「米国の太平洋の世紀」-APECでのヒラリー・クリントン国務長官の演説

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

東西センター、ハワイ州ホノルル

2011年11月10日

 ここハワイを、そして東西センターを再訪でき、大変うれしく思っています。ここはアジアへ向かう米国の玄関口であり、世界で最も素晴らしい場所のひとつでもあります。25年間にわたり国務長官がここを訪問しなかった理由は私には分かりませんが、私自身は今回で3回目の訪問となることをうれしく思います。米国は今年のアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議をホノルルで開催することを誇りとしています。それは米国がAPECのパートナー諸国との関係に力を入れているからですが、それだけでなくハワイの美しさと文化をパートナー諸国と共有できるからです。明日ここに到着するオバマ大統領も、各国首脳を自分のふるさとに迎えることを心待ちにしています。

(中略)

 オバマ政権は発足当初からアジア太平洋地域の重要性を認識してきました。非常に多くの世界的な流れがアジアに向かっています。アジアは世界の人口の半分近くを占め、世界有数の規模とスピードで成長する経済を有する国・地域を擁しています。また多くの船舶が往来する世界有数の港湾や航路もアジアにあります。一方、軍事力の増強、核兵器拡散の懸念、自然災害、世界最悪水準の温暖化ガス排出といった重大な課題にも直面しています。インド亜大陸から南北アメリカ大陸の西岸に至るアジア太平洋地域が、21世紀の世界の戦略的・経済的中心となることが次第に明らかになってきています。そして今後何十年間かの米国の国政における最も重要な仕事のひとつは、外交、経済、戦略などの面で、この地域への投資の大幅な増加を確実にすることです。

 オバマ大統領のリーダーシップの下、米国政府のあらゆる部門にわたり、外交官、軍の指導者、貿易・開発の専門家が、この地域との関係を強化し、幅広い継続的な前進の道を開くために精力的に仕事をしています。

 世界の他の地域でも、これを可能にするような出来事が起きています。イラク戦争が終わりに近づいています。アフガニスタンでは移行期が始まっています。この2つの戦域に膨大な投資をした10年が終わり、私たちは転換期に来ています。今はそうした投資の一部を他の地域での機会や義務に向けることが可能です。そしてその中でもアジアは、可能性に満ちた地域として際立っています。

 米国とそのパートナー諸国がこの地域で達成しようとしていることにはお手本があります。それは、米国とヨーロッパのパートナー諸国が力を合わせて過去50年間に成し遂げた成果です。20世紀にはさまざまな機関や関係で構成される包括的な環大西洋ネットワークが構築されました。その目標は民主主義の強化、繁栄の増進、集団的安全保障でした。このネットワークはヨーロッパ内での活発な双方向貿易と投資において、そしてリビアやアフガニスタンのような国で、多大な恩恵をもたらしてきました。さらにイランのような国に対処する上で絶対に不可欠であることも分かっています。環大西洋の体制は米国の世界への関与の中心的な柱のひとつであり、今後もそうあり続けます。

 しかし今日は、それよりも活力に満ち、永続的な環太平洋の体制が必要とされています。つまり安全保障、繁栄、普遍的価値観を推進し、国家間の意見の相違を埋め、信頼と説明責任を促進し、今日の課題の解決に必要な規模での効果的な協力を奨励する、より成熟した安全保障と経済の枠組みです。

 大西洋を挟んだ枠組みが米国にとっても他の国々にとってもうまく機能するよう、その構築において米国が中心的な役割を果たしたように、今わが国は太平洋を越えて同様の役割を果たしています。21世紀は米国の太平洋の世紀となるでしょう。それは活力に満ち、複雑で重要なこの地域で、かつてないほどの働きかけや協力が行われる時代です。

 この目標は米国だけのものではなく、この地域全体の多くの国が共有しています。米国の指導力を今すぐ必要とするという声を、私はアジア太平洋地域の多くの国の外務大臣から聞いています。しかしわが国の指導力はすでに何十年にもわたりこの地域に利益をもたらしています。米国は太平洋国家として、またこの地域における外交・軍事・経済大国としての長い歴史を誇りとしています。米国はこの地域にとどまり続けます。

 私たちが長年の間に築いてきた同盟関係は、アジア各国の繁栄を可能にしてきた安全保障に貢献しています。米国の艦船がシーレーンを巡回し、貿易のために海上の安全を維持しています。国家間の紛争が激化する前に解決できるよう、米国の外交官が支援しています。米国は主要な貿易・投資パートナー、イノベーションが生まれる場所、何世代にもわたり留学生を受け入れてきた国、そして熱心な開発のパートナーとして、非常に多くの人々にとっての機会の拡大と経済的・社会的前進に貢献してきました。また民主主義と人権の強力な擁護者として、各国がそれぞれの社会を強化し、自国民が自由で尊厳のある生活を送れるようにすることを求めてきました。

 米国の関与はアジアの人々にとってと同様に、米国民にも成果をもたらしており、これからもそれは続くでしょう。これは私が特に強調したい点です。深刻な経済問題に直面するこの時代に、米国は世界各地での活動を縮小すべきと考える人たちが持つ懸念を私は十分に認識しています。私や他の政府高官が新しいアジアへの関与の時代について語るのを耳にすると、彼らはきっと「場所がどこであれ、なぜ米国が関与を強める必要があるのか。今は縮小する時ではないか」と考えるでしょう。これは無理もないことですが、間違っています。今後数年間にアジアで起きることは、わが国の将来に多大な影響を及ぼします。ですから傍観者となり、自国の将来を他人任せにすることはできません。私たちは国内での雇用創出につながり米国の景気回復を促す貿易・投資の新たな機会に関与し、その機会をとらえる必要があります。

 アジア太平洋地域は今、南シナ海での航行の自由の確保から、北朝鮮による挑発行為と核拡散活動への対策、さらには均衡のとれた包括的な経済成長の促進まで、米国の指導力を必要とするさまざまな課題に直面しています。米国にはこうした取り組みに影響を及ぼす、他にはない能力がありますし、米国の大きな国益がかかっています。

 以上が米国がアジア太平洋地域重視に転換した理由です。それでは一体どのような方法を取るべきでしょうか。米国のアジアへの関与における次の章はどのようになるのでしょうか。まず現政権が実施してきた戦略、すなわち私が前方展開外交と呼ぶ戦略への取り組みを維持します。前方展開外交とは政府高官、外交官、開発専門家、常勤職員など、米国のあらゆる外交資産をこの地域の隅々まで派遣することを意味します。

 具体的には、私が以前に詳しく説明した6つの主な行動方針に沿って進めていきます。すなわち2国間安全保障同盟の強化、新興国との実務関係の深化、地域の多国間機関への関与、貿易と投資の拡大、広範囲に及ぶ軍の駐留の実現、民主主義と人権の推進です。

 今後2週間で、私たちはこれら全ての分野を進展させます。オバマ大統領はここホノルルでAPEC首脳会議の議長を務め、来週には東アジア・サミットに出席する初めての米国大統領としてインドネシアで開催される同サミットに参加します。いずれも私も同行します。また私たちは米国と(安全保障)条約を結んだ同盟国である5カ国それぞれとの関与を特に重視しており、その皮切りとして、大統領がここハワイで日本の野田首相と長時間会談する予定です。その後、大統領はオーストラリアを訪問し、私はフィリピンとタイを訪れる予定です。さらに今月末、私は「第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム」に出席するため韓国を訪問します。

 ですから、これからの何日間かは重要な関与の期間となります。そこで、APECから同盟諸国への訪問、そして東アジア・サミットへと至る日程を追って、米国の目標について簡単にご説明したいと思います。これらの国々との関係で中心となるのは経済問題です。米国企業はアジア市場との貿易・投資の機会拡大を強く望んでいます。また機会の拡大、労働者と環境の保護、知的財産権の尊重、イノベーションの促進につながる、広範な基盤を持つ持続可能な成長という目標を、米国はほとんどの国々と共有しています。

 しかしそうした目標を達成するには、開放的で自由、透明かつ公正な、ルールに基づく秩序を構築しなければなりません。米国はAPEC参加国として、また今年のAPEC会議の議長国として、地域の経済統合の強化、環境保護と経済成長を両立させる「グリーン成長」の促進、規制面での協力と集約の前進に重点を置く政策課題を推進します。またAPECを通じ、才能と貢献が今も生かされていないことが多い女性の経済的可能性に投資する努力を続けます。この政策課題は私たち皆に雇用創出と成長をもたらしますが、そのためには皆がルールに従がう必要があります。国境においても国内においても、汚職、知的財産権の盗用、公正な競争を歪める政府の慣習といった障壁を取り除かなければなりません。経済統合は相互的なものでなければなりません。

 先ごろの米韓自由貿易協定に関する米国内手続きの完了や、拘束力のある質の高い環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に関する継続的協議など、米国の貿易面での政策課題の進展には新しい勢いが見られます。TPPは太平洋地域の国・地域を先進国、開発途上国を問わず統合し、21世紀の貿易圏をつくり上げます。最終的にアジア太平洋に自由貿易圏を構築するというAPECの目標を達成するには、ルールに基づく秩序も不可欠です。

 私たちが地域として、より大きな成長だけでなく、より良い成長を追求しなければならないと米国は今後も主張していきます。これは単に経済だけの問題ではありません。私たちがどの価値観を受け入れ、守っていくかという最も重要な問題に関係します。開放性、自由、透明性、公正さという価値観は、ビジネスの世界をはるかに超えた意味を持ちます。米国はこれらの価値観を経済面だけでなく、政治・社会面でも推進します。

 私たちは開かれた経済だけでなく開かれた社会も支援します。民主主義や人権などの問題で意見の異なる国々との関与を深めていく中、そうした国々に粘り強く改革を求め続けます。例えばベトナムに対しては、米国とベトナムが双方の望む戦略的パートナーシップを築こうとするならば、ベトナムが自国民の権利の尊重と保護にさらに努力しなければならないと明確に伝えています。

 米国が一貫して民主主義改革と人権を推進してきたビルマでは、ここ何十年も見られなかった変化の兆しが見えてきています。しかし政府が政治犯の拘留を続けていることや、改革が持続し、少数民族地域の平和と和解にまでつながるかどうかなど、まだ多くの問題が残っています。ビルマ政府が自国民のために永続的な真の改革を追求すれば、米国はビルマのパートナーになるでしょう。

 北朝鮮は自国民の権利を無視し続けており、近隣諸国にとっては重大な安全保障上の課題となっています。私たちは北朝鮮政権が自国民と外国に及ぼしている脅威を引き続き強く非難していきます。

 民主主義と人権を守る米国の決意は、この地域の多くの国々、特に米国の同盟国である日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイも共有しています。この5つの同盟は、米国のアジア太平洋地域における活動の支点であり、半世紀以上にもわたり地域の平和と安全保障を支えてきました。安全保障上の課題が変化する時代に、5つの同盟は地域における米国の影響力を利用する一方で、米国の指導力を強化します。
 
 米国は現在、次の3つの指針に沿い、変化する世界に合わせてこれらの同盟関係を修正しています。第1に、各同盟の中核的な目標が米国民の政治的支持を得られるよう努力しています。第2に、各同盟が機敏に状況に順応できるようにして、引き続き成果を挙げられるようにしたいと考えます。第3に、同盟の集団防衛能力と通信インフラが運用面でも物資の面でも、あらゆる国家および非国家主体の挑発を抑止する能力を備えていることを保証します。

 私たちはこれからの各国訪問と会議で、こうした問題を全て取り上げます。オバマ大統領は野田首相との会談で、日米同盟をこの地域の平和と安全保障の礎とする私たちの関与のあらゆる要素について話し合います。オーストラリアでは、大統領は米豪同盟60周年を祝い、このパートナーシップの今後の針路を決めます。同じことを私はフィリピンでする予定です。そして米国とフィリピンは、両国の継続的協力に関する共同構想を明記したマニラ宣言に署名します。またタイでは、同国史上最悪の洪水に直面する政府と国民に、米国が変わらず支援すると伝えます。韓国ではG20と核安全保障サミットを通じて、そして今また韓国が主催する開発援助のための主要フォーラムでの協力を通じ、米韓同盟が地球規模になっていることを再度示します。

 米国は日本と韓国に駐留する5万人以上の米軍兵士をはじめとする米軍がこの地域の防衛に果たす役割を非常に重く受け止めています。地域の変化に伴い、米国は軍が地理的に分散し、作戦面で弾力性があり、政治的に持続可能であるようにするために、米軍の態勢を変える必要があります。より広範囲に分散した米軍の駐留には、脅威に対する抑止と対応という意味でも、人道的任務への支援の提供という意味でも、極めて大きな利点があります。

 米国は太平洋における同盟関係を再確認し強化する中、大西洋における同盟関係も強化しています。ヨーロッパはアジアへの関与を深めており、私たちはこれを歓迎します。米国とヨーロッパの外交官は、それぞれの評価や取り組みを調整するために定期的な協議を始めました。アジアが直面する課題の多くを解決するには、ヨーロッパとの効果的なパートナーシップが不可欠となります。また太平洋地域と大西洋地域の協力が増せば、地球規模の問題の解決に役立ちます。

 オバマ大統領と私の主要同盟国歴訪の締めくくりとして、私は来週、大統領と共にインドネシアの東アジア首脳会議に出席します。私たちは東アジア首脳会議の一員であることを誇りとしており、この首脳会議が海上安全保障から核拡散防止、災害への対応に至るまで、地域の政治・安全保障問題に対処するための最も重要なフォーラムとなるべきだと考えています。

 特にこの最後の問題について、自然災害の発生時に東アジア首脳会議などの機関が迅速かつ効果的に対応する能力を構築できるよう、米国は専門知識を提供する用意があります。2004年のインド洋大津波から、今年のニュージーランド・クライストチャーチの地震、日本で発生した地震、津波、原子力発電所の事故、そして現在のタイの洪水まで、米国は貢献し、援助し、専門知識、能力、資金を提供してきましたし、いつでもこうした支援をする用意があります。他の国々も今、災害から立ち上がる力をつけることを優先事項としています。災害が発生するのは1カ国だけでも、その影響は広範囲に及ぶため、緊密に連携した地域的な対応が必要だからです。

 これこそ東アジア首脳会議、APEC、東南アジア諸国連合(ASEAN)、ASEAN地域フォーラムなどの強力な地域機関が貢献できる点です。私たちは必要ならば集団で行動を起こし、ルールと責任に基づく制度を強化し、建設的な行動は正当性を認め尊重し、平和と安定と繁栄を損なう者の責任を問う能力を持つ必要があります。アジア太平洋地域の各機関は近年このような能力を高めており、米国はそうした機関の効果と力の及ぶ範囲の拡大を支援する決意です。私たちは、米国が行動計画の策定で積極的な役割を果たすことを求める地域の要請に応えています。

 地域的枠組みの構築の成否は、米国がインドネシア、インド、シンガポール、ニュージーランド、マレーシア、モンゴル、ベトナム、ブルネイ、太平洋諸島諸国などの新興国と効果的に協力できるかにかかっています。従って私たちは、これら全ての諸国とより緊密で広範囲に及ぶパートナーシップを築くため連携して取り組んでいます。中でもインドとインドネシアは世界有数の活力ある重要な民主主義国であり、米国はそれぞれとより広く、深く、意味のある関係の構築に取り組んでいます。また私たちは、インドの「ルック・イースト」政策が「アクト・イースト」政策へと発展していくのを積極的に支援したいと考えています。

 米国の新興国との関係の中で最も複雑であり影響力が大きいのは、言うまでもなく中国との関係です。米国には中国の進歩を米国への脅威と見る人がいる一方、中国には米国が中国を抑制しようとしていると懸念する人がいます。実際には、繁栄する中国は、中国のためにも米国のためにもなると私たちは考えます。オバマ大統領も私も、米国が基本的には、中国との前向きで協力的な関係を構築する決意であることをはっきり示してきました。

 利害の共通する分野の拡大が不可欠です。ガイトナー財務長官と私は、中国側と共に2009年に戦略経済対話を開始しました。これは米中の政府間協議の中でも最も集中的かつ包括的であり、私たちは来春の第4回協議のための北京訪問に楽しみにしています。さらに海上安全保障やサイバーセキュリティーなど、米中関係の中で最も慎重を要する問題について開かれた率直な話し合いができるよう、中国が戦略安全保障対話を通じて軍民の担当官の間の対話を強化していくことを期待しています。

 経済面では米国と中国は、将来的に強固で持続的、かつ均衡の取れた世界的成長の確保に向け協力する必要があります。他に選択肢はありません。米国企業は対中輸出の公正な機会と公平な競争の場を求めています。中国の企業は米国からのハイテク製品の輸入や対米投資を増やし、市場経済が享受するのと同じアクセス条件の付与を望んでいます。米中両国はこうした目標に向かって協力できますが、中国は改革への措置を取る必要があります。特に私たちは、米国をはじめとする外国企業に対する不公正な差別の撤廃を中国に働きかけているほか、革新的技術の保護や競争をゆがめる優遇策の廃止にも努めています。中国は自国通貨の切り上げを加速させるとともに、外国の知的財産権への損害や盗用につながる措置をやめなければなりません。

 このような変化の導入が、中国にとっても他の諸国にとっても、安定と成長に向けたより強固な基盤になると私たちは考えます。政治改革についても私たちは同様の主張をしています。国際法の尊重と、より開かれた政治制度の導入は、中国の基盤を強化すると同時に、パートナー諸国の中国に対する信頼感を高めます。

 米国は人権に関する中国の実績について深刻な懸念があることを、極めて明確に表明してきました。弁護士、芸術家といった人たちが拘留されたり行方不明になったという報告があれば、米国は公式にも非公式にもはっきりと意見を述べます。私たちは最近チベットで若者たちが決死の抗議行動として焼身自殺した事件や、今も続く中国人弁護士、陳光誠氏の軟禁に危惧(きぐ)を抱いています。米国は今後も、中国が現在とは別の道を受け入れるよう求めていきます。

 「ひとつの中国」政策と台湾海峡を挟んだ平和と安定の維持を強く支持する米国の方針に変わりはありません。安全保障および経済上の重要なパートナーである台湾と米国の間には強固な関係があり、私たちは過去3年間に台湾海峡を挟んだ中国と台湾の関係が前進したことを称賛するとともに、両者の間の相違が平和的に解決できるよう状況の改善が続くことを期待しています。

 米国が本当にアジアにとどまるのか、戦略面と経済面での関与を信頼できる形で約束し、その約束を守り、それを裏付ける行動を取れるのか、という疑問を抱いているアジアの人々にはこう答えましょう。「米国にはそれができます。そしてそうする意志があります」。第1に、米国はそうしなければならないからです。私たち自身の長期的な安全保障と繁栄がかかっています。第2に、パートナーシップと各機関の強化に多大な投資をすれば、長期的には維持がより容易になる協力体制と慣習を確立できるからです。

 これこそ、私たちが環大西洋地域での経験から学んだことです。大西洋を越えた効果的な地域の枠組みを構築するには、長年にわたる根気よく粘り強い努力が必要でした。しかしあらゆる政治的対話、経済サミット、合同軍事演習を行うだけの価値があったことは確かです。ヨーロッパの何億もの人々にとって米国と環大西洋圏が意味するものは、より安全で繁栄する生活でした。私たちがすでに共に成し遂げてきたことを基盤にアジアでも同じ道を進むならば、さらに多くの人々の生活を向上させることができます。そしてこの地域は、世界を前進させる、さらに強い力となれます。

 1963年にケネディ大統領はドイツのフランクフルトで、大西洋圏について演説しました。当時、多くの人たちは大西洋圏が長続きしないと確信していました。ケネディ大統領は「大西洋パートナーシップ――人々が共同で世界各地の負担を担い、可能性を享受できる協力と相互依存と調和のシステム」について語りました。その実現には困難、遅延、疑念、支障が伴うことをケネディ大統領は認めていましたが、それぞれの国家と国民が共通の責務に力を合わせて取り組む中でパートナーシップのプロセスがさらに強固になると考えました。そして「この大西洋の世代が理想と展望を過去に置いてきてしまったと言われるようになってはならない。ここで未来を捨て去るには、私たちはあまりにも遠くまで来てしまったし、あまりにも多くの犠牲を払ってきた」と語りました。

 そして今日、世界の反対側で私たちは同様の岐路に差し掛かっています。この太平洋の世代は困難に直面しており、今後も直面するでしょう。しかしこの地域はこれまでにないほど安全で繁栄しています。それは私たちの間で進展してきた協力が直接もたらした成果です。お互いに相手の幸福が自分のためにもなることがますます明らかになるにつれ、私たち全てにとって状況が好転してきました。

 私たちの任務ははるか以前に始まったものかもしれませんが、私たちは今また緊急に、仕事を前進させるよう求められています。米国はその任務に全力を尽くしています。私たちは、米国民のために、近隣諸国やパートナー諸国のために、そして私たちが今日協力して行う仕事がその人生を左右することになる未来の世代のために、(この地域に)関与し主導する用意があります。

 皆さん、どうもありがとうございました。