信仰の自由に関する国際報告書(2012年版)―日本に関する部分
*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
国務省民主主義・人権・労働局
2013年5月20日発表
エグゼクティブ・サマリー
日本国憲法、その他の法律および政策は信仰(信教)の自由を保護しており、政府は実際に、信仰の自由をおおむね尊重した。2012年に、政府による信仰の自由の尊重の傾向が著しく変化することはなかった。
宗教的な帰属、信条、または実践に基づく、社会的な侵害または差別に関する報告がわずかながらあった。
米国政府は、信仰の自由の状況を注意深く観察し、少数派宗教団体および非政府組織(NGO)に接触し、信仰の自由に関して日本政府と話し合った。
第1節 宗教統計
統計局は、10月現在の日本の総人口を1億2750万人と推計している。政府は宗教団体に対し信者数の報告を義務付けていないため、各宗教の信者数を把握することは困難である。文化庁の2009年の報告によると、各宗教団体の報告による信者数は、合計2億700万人であった。この数字は日本の総人口よりも大幅に多く、日本国民の多くが複数の宗教を信仰していることを表している。例えば、多くの日本人は仏教と神道の両方の儀式を実践している。
文化庁の2009年の統計によると、信者数は、神道が1億600万人、仏教が9000万人、キリスト教が210万人、「その他」の宗教が900万人いる。「その他」の宗教には、イスラム教、バハーイー教、ヒンズー教、ユダヤ教、または無宗教が含まれる。政府は、とりわけ国内のイスラム教徒の数について統計をまとめてはいないが、学術関係者による2005年の報告ではイスラム教徒の数は6万3000人と推計されている。
宗教的な帰属と民族性、政治的立場、または社会経済的地位との間に、有意な相関関係はない。社会は民族的にも宗教的にも、比較的同質である。精霊信仰を実践している先住民のアイヌは、主に日本北部の島である北海道に集中している。移住者や外国人労働者の中には、神道、先住民の宗教、仏教以外の宗教を実践する者もいる。
第2節 政府による信仰の自由の尊重の現状
法的・政策的枠組み
日本国憲法、その他の法律および政策は信仰の自由を保護している。
文化庁によると、約18万3000団体が、国および都道府県により、宗教法人として認証されている。政府は、宗教団体の登録または認証申請を義務付けてはいないが、認証された宗教法人には税制面の利点がある。
1995年に東京で発生した、オウム真理教による地下鉄サリン事件を受けて改正された宗教法人法は、認証を受けた宗教団体を監督する権限を、ある程度政府に与えている。同法により、認証された宗教団体は資産を政府に開示することが義務付けられ、政府には、営利活動に関する規定に違反している疑いがある場合に調査を行う権限が与えられている。宗教団体がこうした規定に違反した場合、当局は当該団体の営利活動を停止する権限を持つ。
政府はいかなる宗教上の祭日も国の祝日としていない。
政府による実践
日本国内での信仰の自由の侵害の報告はなかった。
政府が日本に居住するイスラム教徒の個人情報を収集していたという申し立てが2011年にあったが、その後、あるイスラム教徒のグループの代表が、警視庁および警察庁はこうした行為をやめたようだと報告した。
政府は、法輪功(法輪大法とも呼ばれる)学習者に、人道的配慮による一時的な保護の地位を付与した。このような中国人の中には、在日中国大使館は信仰を理由に自分たちの中国のパスポートを更新しないだろう、と報告した者もいた。この人道的配慮による一時的な地位により、これらの中国人は日本国内にとどまり、日本政府が発行した渡航書類を利用して海外に渡航することができた。
政府は引き続き、ビルマでの民族的・宗教的迫害を恐れる50人以上のロヒンギャ族のいずれについても、難民と認定しなかった。これらのロヒンギャ族の大多数は日本に5年以上居住しており、中には15年以上居住している者もいた。報告によれば、日本に不法入国し、公式の再定住プログラムに参加していない者もいた。政府は、ロヒンギャ族に対し、難民認定を行わず、短期滞在ビザを発給した。このビザは頻繁に更新する必要があり、また短期滞在の地位には、ある程度の国外退去のリスクが伴った。ロヒンギャ族の権利を推進する団体の代表は、当局が、ある男性の庇護申請を却下した後、短期滞在の地位にあるこの男性を収容したと報告した。
第3節 社会による信仰の自由の尊重の現状
宗教的な帰属、信条、または実践に基づく、社会的な侵害または差別に関する報告がわずかながらあった。
ディプログラマーが家族と協力して、統一教会の会員およびその他の少数派宗教団体の信者を引き続き拉致したとの報告があった。報告件数は1990年代以降、大幅に減少したが、NGOの「国境なき人権」は、統一教会会員の拉致とディプログラミングが継続して発生していると主張した。日本の裁判所は、こうした拉致については確かな証拠がないとみられることを理由に、訴追および民事裁判での損害賠償の請求を却下した。
統一教会は、2012年に同教会の会員が拉致された事例を3件、拉致された疑いがある事例を2件報告した。同教会によると、拉致された会員のうち1人は、まだ監禁されている可能性があった。拉致され、後に解放されたその他の会員は、2012年末時点でまだ同教会の会員だった。統一教会はまた、状況を改善しようとする大学側の努力にもかかわらず、日本全国の大学が依然として「カルト防止」ワークショップおよび運動を行い、同教会の関連団体に近づかないよう学生に呼びかけ、同教会の会員である学生にとって厳しいキャンパス環境が生まれる一因となったと主張した。ある大学の学長は「カルト防止」ワークショップの存在を確認したが、統一教会だけを対象とするものではないと強調した。ある学生が、統一教会を通じた両親の結婚を非難したとされる発言により、名誉を毀損され、宗教の自由を侵害されたとして、佐賀大学を提訴した。7月に提起された訴訟では、統一教会の元会員が、同教会は正体を隠して勧誘活動を行い、原告は同教会への入会により高報酬の職を失ったと申し立てた。本件は、2012年末時点で係属中であった。
社会は、法輪功学習者が自由に修練する権利をおおむね支持したが、在日中国大使館が、法輪功学習者を差別するよう日本の組織に働きかける運動をしたとの報告があった。日本の一流施設の中には、ニューヨークを拠点とする法輪功関連の芸術団体である神韻芸術団の公演の開催を拒否したところもあるが、より小規模な他の劇場が同芸術団の公演を開催した。
2012年には宗教の違いを超えた意義深い取り組みが継続された。異宗教の団体から成るNGOの日本宗教連盟は、宗教文化と宗教間の調和を促進した。3月には、2011年3月の東日本大震災の被災地における、宗教関係者による問題への取り組み方を提示する会議を開催した。イスラミックセンター・ジャパンのメンバーは、引き続き教会で講演し、キリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒、仏教徒と共に宗教間の平和の祈りに参加した。
第4節 米国政府の政策
米国政府は信仰の自由の状況を注意深く観察し、少数派宗教団体およびNGOに接触し、信仰の自由に関して日本政府と話し合った。
在日米国大使館の代表は、さまざまな宗教団体や宗教指導者と会合を持った。大使および首席公使はいずれも、日本および地域で人権ならびに信仰の自由を推進するNGOの活動を紹介するイベントを主催した。大使館の担当官は、ユダヤ人社会、およびユダヤ人社会と日本人社会との交流について、ラビ(ユダヤ教教師)のアントニオ・ディ・ゲス氏と意見を交わした。大使館の代表は、宗教的拉致と強制改宗について、統一教会の指導者らと話をした。大使館の担当官は、ロヒンギャ族の代表と会合を持ち、この代表から、ビルマのラカイン州での人権問題について、またビルマ国内での宗教的迫害を恐れるロヒンギャ族の難民認定に日本政府が消極的であることについて報告を受けた。大使館職員はイスラミックセンター・ジャパンの代表と会合を持った。この代表は、日本政府とイスラム教徒社会との関係の概要を述べ、同センターが関与している宗教の違いを超えた取り組みについて説明した。大使館の代表は、法輪功学習者とも会合を持った。
大使は、ラマダン(断食)の終わりを告げるイフタールの夕食会を主催した。この夕食会には、24人の駐日外国公館長に加え、多数の大使館職員、日本の国会議員、財界指導者、イスラム教および他の宗教の指導者、日本政府職員が出席した。