キャンベル国務次官補の「日経・CSISシンポジウム」での基調講演

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

2012年10月26日、東京

 まずは皆さん、おはようございます。今朝はご参加いただきありがとうございます。日本に戻ってきて友人たちに再会し、アジアと世界における日米関係について議論する、この大変重要なフォーラム「日経・CSIS(戦略国際問題研究所)シンポジウム」で講演できることを光栄に思います。本日の出席者の数とこれまでの実績からわかるように、このシンポジウムはこれからのアジア太平洋の重要な問題についての対話という点で欠かせない、恒例のイベントになりました。日経関係者の支援とCSISの尽力に心より感謝します。皆さんもご承知と思いますが、多くの関心が国内問題に向けられている時に、日経は日本と世界の人々の相互理解の深化に力を入れています。これは素晴らしいことです。そこで簡単ではありますが、このシンポジウムの開催に向けたCSISと日経の支援に対し、会場の皆さんとともに感謝の意を表したいと思います。

 本日ここには、米国のアジア太平洋地域への関与について大きな影響力を持つ顔ぶれがそろっています。各々大きな役割を担っているので、彼ら一人一人について少しお話ししたいと思います。もうすでに紹介されたように、このグループが重要な意味を持っているのは、彼らが米国の政策決定のトップ集団であるだけでなく、その構成が実に超党派だからです。つまり、米国はアジアへの関与にまさに超党派で取り組んでいることの表れであり、目前に迫っている大統領選挙の結果がどうであれ、米国の関与の全体的な傾向、すなわち米国の同盟国に対する強固なコミットメント、地域への深い関与、貿易分野での非常に前向きな関与は、防衛分野での深い関与とともに、これからも継続するという点で、日本やアジアの友人たちは安心していられるということになります。

 すでにジョン・ハムレ氏のことはご存じだと思います。ハムレ氏はワシントンで、CSISを安全保障とアジアに関する問題を研究する権威ある組織に育てました。CSISは飛び抜けて大きな影響力を持ち、アジア太平洋地域で米国が自らの役割を果たすために尽力しています。ハムレ博士はまた、ワシントンの重要人物たちの相談相手であり、国防政策委員長でもあります。

 ジョセフ・ナイ氏は、日米同盟の将来の持続性について多くの疑問が持たれた1990年代に、米国防次官補として日米関係を担当し、両国の関係を推進する原動力となりました。また最近も非常に意義のある取り組みと支援をしています。

 リチャード・アーミテージ氏は、ご存知のとおり日米関係のゴッドファーザーです。アジア関連の問題に取り組みたいと思ったら、必ずワシントン郊外のアーミテージ氏のオフィスに出かけて行かなくてはなりません。するとアーミテージ氏がおもむろに手を差し出すので、その指輪にキスをします。そうするとうまく行けばアーミテージ氏やそのチームと共に、アジア太平洋地域の平和と安定の推進のために働く機会を得られます。

 次は私の良き友であり、私の結婚式ではバグパイプを演奏してくれたマイケル・グリーン氏です。彼は日本だけでなくアジア全般に対する戦略的見識と均衡のとれた手法を示唆して、今後アジアの問題に取り組む次世代の人々を支援してきました。現在は、過去100年にわたり米国がアジアをどう考え、今後のアジアをどう考えるべきかについての本を執筆中です。

 米国代表もしくは日米関係の支援者として、この4人の紳士を上回る人材は望むべくもありませんが、特にアーミテージ元国務副長官とナイ元国防次官補には、先ごろ日中両国を非公式に訪問し、現在アジア太平洋地域において非常に重要になっている難しい領土紛争に関連する重大な問題について、主な利害関係者の意見を聞き、意見交換をしていただいたことに大変感謝しています。この4人と同席できて大変うれしく、この後の彼らの話を大いに楽しみにしています。

 本日の討議を始めるにあたり、まず日本の友人の皆さんに心から謝罪し、皆さんに対する重い責任についてお話ししなければなりません。皆さんもご存知のように、先週沖縄で悲劇的な事件がありました。こうした事件は極めて遺憾であり、米国は大変深刻に受け止めます。この大変不幸な暴行事件が発生した後、米国は日本の関係当局と緊密に協力してきました。また日本に滞在する全ての米軍人を対象とする夜間外出禁止令を発令し、研修の実施を表明して、同様の事件の再発防止に向けた決意を明確に示しました。ルース大使ならびに日本とハワイに駐在する国防総省高官は、前例のない措置を取りました。米国は日本の関係当局との緊密な協力を続け、日本とアジア太平洋地域に対する米国の軍事的関与を支える沖縄の人々と緊密かつ友好的に協力するという米国の決意をはっきりと示すために、あらゆる努力をしています。この沖縄の役割は大変重要です。米国は日本との強固な軍事同盟が必要であり、沖縄が果たす役割を大いに評価しています。一方で沖縄での米国の関与により生じるわれわれの責任も認識しており、この責任を重く受け止めていく所存です。

 皆さんご存知と思いますが、すでに日本やアジアでは広く認識されているけれども、今ようやく米国や欧州でも認識されるようになってきていることがあります。それは、21世紀の歴史の大部分が、アジア太平洋地域を舞台に起きるであろうということ、そしてこの地域が国際政治を左右する「てこの支点」であるということです。これは21世紀の国際政治の方向性を決める重要なポイントです。米国はブッシュ政権時代に、同盟国だけでなく特にインドに対しても非常に深く、真剣な関与を始めました。これは近年最も重要な戦略的イニシアチブのひとつであり、オバマ政権でも継承され、米国は他の多くの関係国や組織にも深く関与しています。こうした過去数年間の米国の動きから、活動の中心がこの地域であると米国が認識していることがわかります。今後も米国による、アジア太平洋地域への継続的な関与を強調する取り組みが続くでしょう。

 実際にはこの点で何も新しいことはありません。米国は何十年もの間、アジア太平洋地域と強固なパートナーシップへの関与を続けてきましたが、だからといって、こうした関与にこれ以上力を入れることができないわけではなく、そうするつもりです。こうした取り組みに対し、今後も超党派で全力を尽くすことになると思います。アジア太平洋地域を見渡すと、各国が直面している多くの課題と、拡大した日米関係が享受する機会を誰もが過小評価してしうと思うので、21世紀のアジアと向き合う私たちが直面する課題と機会について少し説明させてください。

 最初に、アジアでは近いうちに各国の指導者が何人も交代する可能性があります。はっきりしているのは、中国共産党大会で指導者の大幅な交代があり、党の最高幹部だけでなく党と軍部の上層部全てが変わります。これは中国だけでなくアジア太平洋地域全体に連鎖的影響が及ぶ可能性があるため、非常に重要です。また米韓がこれまでになく協力的な関係にあった後の韓国大統領選挙、また1週間半後に控えた米国大統領選挙のほか、ここ日本でも何が起きるかわかりません。このようなあらゆる変化を考えると、こうした国内政治の大きな動きの中で、各国が高官クラスの対話と議論を持続させることが非常に重要です。

 第二に、米国がこれまでよりもアジア太平洋地域を重視していることは今やよく理解されていると思いますが、肝心なのは「それは持続可能か。資金や要員を充てることは可能か。米国の取り組みが、単なる政策だけでなく、プログラムなどのより深い関与の側面にまで向けられることを明示できるのか」にあります。私自身はそうなることを確信していますが、その実現には単に外交官や政治家が宣言する以上のことが求められます。1期や2期ではなく数期にわたり、米国の政権が一定の水準の関与を長期的に維持する必要があります。

 米国は、中東と南アジアにおいて非常に重要な取り組みを永続的に行っています。こうした取り組みは重要であり、今後もこれらを重視して継続していきますが、私はアジア太平洋地域への米国の関与が、国内および国際政治を方向付ける主な要因となることをますます望むようになっています。

 この方針転換の取り組みの思いがけない結果のひとつとして、米国は欧州から離れていくのかという疑問が当初提起されました。ここ1年ほど米国は、アジアとの関係において欧州とのパートナーシップをより緊密にすることを明確しようと努めてきました。世界における米国の目標を考えると、米国がこれまで取り組んできた重要な問題は、それがアフガニスタンの問題であれ、パキスタンまたはバルカン半島の問題であれ、気候変動のように多国間で対処する課題であれ、米国は全て欧州と共に取り組んできました。欧州とのパートナーシップは欠かすことのできないものです。ですから米国は今、対アジアで米欧間の関与を深めようとしており、日本にもその取り組みに参加してもらいたいと思っています。事実、おそらく他のどのアジアの国よりも、過去20年間、アジア問題で欧州が一定の役割を果たすことが、商業的にも、人権に関しても、民主主義の普及においても、戦略上も、関係諸国全ての利益にかなうと最も強く提言してきたのは日本でした。ですから不均衡を是正し、米国をアジアに再び関与させることを考えると、今後アジア太平洋地域諸国からだけでなく、他の地域の国々からも支援を受けることが重要になります。

 もう一度申し上げますが、この取り組みは広く支持され、資金や要員も確保でき、米国の今後の外交政策を方向付ける特徴となると、私は確信しています。

 第三に、アジアが今、非常に多くの経済的な課題と機会に直面していることは明らかです。米国にとっては、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期締結を目指すことです。TPPは貿易のルールを一変させる協定であり、21世紀の貿易の可能性をはっきりと示し、地域全体の経済的関与の範囲を再定義しうるものです。さらに、米国はこの地域での経済的関与の不均衡を是正しようとしています。米国がアジアからの輸出の大部分を輸入するような経済関係を持続させることは、もはや不可能です。米国の関与で相互依存度を高める必要があります。将来に向け、米国企業のアジア向けの輸出は増加しており、ここ数年間で米国のアジアへの経済的、商業的関与が急激に増加しています。こうした増加は今後も続き、そのようなレベルの経済的関与、すなわち米国からアジアへの輸出があれば、米国へのアジアのより幅広く深い関与も持続するでしょう。

 しかし同時に、欧州で景気の減速が起きている中で、米国はまだ高水準の持続的成長に向かっており、アジア太平洋地域に負担がかかっているのは明らかです。実際、北東アジアは世界経済のかじ取りの役目を果たしています。米国は北東アジアが世界の経済成長を引き続きけん引することを期待しており、これは大変重要です。

 ここで皆さんもよく理解していらっしゃることをお話しします。それは、日米、日韓、日中の相互関係が複雑に絡み合って、政治面、戦略面のみならず、経済面や通商面でも現代世界の発展を推進しているということです。そのためさまざまな分野で緊張が生じることがあっても、北東アジアにおける今後の経済発展と協力は、関係諸国にとって、可能な中で最も大きな戦略的利益となります。われわれはこれを支援しなければなりません。そして将来にわたって何ものもこの分野での発展を妨げることがないように努力しなければなりません。

 アジア太平洋地域の経済・貿易分野でこのような素晴らしい機会がある一方で、いくつかの課題に今も直面していることを常に忘れてはいけません。そして、そうした課題がどこよりも明白なのが朝鮮半島です。北朝鮮の新たな指導部は、その真価がまだ未知数です。その統治体制がどのような性格なのかもわかっていません。米国、日本、韓国は、北朝鮮が核保有の野心を捨てて、国際社会に参加する準備ができており、朝鮮半島の平和と安定の維持に資する形で協力するというのであれば、北朝鮮と協力し、関与する用意があることを明らかにしています。

 つまるところ、現在の状況で必要なのは、日本、米国、韓国が可能な限り緊密に協調し、中国とも緊密に対話して、北朝鮮国内で何が起きているかを知ることです。もちろん問題は北朝鮮だけではありません。今、台湾海峡周辺は落ち着いていますが、常に警戒を怠ることはできませんし、他にも海賊や感染症など、アジア太平洋各国の防衛その他の担当官同士の協力をかつてないほど必要とする課題が多数あり、米国もこれを支援しています。

 現在アジアで起きている最も刺激的なことのひとつは、地域機関の発展です。各機関の改革や変化は、今後20年にわたりアジアの特徴となるでしょう。これは多くの点で、1950年代から60年代の欧州の地域機関の創設と似ています。アジアの全主要国が初めて、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム、東アジア首脳会議、そして各国の防衛大臣の会合などの定期的に開催される会合で掘り下げた議論が行われることを期待して、これに向け準備し、さまざまな形で関与しています。これらの機関がアジア太平洋地域における対話の構造を決定することになるでしょう。そして地域の各国はこうした議論を以前よりもはるかに真剣に考えています。

 実際には、アジアの多国間機関は、相対的に見てまだ深く根付いているとは言えませんが、最終的には深く根付くことを私たちは望んでいます。アジアの主要国間での対話と協力が深化し、領土問題、軍備増強に関連する問題、国境をめぐる難しい問題について実のある議論ができるような対話が実現することを望んでいます。このような機関は、21世紀のアジアを表す特徴となり、米国はいつでもそれに参加する用意があります。一般的には、アジア太平洋地域で、安全保障、政治、貿易といった関心事項が議論されている場合には、米国はそのような議論の場に参加したいと思います。米国が地理的にその一部であるように、われわれは本来、こうした対話の一部であると考えるからです。

 このような機関は、今私が述べた問題以外のさまざまな課題に対処する上で非常に重要です。中国だけでなく、アジア太平洋地域で台頭する他の国々についても、最も効果的に関与するにはいかにすべきかという問題があります。インドネシアが東南アジアの政治で果たす役割は増大しており、G20にとどまらず、その他の重要な議論の場においても指導的立場に立っています。先ほども申し上げましたが、インドは南アジアだけではなくアジア太平洋全域でますます重要な役割を果たすようになっており、インド洋と太平洋を相乗的な形で結びつける新しい戦略的概念が、21世紀の特徴になると確信しています。われわれは今後のインドの台頭を、1980年代から90年代の中国の台頭と同じように重視するようになると思います。例えば、米国、日本、インドの間で重要な問題に関する対話が大幅に増えてきました。これは注目に値することです。米国は今後も、インドがアジアのさまざまな機関でさまざまな問題に関与することを支援していきます。

 さらにもうひとつ、最近はビルマについて素晴らしい機会がみられます。米国はビルマと呼んでいますが、多くの国は今もミャンマーと呼んでいます。この問題では日本は多くの点でけん引役を果たしてきました。2週間前には国際的な投資機関や世界銀行など、国際金融機関や多国間の開発銀行が招かれ、ビルマの債務処理、今後の再建、改革や開発について議論しました。今はまたとない機会です。ビルマ国内にはまだ多くの課題が残されていますが、機会もまた確かに存在します。アウン・サン・スー・チー氏に議会名誉黄金勲章が授与されたとき、米国連邦議会の議事堂に集まっていた聴衆の中で最初に立ち上がって祝福し、その立派な業績をたたえたのはミャンマー政府の公式代表団であったことを、私はこの目で見ました。アウン・サン・スー・チー氏と、彼女が率いる国民民主連盟、そしてミャンマー政府が関与しあっていること、また政府内で議会が果たす役割の重要性が増していることを見てきましたから、今後も継続して事態が進展し、相互の関与が進む可能性があると思います。日本と米国は、この開放を維持し、今後もビルマの発展を継続する上で特別な役割を担っています。

 最後に、現在私たち皆が対処している、細心の注意を必要とする、非常に困難な問題のひとつである領土問題についてお話しします。この問題は日中、日韓だけに関わるものではなく、皆さんもご存知のように、南シナ海にも領土問題があります。私は本日この場で、複雑な米国の役割とこの問題に対する姿勢についてお話しするつもりはありません。私に言えるのは、米国は非常に慎重に、航行の自由、紛争の平和的解決、問題の解決にあたっての適切な国際的な司法メカニズムの利用という原則を示そうとしているということです。しかし結局のところ、米国が主張しているのは、このような問題に対処するにあたっては、より重要な問題があることを認識し、慎重に行うべきであるということです。世界規模での発展を維持し、過去数十年間にアジアでみられた対話と発展を維持することは、米国だけでなく、関係各国の最大の利益になります。そしてこれらは多くの点で新たな問題ではなく、すでに数十年にもわたりわれわれが直面してきた問題であり、多くの点で機転や知恵を生かしてこれらの問題に対処し、正しい文脈でとらえ、将来へ向けて協力する方策を見出してきたことを認識する必要があると思います。私たちの目標と希望は、将来的にその枠組みを活用することであり、これこそ、非公式に日中を訪問し、平和と安定を維持に対する米国の決意を強く打ち出し、このように困難な問題がある時に対話と意思疎通のための信頼できるパイプの確保に努めてきてくれたアーミテージ元副長官、ナイ教授、スタインバーグ元副長官、スティーブ・ハドレー氏の役割と取り組みに大いに感謝する理由のひとつです。

 現在対処しているのはこのような問題です。一連の課題と機会の主なものです。過去数年の間に米国が他の何よりも実感したことは、強固で活力のある日本とのパートナーシップがなければ、米国はアジア太平洋地域で実効性のある行動をとることができないということです。日本は必要不可欠なのです。皆さんの前にいる超党派のグループを見て皆さんにわかっていただきたいのは、米国が決意を持って取り組んでいること、数十年間享受してきた日本との強固で特別な関係が米国の支援の基盤になっていること、そして今後も米国はその関係の維持に努めていくことです。しかし私が同様に重要と考えるのは、昨夜日経が私たちのために主催してくれた素晴らしい夕食会の席で、おそらくここ数十年で初めて、政治的立場の違いを超え、日本のあらゆる政党の意見が、良好な日米関係が重要であるという点で一致していることを、はっきりと目にしたことです。政治情勢を考えると、日米同盟を維持するという強い意思が今後も続くでしょう。われわれはこれを大いに利用したいと思います。国民の支持を得なければならなかった過去の一時期と異なり、支持を集めることから、その支持をどう活用するかに主な課題が移っています。太平洋の両側で、政治的支持と国民からの支持を両方得ているというこの素晴らしい状況を、どう活用していけばいいでしょうか。

 締めくくりとして、将来に向けて考えるべきいくつかのアイデアを述べたいと思います。まず、日米関係の中心は、人と人との交流であるべきです。外交官の交流は重要ですし、軍同士の関係も不可欠ですが、両国の若者同士の交流がもっと必要ですし、互いの社会をさらに密接に結び付ける商業的、経済的関与ももっと必要です。

 将来に向け大変重要と私が考える2~3の例を挙げたいと思います。100年前に、日本から米国に3000本の美しい桜の木が贈られ、皆さんもご存じのように、その多くはワシントンのポトマック河畔に植えられています。この桜の木は、自由の女神とならんで、米国に贈られた中でも最も素晴らしい贈り物のひとつです。今年、その桜の木の寄贈から100周年を記念し、米国政府は日本へお返しの贈り物をしました。特別に栽培した3000本のハナミズキの苗木で、今後1年間で東京の代々木公園と、地震と原発事故の被害を受けた地域からあまり遠くない場所に造られる新しい公園に植樹される予定です。このプログラムは「友好の木」と呼ばれ、官民パートナーシップが熱心に支援しています。これからの長い年月、何世代もの日本人や日本を訪問する人々が記憶に刻み、訪れるような恒久的な記念の場所を造るため、学校、市民、植物研究者などが力を合わせてこのプログラムに協力しています。

 このようなプログラムがさらに増えることが望まれます。ジョン・ルース駐日米国大使は、東日本大震災の被災地の再建と、日米の協力と友好の深化の支援を目的とするTOMODACHIイニシアチブを支持してきました。今後の日米関係を支える基盤を強化するには、このような分野をもっと見出していかなければなりません。

 しかしそれだけではありません。他にも日米の協力を必要とする多くの問題があると認識しなければなりません。日米共通の関心は民主主義と人権の推進で、そのための対話と関与の重要性がますます高まっています。日米同盟はもはや地域同盟にとどまらず、グローバルな同盟です。世界規模の課題に向き合うとき、それがアフガニスタンやパキスタンの問題であれ、太平洋地域における保健と繁栄の推進であれ、米国が最初に頼りにするパートナーの中には必ず日本が含まれており、最初に米国に賛同し、進んで協力しようとするパートナーが日本なのです。

 日米は日々検討しているような従来の安全保障の課題に直面していますが、一方でサイバー空間においても新たな非常に難しい脅威に直面しており、サイバー問題で日米のより緊密な協力が非常に重要になっています。エネルギー安全保障やエネルギーの不確実性に対しては、日米だけでなく、また両国の政府だけでなく、他の重要な関係国や関係者の関与が必要であり、その議論には中国や韓国なども含めたアジアのその他の関係国も含める必要があります。

 気候変動などを含む21世紀の課題を見極めようとする中、国境を越えた課題に対処するには、やはり日米の持続的関与が必要です。

 最後に、日本抜きで米国がアジアで効果的な働きをすることは考えられないと申し上げます。米国が日本以外の国により多くの関心を持つのではないかという疑念がしばしば浮上します。私がこの場ではっきりと言えるのは、米国の関与の基盤である永続的パートナーシップが絶対に不可欠だということです。それがなければわれわれは立ち行かなくなります。米国は日本の米国に対するコミットメントに感謝しており、それに十分応えるべく、アジア太平洋地域に成長と繁栄を築く基盤を築いてきたと思っています。米国が多国間の場で取るいかなる行動も、日米2国間の関係と矛盾することはないと確信しています。私たちは革新を続け、創造力を発揮し続け、脅威には引き続き勇敢に立ち向かわなければなりません。そして問題への取り組みを重視し、力を注いでいることを互いに明確にしなければなりません。最後にもう一度、日経の素晴らしいおもてなしに感謝します。このような議論がこれからも末永く継続し、そして今後このような素晴らしい議論の場が増えることを願ってやみません。皆さんと議論できることを楽しみにし、日経とCSISにはこの素晴らしい機会を与えてくださったことにお礼申し上げます。ありがとうございました。

掲載 2012年11月13日