論として、これらの交流プログラムは優秀な人々を引きつけ、彼らがそれぞれの分野で指導的立場に立つために役立つと言えます。

 両国民の絆は強いですが、これは自動的に維持できるものではありません。私はよく言うのですが、外交関係とは自転車に乗るようなもので、ペダルを踏み前進し続けなければ転んでしまいます。1997年には日本は世界のどの国よりも多くの留学生を米国に送っていました。現在(2010年のデータ)、日本は第6位です。14年前には、米国で学ぶ日本人留学生の数は現在の2倍でした。

 私たちはこの傾向を増加に転じるために力を注いでおり、日本政府も同様に努力していることを知っています。

 私たちは若い世代の日本の財界指導者に接触して、日米双方の文化を知る従業員がいかに重要かを理解してもらう活動をしています。さらにJETプログラムに参加した米国人のネットワークを使い、日本人学生に米国への留学を勧めています。

 私たちはフルブライト奨学金のような重要なプログラムへの予算の維持に努めています。また、アメリカン・フィールド・サービス(AFS)などの団体に奨学金を提供し、津波で最も大きな被害を受けた県の若者が、来年の夏、米国に滞在できるようにします。日本人留学生に米国に来てもらえるよう努力する一方で、私たちはより多くの米国人留学生を日本に送っており、昨年の日本への米国人留学生数は大幅に増えて5700人となりました。

 クリントン国務長官がこうしたプログラムに言及した際に述べたように、私たちは勉学と生活を共にした世代がいかに日米同盟に活力を与えてきたかを見てきました。外国からの訪問者や海外旅行が――そこで時々不満を感じたり、小さな成功を味わったり、人との交流もあるのですが――いかに人格と物の見方を形成してきたかを見てきました。ここ東大の学生の皆さんに、短期間の夏季交流プログラムであれ、1年間の留学であれ、大学院への留学であれ、何らかの形で米国で学ぶことを検討してみてほしいのです。日米間の教育および文化交流の伝統を受け継ぐ次世代の一員になってください。

 揺るぎない安全保障同盟、世界規模のパートナーシップ、緊密な経済および通商関係、両国民の絆など、日米両国を強く結び付けるこれらすべての分野は、相互の深い信頼と友情の証です。先ほど私が強調したように、この関係は何十年にもわたりこの地域の平和、安全、繁栄を支えてきました。将来を考えるに当たり、私たちは引き続きこの歴史を足掛かりに、両国のパートナーシップをより強化し、私たちが直面する途方もなく大きな課題と機会により迅速に対処できるようにしなければなりません。

 米国は日本との関与を固く決意しています。アジア太平洋地域への関与の強化を固く決意しています。そして双方の次世代を相互に結びつけることを固く決意しています。あなた方のような若いリーダーがいれば、私たちが共に達成できることに限界はありません。

 ありがとうございました。

以下質疑応答

 本日はお越しいただきありがとうございます。私は東京大学公共政策大学院で公共政策を学ぶショーン・ケッチです。できるだけ簡潔にお聞きします。米国の軍事態勢については、米軍が世界中で数のみならず役割の面でも縮小しているように見えます。リビアでは主要な役割を北大西洋条約機構(NATO)とフランスに譲り、中東では現在、兵力を縮小しています。またゲーツ前国防長官は(国防長官として)最後の政策演説で、米軍の(海外海外展開の)過剰拡大の影響について警告しました。一部の2カ国同盟の相手国では、負担の共有に関しあつれきが見られましたが、日本への関与を約束している中、このような米国の撤退傾向をどうご覧になりますか。

 ありがとうございます。非常に良い質問ですね。正直なところ、私は米国が世界各地からいかなる形でも撤退しつつあるとは思いません。アジアと太平洋地域では特にそうです。世界中の多くの政府と同じく、米国も予算削減の圧力に直面しているのは事実です。またオバマ大統領がはっきり述べてきたように、米国はブッシュ大統領が任期終盤に達した合意に沿い、イラクにおける米軍の関与を大幅に縮小し、今年末までに撤退させる方向に動いています。アフガニスタンでは2014年末までに米軍を撤退させて、アフガニスタン側に完全に治安維持の責任を持たせ、米軍の関与を終わらせるという目標を明確に持っています。しかし同時に、パネッタ国防長官が今週初めに来日した際に明らかにしたように、米国はアジア太平洋全域で、安全保障、経済、外交、政治面での関与を深化させるつもりです。ですからこの地域では、米国による安全保障面での関与の強化が見られるでしょう。米国が今も世界最大の軍事力を持つことは事実であり、これは米国の利益、日本の利益、アジア太平洋地域全体の人々の利益にとって不可欠と私たちが考える安定、平和、安全の追求に利用できる、非常に重要な要素であると考えます。ですからアジア太平洋では撤退や縮小はなく、実際にはそれと正反対になると思います。なぜなら21世紀のこれからを考えると、世界でこのアジア太平洋地域よりも重要になる地域は他にないからです。

 共同通信の川北です。(中略)おそらくご存知と思いますが、野田首相と沖縄の仲井真(弘多)知事が本日会談し、知事は現段階では普天間基地の移設計画には反対であり、受け入れられないと述べました。現行計画への沖縄の反対にどう対応しますか。

 普天間基地の問題については、単に一般的なコメントにとどめておきます。今年6月に米国の国防長官と国務長官が日本の防衛大臣と外務大臣と会談し、両国の安全保障関係の強化に向けた幅広い計画を前進させる重要性について合意しました。そのうちのひとつの要素が普天間基地の移設です。さらに移転に向けた着実かつ迅速な前進の重要性でも合意し、パネッタ国防長官が今週初めに東京を訪れた際に再確認しています。これが複雑な問題であることは認識していますが、6月に確認され今週再確認されたこの計画が、最終的には日米同盟、日本、米国、沖縄、そしてこの地域にとって有益であると私たちは確信しています。

 ありがとうございます、バーンズ国務副長官。私は公共政策大学院のフジナミ・ユカです。北朝鮮の核開発計画は6者協議で解決できるように思えます。一部のテレビ報道によると、米国と北朝鮮は協議を再開したとのことですが、もちろん核の問題についてではないそうで、つまり…すみません。

 いえ、とても良い質問です。まず米国は6者協議で日本と非常に緊密に協調しています。米国は日本や他の参加国と同じく、朝鮮半島における検証可能な非核化に引き続き全力で取り組んでいます。また6者協議の本格的な再開、真剣な交渉過程の再開の可能性に今も関心があります。しかし同時に、北朝鮮側がそのような結果に向けて努力するという証拠を見せてもらうことも重要と考えます。ですからここ数日間ジュネーブで、北朝鮮との2回目の2国間協議を行ってきました。米国側の代表は、この会議を「有益」であり、双方の意見の相違を「狭める」ものであったと公に述べましたが、同時にいくつかの違いが残っているという事実も明らかにしました。米国は朝鮮半島の検証可能な非核化という目標に引き続き取り組んでいきます。また日本、韓国をはじめとする6者協議の参加国と緊密に協力する姿勢は変わりませんし、日本が北朝鮮との間で抱える他の懸案事項、特に拉致問題についても引き続き留意していくつもりです。私たちは拉致問題が日本にとってどれほど重要であるか理解しており、米国もその懸念を共有していることを引き続き北朝鮮に対し強調しています。

 お話ありがとうございました。私は公共政策大学院で学ぶミヤザキ・ハルヒトです。東アジア首脳会議についてお聞きします。米国は今年から東アジア首脳会議に参加します。これは米国の東アジア・太平洋地域での政策の重要な変化だと思います。これはアジア太平洋地域での米国の政策の再編を反映していますか。

 もちろんこれは、オバマ大統領とクリントン国務長官がアジア太平洋地域に非常に高い優先順位を付けていることを反映しています。オバマ大統領が来月、米国大統領として初めて東アジア首脳会議に参加するのは偶然ではありませんし、先ほど申し上げたように、アジア太平洋国家として、より積極的な役割を果たすという米国の決意を強固にします。それが意味するのは、従来の条約に基づく同盟、特に日本との同盟の強化、またそれを補完するものとしての中国や、インドネシアのような地域の新興国との健全で建設的な関係の構築、組織としてのASEANとの結びつきの強化、そしてAPECの強化です。APECはアジア太平洋地域における最も重要な経済機構であると私たちは考えており、オバマ大統領は来月ホノルルで、今年のAPEC首脳会議の議長を務めます。これらすべてが、アジア太平洋全域の人々により大きな機会を創出する地域への貢献であると思います。講演の中で強調したように、米国はアジア太平洋国家であり続けるだけでなく、この地域全体での関与を深化させると強く決意しています。なぜなら申し上げたように、米国や日本の利益にとって、また将来の国際秩序にとって、アジア太平洋地域ほど重要になる、あるいはより重大な結果をもたらす地域は、世界で他にないと確信しているからです。

 ありがとうございました。私は教育学部のセキタニ・コウキです。中国が経済的に劇的に成長している状況で、米国は相対的な力の均衡、アジアの国々のような他国との関係を再考する時期にきているのではないかと思います。米国の他国との関係はどのようになっていくとお考えですか。私の妻は中国人で、今後ほとんどの時間を中国で過ごすことになるので、この質問をしました。

 もっともな質問です。オバマ大統領が何度も述べたように、アジア太平洋地域の平和で安定し、繁栄する国家としての中国の台頭を米国は歓迎します。同時に先ほども言ったように、米国はアジア太平洋地域への関与を深め、新たな枠組みを構築し、この地域のあらゆる人々、国、国民、社会に恩恵を与えると考えるルールを強化するさまざまな方法を探しています。実際に、米中関係は協力分野と競合分野が組み合わされています。多くの分野では共通点がありますが、意見が著しく異なる分野もあります。それらについて、お互いに正直である必要があります。しかしオバマ大統領が何度も強調したように、米国は相互の尊敬と利益に基づく建設的な対中関係の構築に精力的に取り組んでいます。私たちにはそのような関係の構築が可能であり、それが米中両国民のみならず、この地域全体、そして世界中の利益になると私は確信しています。

司会 バーンズ副長官、ありがとうございました。