カート・トン臨時代理大使の日経・CSIS シンポジウムでの日米同盟に関する講演

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

 2013年10月29日

    皆さん、こんにちは。 本日、この素晴らしいイベントを主催してくださった日本経済新聞社と戦略国際問題研究所(CSIS)の皆さんにお礼を申し上げます。最前列にいらっしゃる皆さんを見て、(私の話について)後であまりうれしくない成績をいただくのではないかと、少しおじけづいています。ですから、どうぞお手柔らかにお願いします。

   まず、本日ここにいらっしゃる日本の友人の皆さんにお約束いたします。新しい駐日米国大使、キャロライン・ケネディが間もなく日本に着任します。彼女は、皆さんにお目にかかること、そして、これからこの重要で特別な関係をさらに強化するためにベストを尽くすことを心から望んでおります。

  また本日は、トム・フォーリー元大使を追悼して一言申し上げたいと思います。本日、米国大使館では、フォーリー元大使をしのんで半旗を掲げています。私は、強く、永続的な価値ある日米関係に多大な貢献をしたフォーリー元大使の下で働く機会を得ました。フォーリー元大使夫人に手を差し伸べ、日本で勤務する米国政府職員に哀悼の意を表してくださった大勢の日本の皆さんに、深く感謝します。フォーリー元大使は素晴らしい人でした。その死は深く惜しまれることでしょう。

  本日はいくつかお話ししたいことがあります。第1に、アジアへのリバランス(再均衡)について少しお話しします。これについては皆さんもすでにいろいろお聞きになっていると思います。第2に、地域の問題と、予想される日本の安全保障政策および制度の変化などを通じた日米同盟の強化が、そうした地域の状況にどのように組み込まれるのかについてお話しします。第3に、経済政策や、グローバルな開発、平和、安全保障の課題に関して日米が協力することの重要性、そしてそうした協力がアジア太平洋地域の平和と繁栄にいかに貢献するか、という点についてもお話しします。そして最後に、今後日米両国で新しい世代が成長し、重要な役割を果たすようになる中で、将来もこの特別なパートナーシップを強固で健全なものとして維持するために役立つ重要な措置について考察します。

  初めに、米国の「アジアへのリバランス」についてよく耳にされると思います。これは、より正確に言うと、オバマ大統領の戦略的なアジア重視を指します。懐疑的な人たちもいますが、これは本物です。米国はこれまでも、またこれからも、常に太平洋国家です。歴史的にも、地理的にも、外交的にも、経済的にも、文化的にも、また安全保障の面からも、米国は太平洋国家です。米国の投資を、あるいは米国民を見ていただければわかります。

  世界各地で起きているさまざまな出来事により、アジアへの注目が薄れていると懸念する人たちに対しては、現実をもう一度よく見てくださいと申し上げます。先月、オバマ大統領は国連総会での演説で、シリア、北アフリカ、そして中東における課題について多くの時間を費やしました。またイランについてもかなりの時間を割きました。それは事実です。そして、宗派間の紛争や大量破壊兵器が大きく報道される傾向があることも確かです。しかし、オバマ大統領の演説の締めくくりはアジアの話でした。大統領は、何億もの人々が貧困から脱し、官民が協力して気候変動と闘い、自由が拡大し、若者が事業を起こし、何世代もの人たちが過去の戦争や思想の対立を忘れて本当の意味で前に進む、新たな未来へのビジョンについて語りました。

  それが、米国にとってのリバランスです。それがこの地域で起きていることであり、米国は「完全に関与している」のです。

  この戦略的なアジア重視には2つの側面があります。ひとつは、地域内でリバランスがどのように具体化しているのか、もうひとつは、過去半世紀以上、現在に至るまで、安定した繁栄するアジアの堅固な基盤となってきた米国と日本の2国間関係が活性化される中で、このリバランスが2国間でどのように具体化しているのか、という点です。

  まず中国についてお話ししましょう。それは、このリバランスが「中国封じ込め政策」ではないということを非常に明確にしておきたいからです。そのような見方は、歴史を根本的に読み誤っています。旧ソ連と米国の間には、貿易も社会的な接触もほとんどありませんでした。しかし、今日の米国の対アジア政策は、それとは全く異なり、米国は中国との間で安定した建設的な関係を築こうとしています。もちろん両国の間には、政治手法の相違による摩擦があります。また言うまでもなく、日本を筆頭とする太平洋地域の国々との長年の同盟関係の強化と近代化が、今後も米国のアジア太平洋政策の中核となります。しかし、地域機関と体制の構築、地域全体の経済統合の推進、そして普遍的かつ民主的な価値観の促進という私たちの取り組みには、いずれも中国が参加しますし、中国が含まれます。それは封じ込めではありません。

  日本の近隣諸国といえば、ここで少し、歴史と和解についてお話ししたいと思います。2週間前、私は、以前なら想像もできなかったと思われる出来事を目にしました。第2次世界大戦中に捕虜として日本で地獄のような体験をした米国人の一団が、日本政府に招待されて日本を再訪しました。彼らはとても素晴らしい人たちで、全員が90歳を超えており、かなり体の弱っている人もいれば、 元気な人もいましたが、誰もが自分たちの耐え抜いた苦難をはっきりと記憶していました。

  このイベントに参加するには、大変な勇気が必要でした。味わった苦痛を決して忘れることのない人たちが、日本へ来て、日本がどう変わったかを見るには勇気が必要だったことは言うまでもありません。しかし同時に、日本が過去の過ちを認識し、元捕虜たちに敬意を表することにも勇気が必要でした。

  かつて敵同士であった米国と日本は、過去の歴史を認識し、将来に向けた共通のビジョンを築くために日々力を合わせています。

  共に元軍人であるケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、第2次世界大戦で亡くなった日本国民に敬意を表して献花したことも、和解を示す行為でした。

  今この会場にいる人は皆、日本とその近隣諸国、特に韓国との間に今も歴史的な亀裂が存在することを認識しています。米国と日本の間の和解が、私たちの想像を超えたグローバルなパートナーシップを実現したように、日本と近隣諸国の心からの和解によって、素晴らしい結果がもたらされるのではないでしょうか。当然のことながら、これは日本と近隣諸国の問題です。しかし、米国の観点から言えば、歴史問題についての相違点を解決すれば、米国の重要な同盟国との間で効果的な3カ国間の協力を促進することができ、それにより全ての国がより強く、より安全になるため、地域の骨組みの強化に貢献できるでしょう。

  次に2国間関係に目を向けると、米国と日本は65年以上にわたり戦略的同盟関係を築いており、その関係は両国の安全保障と繁栄の基盤をつくっただけでなく、アジア太平洋地域の平和と安全保障の礎となっています。

  この点について少し考えてみたいと思います。このことは「リバランス」にとってどういう意味を持つのでしょうか。リバランスが復帰ではないことを意味します。米国は常にこの地域にいたのですから。考えてみてください。米国がその最先端の軍事施設と設備を配備しているのはどこでしょうか。日本です。米国政府高官や連邦議員が定期的に訪れるのはどこでしょうか。日本です。シリア、イラン、あるいは北朝鮮など、現代の最も難しい課題について米国が外交的支援を求めるのはどこでしょうか。日本です。

  事実、この戦略的リバランスは、日米同盟の重要性をこれまで以上に高めます。両国のパートナーシップは、 21世紀の強力で永続的な地域の安全保障体制を築く米国の取り組みの中核となっています。

  今月、ケリー、ヘーゲル両長官が、岸田外務大臣、小野寺防衛大臣と会い、いわゆる2プラス2会合を東京で開催しました。4人の閣僚が日本でこのような形で会合するのは初めてのことでした。閣僚たちは、変わりつつある地域の安全保障環境に日米同盟を適応させるために、日米の協力関係を加速させ、深め、拡大することで合意しました。

  軍事協力の面で拡大している分野のひとつが、弾道ミサイル防衛です。 2012年末、そして今年4月に、失敗した北朝鮮のミサイル発射に先立ち、米国と日本は両国の戦略的弾道ミサイル防衛設備の配備で緊密に協力しました。この取り組みへの支援を強化するために、両国は早期発見能力を向上させる新しいXバンドレーダーの設置で協力することに同意しました。 

  今月会合を開いた日米の外務・防衛閣僚は、サイバーセキュリティー、機密情報の保護、そして宇宙の戦略的利用など、一層の注意を必要とするいくつかの新しい分野について2国間協力を強化することで合意しました。過去数年間に日本の防衛企業や国会のコンピューター・システムへ不法侵入があったことで、こうした新たな脅威に対抗するために同盟国として協力すること、そして日本が重要な情報の保護を強化するために必要な規制および法律の枠組みを構築することが喫緊に必要であることが明らかになっています。

  こうした新たな脅威に適切に対応するには、遅れている普天間基地の代替施設の建設を早急に完了する必要があります。キャンプ・シュワブの新施設が完成すれば、普天間の海兵隊飛行場を閉鎖して沖縄の人たちに返還し、騒音や交通渋滞、安全に関する懸念などの問題を軽減すると同時に、変化する地域の安全保障環境の中で日本の防衛に必要な軍事態勢を維持できます。

  この歴史的な会合で強調されたもうひとつの分野は、人道援助と災害救助でした。米国と日本は、海賊対策、国際平和維持活動、地域の各地で発生する自然災害時の対応における必要な人道的救援の提供などの問題で協力することを約束しています。

  日米同盟の議論から、当然、安倍政権の安全保障政策を米国がどのように見ているかという問題が持ち上がります。安倍政権の安全保障政策とは、国家安全保障委員会設立の提案、情報保全に関する法律の制定、そして日本が憲法を再解釈して自らに課した制約を取り除き、日本の集団自衛権の行使を認めるべきかといった点などです。

  もちろんこれらは、日本の国民と国民の選出した代表だけが、情報に基づく誠実な討論の末に決めることのできる問題です。しかしながら、米国の観点から申し上げれば、これらの政策を策定した理由は全面的に理解できます。例えば、国家安全保障委員会のような新たな組織を通じて省庁間で調整し、明確な国家安全保障戦略を策定すれば、日本はより効果的な同盟国となります。共有する国家安全保障に関する機密情報を適切に保護できれば、日本はより効果的な同盟国となります。また、平和維持活動に参加している米国の兵士が攻撃された場合に日本の兵士が彼らを防衛することができれば―これは「防衛」である点に留意してください―日本はより効果的な同盟国となります。

  米国の視点からは、 例えば米国の船舶を敵対的なミサイル攻撃から守る際の日本の支援や、米国をはじめとする国際社会の国々による重要な人道支援活動や災害救援活動への日本の参加が歓迎されるのは当然のことです。改憲せずこうした政策の変更を行うことは可能である、と私たちは聞いています。

  ここではっきり申し上げておきたいことがあります。そしてそれは、本日の話で最も重要な点です。それは、米国は日本を信頼しているということです。日本は何十年もかけて、自らが民主的価値観に深く根ざした平和な国であること、そして地域と世界に極めて大きく有益な貢献をする国であることを証明してきました。すなわち日本は、平和と協力、相互の共存と理解を重視する対アジア・ビジョンを米国と共有しています。

  日本がその安全保障政策をより透明な形で策定し、そうした政策を辛抱強く近隣諸国に説明すれば、さらに効果的な同盟国となるでしょう。近隣諸国との間に信頼を築くことによって、日本はより自信を持って、地域および世界の安全保障に建設的な役割を果たすことができます。

  ここまで、リバランスの軍事面および安全保障面についてお話ししてきました。それでは少し話を変えて、日米の経済関係に注目したいと思います。アジア太平洋地域における日米共通の利益は、安定した、安全で平和な、繁栄する地域、すなわち市場経済が栄え、国際的な合意に基づく規則と規準の上に構築された、自由で開放された透明かつ公正な貿易・投資関係を誰もが享受できる地域を築くことです。そのようなビジョンを支える地域の体制を構築することが、このリバランス戦略の成功には不可欠です。

  米国は、アジア太平洋経済協力会議(APEC)のようなフォーラムを通じて、また東南アジア諸国連合(ASEAN)への経済的関与を推進することにより、最大限の地域協力を維持したいと強く望んでいます。この新しい構造、そしてオバマ政権の戦略的リバランスの要素の中でも特に期待されているのが、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)です。

  TPPは、21世紀の貿易面の課題に取り組み、世界の貿易システムに新たな規律を導入する、高水準で包括的、かつ雇用を支援する合意を実現しようとする、米国や日本、その他のTPP参加国の共通の決意を反映しています。

  先ごろAPEC首脳がバリ島に集まり、1994年以来初めてインドネシアが主催するAPEC首脳会議が開かれました。実は、2020年までにアジア太平洋地域における自由で開放された貿易・投資を達成するという、いわゆるボゴール目標を各国首脳が採択したのは、1994年にバリで行われたAPEC会議でした。1994年当時には、そうした目標を達成できるかということについて、かなり懐疑的な見方もありました。 しかし、マイケル・フローマン米国通商代表が2013年8月に東京を訪れたときに述べたように、「ボゴール目標を念頭に置いたとき、TPPは極めて素晴らしいビジョン」です。

  TPPは、APECのビジョンを前進させ、いずれはアジア太平洋地域全体を網羅する自由貿易圏を築くための、大きな転機となる一歩です。貿易促進、能力開発、サプライチェーンなどの分野におけるAPECの重要な活動は、開発途上国を含むTPP参加国に、TPP交渉に参加し成功するために必要な手段と自信を与えてきました。

  米国は、日本をはじめとする参加国の協力を得て、TPPの残された問題を全て今年末までに解決しようとしています。 

  TPP交渉を年末までに妥結させるという目標が現実的かどうかという点についていろいろな報道がありますが、個人的には、TPPは速やかに妥結に至ると強く確信しています。それには2つの理由があります。ひとつは、今ではどのTPP参加国も、関連する課題を全て完全に理解しているからです。もうひとつの、そして最も重要な理由は、どの TPP参加国も、自ら希望して交渉のテーブルについているからです。それぞれの国が、冷静に自らを評価し、国益を検討して、TPP交渉の妥結が自国の経済を一層強化し繁栄させる、と自ら判断しています。ですから私たちは着実に前進していきます。

  日米2国間の軍事および経済関係にとって、また地域にとってリバランスが何を意味するかについてお話ししてきましたが、日本はアジアにおける米国の同盟国であるだけではありません。世界各地でも、米国の極めて重要な同盟国でありパートナーです。シリアでの化学兵器による破壊的な攻撃のような、人類に対する脅威に直面するとき、私たちは日本と協力して立ち向かいます。解決は困難と思われるような紛争を外交的に解決しようとするとき、私たちは日本と協力して取り組みます。

  私たちが朝鮮半島を非核化する戦略を考えるとき、世界基金のような取り組みを通じて伝染病から人命を守るとき、そしてカンボジアのクメール・ルージュ裁判のように、非人道的犯罪に対して正義を推進するとき、日本は米国を支援してくれます。 

  南シナ海での海洋紛争について外交的な紛争解決を求めるとき、全世界で自由で透明な貿易体制の構築に取り組むとき、そしてグリーン・エネルギーで新たな技術革新を追求するとき、米国は日本を頼りにすることができます。

  アフリカで貧困と闘い、経済開発を推進するとき、性別に基づく暴力の根絶を提唱するとき、そして世界中の女性のためにより平等な世界を目指して努力するとき、米国は日本の支援を期待します。

  なぜでしょうか。それは、この地域と世界で日本の発言の影響力が高まれば高まるほど、米国と世界にとってより好ましいからです。 

  安倍首相は、日本が積極的平和主義の国として、国際舞台でさらに重要な役割を果たす意志があることを明らかにしています。私たちはそうした役割を称賛します。同様に、日本が国際競争力を増すために経済改革を行っていること、そして海外開発援助を強化していることも心強く思っています。

  安倍首相が2月にワシントンのCSISで行った講演は広く引用されていますが、その中で首相が述べた「Japan is back (日本は戻ってきた) 」という言葉は、状況を最もよく表すものです。首相は、私たちが理解できるように英語で表現しました。それに対して、日本の最も親しいパートナーである米国の反応は、「Welcome back (お帰りなさい)」の2語に尽きます。

  私は、安全保障、政治、開発、貿易・投資の各分野で、米国と日本の国益がいかに相互に絡み合っているかを詳しくお話ししてきました。最後にもう少し時間をいただいて、そうなった理由と、この素晴らしい日米パートナーシップを将来の世代に広げていくために何が必要かを考えてみたいと思います。

  地理、人口統計学、文化、言語など、さまざまな面でこれほど異なり、かけ離れている2つの社会の将来が、切っても切れない結び付きを持つようになったのはなぜでしょうか。何十年にもわたり、熱心な個人や組織が、そうした結び付きの基盤となる揺るぎない関係を築いてきました。 個人的には、国際基督教大学とアメリカ・カナダ大学連合日本研究センターで学んだ日本での体験を思い出します。また日本に留学したり、日本で英語を教えたり、あるいはJETプログラム(「語学指導等を行う外国青年招致事業」)やマンスフィールド・フェローシップ・プログラムに参加した経験がある、多くの大使館・領事館職員のことや、ドナルド・キーン氏のように、日本の文学、文化、歴史の普及に一生をささげてきた人たちのことを思い起こします。

  両国が協力し、共にアイデアを生み出し、共にさまざまなものを築くために必要な技能と考え方を持ち、この2国間関係に力を注ぐ将来のリーダーを育てることが、太平洋の両側でかつてないほど必要になっています。私たちはこれからも、787ドリームライナーや国際宇宙ステーションのようなものを共に作り続ける必要があります。

  このように、文化交流、ビジネス交流、学生の交流など、両国間であらゆる種類の交流を拡大することは、私たちにとって共通の大きな利益です。多くの研究によると、日本の若者あるいは米国の若者が国際交流の経験を求めるかどうかを決める最大の要素は、組織同士のつながりです。そうしたつながりは、現在の若者にとって重要であるだけでなく、私たちの将来のパートナーシップを確保するためにも不可欠です。

  こうしたことを理解した上で、日米両国政府は昨年、2国間の教育タスクフォースを設立しました。産学を代表する人たちがメンバーの大半を占めており、目的は2020年までに若者の双方向の交流を倍増する施策の提言です。交流の倍増です。これは意欲的な目標ですが、これだけでは足りません。私たちは、学生の交流だけでなく、ビジネス交流その他の活動も含めた、あらゆる種類の双方向の交流を倍増すべきです。

  ここ日本におけるそうした取り組みの最も良い例が、TOMODACHIイニシアチブです。これは、東日本大震災後、在日米国大使館が始めた画期的な官民パートナーシップであり、教育・文化交流プログラムを支援し、リーダーシップや起業家としての技能を育成することにより、日米の次世代の指導者に投資するイニシアチブです。

  私は、日本で過ごすうちに、日米の特異な関係の価値を深く理解するようになりました。それは、長年にわたる国民レベルでの交流によってのみ生まれる相互理解を基盤とする関係です。

  そこで最後にこう申し上げます。ワシントンあるいはその他の場所で行われている政治ゲームや、マスコミの批判に気を取られないでください。オバマ大統領の主導するアジアへのリバランスへの米国の関与は、何ものにも揺るがされません。米国はアジア太平洋地域に「完全に関与している」のです。それが最も顕著に表れているのが日本です。米国は、地理、歴史、文化、経済によって、また今日の安全保障と繁栄を達成するために実行してきたチームワークと共同の投資によって、アジアと密接につながっている太平洋国家です。

  地政学的な強い力により、この地域は変化しつつあります。中国が台頭し、韓国の経済的な重要性が増し、インドが東に目を向け、これまでになく相互のつながりを深め、繁栄する東南アジア諸国が力を増しています。

  こうした状況下でのリバランスが意味するものは、日本、韓国、オーストラリアとの同盟関係を強化すること、インドやインドネシアのような新興諸国とのパートナーシップを深めること、中国との間に安定した生産的・建設的な関係を築くこと、ASEANのような地域機関の権限を強化すること、そして共通の繁栄のために地域の経済体制の構築に貢献することです。

  リバランスとは、米国がしばらく遠ざかっていたアジアに戻ることではありません。なぜなら、米国がアジアを離れることはなかったからです。また他の地域の重要なパートナー諸国とのつながりを弱めることでもありません。中国を封じ込めたり、関係を押し付けるものでもありません。また米国の軍事的存在だけに重点を置くものでもありません。

  リバランスでは、軍事、政治、貿易・投資、開発・外交、米国の価値観など、米国の意図と力のあらゆる要素を活用することになるでしょう。そして、そうするにあたっては、日本と手を携えていきます。

  ご清聴ありがとうございました。午後の議論も実り多いものとなるよう願っております。