国際女性の日 女性生かす世界目指そう

米国務長官ジョン・ケリー

*以下は、2013年3月7日付朝日新聞朝刊19面オピニオンのページ 「私の視点」に掲載されたケリー国務長官の寄稿を、同新聞社の許可を得て転載したものです。

 国務長官就任直後、ビルマ(ミャンマー)から来た勇気ある女性たちと会う機会があった。うち2人はかつて政治囚として拘束されていた。いずれもこれまでの人生で信じられないほどの困難に耐えてきたが、今や前に進もうと決意し、少女に教育と訓練の機会を与え、失業者に職を見つけ、市民社会への参加を促す活動に取り組んでいた。彼女たちは今後も地域や国の発展に貢献するに違いない。

 米国が世界中の政府、組織、個人と協力し、女性や少女の権利を保護し向上させ続けることが重要だとあらためて思う。米国でそうであるように、経済や社会、政治の差し迫った課題は、女性の完全な社会参加なしに解決できない。

 ダボス会議で知られる「世界経済フォーラム」によると、医療や教育、公職への選出、起業などで男女格差があり、女性と少女の進出の機会が限られたり、まったくなかったりする国と比べ、男女がほぼ平等な権利を享受している国は、経済競争力が大幅に高い。

 とは言っても、女性や少女が過小評価され、就学の機会を奪われ、幼くして結婚を強要される社会や家庭は数多く存在する。例えば23歳の医学部の女子学生ニルバヤーさん(仮名)は女性という理由だけでニューデリーのバスの中で殺された。パキスタンの少女マララさんは学校に通いたいと望んだだけで、バスに乗っていたところを過激派に銃で撃たれた。

 2人の娘の父親である私は、ニルバヤーさんとマララさんの両親の苦悩を想像するのさえ難しい。しかし、自分の信念を守ろうとするマララさんの不屈の精神。死のふちにありながら襲撃者に法の裁きを受けさせようとしたニルバヤーさんの決意。娘とあらゆる女性のために声をあげた彼女たちの父親の勇気に、心を動かされた。

 米国は日本をはじめ世界各国と緊密に連携し、母子保健の向上、女性農業従事者への支援、ジェンダーによる暴力の予防と対処に取り組む。女性が健康で安全に、その労働力、指導力、創造力で世界経済に貢献できれば、あらゆる社会の利益となる。

 また、米国の外交官は和平や安全保障の交渉に女性を参画させるべく努める。女性の経験や懸念、見識をこうした分野でいかせれば、将来の紛争の防止と、より持続的な平和の構築の一助となるからだ。

 3月8日は「国際女性の日」である。世界中でこの日を祝うとともに、地球のいたる所で発展を阻害してきた男女の不平等を終わらせるという決意を、われわれ一人ひとりが新たにする機会となることを念じている。