「エネルギー安全保障と政策:日米協力の将来」- モニツ・エネルギー長官の笹川平和財団主催イベントでの講演

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

2013年10月31日、東京

 田中(伸男・元国際エネルギー機関事務局長)さん、ありがとうございます。私たちは確かに歴史を共有しています。今の温かいご紹介の言葉は、数年前に私がマサチューセッツ工科大学(MIT)で田中さんを丁重にご紹介したお返しでしょう。羽生(次郎)会長のごあいさつと、この講演会を開催していただいた笹川平和財団に感謝申し上げます。

 田中さんの話に戻りますが、国際エネルギー機関(IEA)で、そして言うまでもなくその後も彼と一緒に働くことができ、本当に光栄でした。田中さんは、気候変動の問題についてIEAの注意を喚起した、まさに先駆者だったと思います。私たちはこれを高く評価しており、IEAに対する貢献としていつまでも残ると思います。

 日米関係は、今も全世界の平和および安全保障の礎のひとつです。皆さんもご存知のとおり、両国は貿易と通商、金融、安全保障、科学技術、そしてエネルギーを包括する強固で揺るぎないパートナーシップを築いてきました。急速に変化する世界において、両国は力を合わせ大きな国際的課題に対処しており、また今後も対処するものと思います。

 オバマ大統領は日本との2国間関係を非常に重視しています。これまでに日本を2回訪問しており、今年2月にはホワイトハウスへ安倍首相をお迎えしました。オバマ大統領はまた、世界の他の地域に対するコミットメントを維持したまま、アジア地域の優先課題への取り組みを強化する米国の外交政策を強調してきました。

 オバマ大統領は次のように述べています。「米国は、これまでも、そしてこれからも、常に太平洋国家であり、ここから米国の将来を展望する」と。

 従って、現在そして今後の米国の優先事項を考える場合、アジア太平洋地域以上に、米国の経済および安全保障上の利益、そして普遍的な人類の価値観を推進する米国の永続的な利益を促す重要な機会が存在する地域はないことは明らかです。 

 このような重点的な取り組みの中心にあるのが、気候問題とエネルギー問題です。この2つは、日米関係の重要な要素です。アジアの経済成長が続く中でエネルギー需要は著しく増大し、多くの経済協力の機会を創出するとともに、賢明な成長の必要性が明らかになりました。日本では、特に福島第一原子力発電所の事故の後、国の内外を問わず、エネルギーの安全保障が一層重要になっています。

 気候問題については、私たちはこれまで、この問題に対処すべきか否かについて議論していました。しかし今日では、米国連邦議会や国際社会との議論では、何をしているか、どの程度対処しているか、どの程度迅速に対処しているかという点に重きが置かれるようになっています。

 二酸化炭素は何世紀にもわたり大気中に滞留するため、大気中の二酸化炭素の蓄積効果を勘案すれば、どの程度迅速に対応できるかという点は特に重要です。私たちが排出する二酸化炭素は全て、私たちの世代だけではなく、将来の世代の排出にも負の影響を及ぼします。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が先ごろ報告したように、(気候変動を)賢明であると考えられる範囲内(気温上昇が2℃を超えない可能性が高い範囲内)にとどめるための、いわゆる二酸化炭素の人的排出許容割当量について検討すると、私たちが今の行動を続ければ、これ以上の排出を許容できる余地は今後、四半世紀ほどでなくなります。私たちのエネルギー・システムを変更するには、時間的な余裕はあまりありません。実際のところ、今が協力してエネルギー・システムを変えるときなのです。

 気候変動のリスクが、私たちの子どもや孫の世代にとって非常に大きくなることは確かですが、同時にそのリスクが今日も存在するという事実を見過ごしてはならないと強調したいと思います。おとといは、大型のハリケーン・サンディが米国のニュージャージー・ニューヨーク地域を襲ってからちょうど1年目でした。被害総額は600億ドル以上に上り、米国エネルギー関連のインフラが甚大な被害を受けました。電力、情報、燃料輸送などの各インフラがいかに相互に依存しているかがわかる厳しい教訓となりました。率直に申し上げ、非常に進んだ国の裕福な地域で、文字どおり数週間にわたり、エネルギー・サービスが完全に復旧できないほどでした。

 個々の暴風の原因が気候変動であると言うことはできません。しかし同時に、統計的にみて、四半世紀前に予測した強い暴風、干ばつ、洪水、山火事を現実に体験しているという事実も無視できません。気候変動は私たちの子どもや孫の世代に大きな課題を残すのみならず、今日の私たちも大きな代償を払っていることを考えてみる必要があるでしょう。

 日本もこの3週間で2つの大型台風に襲われました。そして繰り返しますが、こうした極端な気象現象は一層激しさや頻度を増しています。

 このような状況において、気候変動は、環境上の脅威であるだけではなく、国家安全保障上の脅威でもあるという見方が確かに強くなっていると言わなければいけません。例えば、世界各地、特に社会が秩序だっておらず、経済的に裕福ではない地域においては、気候変動が環境に大きな混乱を引き起こすことにより、この世界において国際的なテロの脅威を増幅させる大きな要因にもなり得ます。従って、気候変動に対処することは、さまざまな側面において多大な結果をもたらします。

 このように考えると、オバマ大統領が6月に発表した気候変動対策に関する行動計画の背景がおわかりいただけると思います。この行動計画はいくつかの要素から成りますが、私は特に3つの重要な点をお伝えしたいと思います。第1の点は、この行動計画が3つの柱から成ることです。第1の柱は低減です。これは地球の気温の大きな上昇や、予測される気候変動の結果を回避できるように、温室効果ガスの排出量を削減するものです。これは当然のことながら、後でお話しするクリーン技術の問題につながります。

 大統領が強調する第2の柱は適応です。これは、先ほど述べたように、私たちがすでに地球温暖化の影響を受けていると大統領が認めていることを意味します。私たちは、(影響を)軽減しますが、それでも影響は増大することになるでしょう。この現実に直面し、これに適応するプロセスを始めなければなりません。エネルギーの分野で適応とは、21世紀のエネルギー・インフラを建設する中で、大きな障害に対する耐性を持つことを重要な基準のひとつとして取り入れることであり、米国では間違いなくこれが当てはまります。

 第3の柱は、国際協力です。これは当然、世界中全ての人々がそれぞれがなすべきことをしなければ、気候変動や地球温暖化に対する解決策を得られないと認識した上で行うものです。

 これは、今週のアジア太平洋地域への訪問で重視している点のひとつです。(2020年以降の気候変動対策の枠組みについて合意を目指す)2015年のパリ会合につながるワルシャワ会合へ向かう中で、米国と日本が国際公約への取り組みで足並みをそろえることは非常に重要です。米国の気候変動対策に関する行動計画は、私たちの(行動の)強固な基盤となっています。日本が福島第一原発の事故後のエネルギー政策に取り組む必要があることは、もちろん理解しています。これについては、すでに先のお話で言及がありました。しかし、繰り返しますが、両国がそれぞれの公約を提示し、よく歩調を合わせて前進することが極めて重要です。

 以上、第1の点は、大統領が新たな重点分野の「適応」など、3つの大きな柱を提示したことです。第2の点は、米国あるいは他の国が、自らの表明した約束を現実にやり遂げるか否かという問題です。そしてこれが私の強調したい点なのですが―これは政府の制度の細かい点に関わるかもしてませんが―大統領の行動計画は、非常に広範であり非常に意欲的ですが、現政権がすでに持つ権限で実施できる行動のみに基づいています。つまり、今後の連邦議会の行動に依存していないということであり、米国はこの計画を実施するということです。そして、特に国際的な議論を行うため、2015年末に開催される気候変動枠組条約締約国会議(COP)のパリ会合に向け進む中、私たちが気候変動対策に関する行動計画を積極的に実施することは、非常に重要であると考えます。

 私たちが行動計画の実施を進めている一例として、石炭の分野で、環境保護庁が公約したとおり、米国内に設置済みの新しい石炭プラントに、炭素回収隔離技術を備えることを義務付ける規則案を提出したことを指摘したいと思います。このような規則を制定する権限を当局に付与している大気浄化法は、常に技術の推進を目的としてきました。従ってこの規定は技術を推進しますが、エネルギー省は、技術の推進と同時にコストを抑制する責任も負っています。このため、炭素回収隔離技術に対してすでに拠出を約束した60億ドルに加え、低排出燃料技術の普及を促進する借入保証プログラムに80億ドルを拠出することを表明しました。

 私がここであらためて強調したいのは、これは実現されると期待すべき計画であり、米国にとって非常に大きな意味を持つ計画だということです。同時に、この計画は国際社会全体にも大きな意味を持ち、気候変動についての国際的な議論でリーダーシップを取るための基準になると考えます。

 行動計画について私が主張したい第3の点は、この計画が大統領の「包括的な」エネルギー戦略を反映していることです。これは一体何を意味するのでしょうか。まず、間違いなく、この計画の全ての要素は、低炭素経済へ向かうという文脈の中で実施されます。しかし、そのために私たちが約束していること(これにはエネルギー省が特に技術の開発と普及の点で中心的な役割を担っています)は、技術の方向性を追求し、米国の全ての燃料資源が将来の低炭素市場で競争力を持つようにするということです。石炭、ガス、原子力、再生可能資源、効率性など、全ての方向性を積極的に追求しています。

 例えば再生可能資源について考えてみると、多くの人は再生可能技術が今も、そしてこれからもずっと、5年か10年先の技術だと考えるのではないでしょうか。私たちは、それが正しいとは思いません。現実を見れば、風力、特に陸上風力、太陽光、LED照明、そして自動車用電池でさえも、多大なコスト削減が実現しており、これに伴いこうした技術が急速に普及しています。私たちはまさに、これらの技術の大規模な導入という真の革命の始まりにいると考えます。

 例えば、2012年には、米国で最も広く活用されている新たな電力源は風力でした。太陽光パネルは、5年間で普及が10倍に拡大しました。おそらくコストが75%低下したことが要因のひとつでしょう。日本は、政府が強力な固定価格買い取り制度を導入していることを私たちは承知しており、これにより確かに、米国企業を含む再生可能エネルギー部門への大きな投資が生み出されています。この結果、太陽光発電は、プログラムが導入された1年目だけで、ほぼ4ギガワットの能力を持つ設備が新たに設置され、飛躍的に拡大しました。

 同様に、風力発電、地熱エネルギーなど、政府の政策に基づいて推進されるエネルギーが、再生可能エネルギーの普及を促進するものと考えています。

 電気自動車技術も飛躍的な進歩を遂げています。確かに日本では、電気自動車の普及はまだ限られていますが、米国では2013年の上半期に、5万台以上のプラグイン電気自動車が販売され、1年前と比較して2倍以上増加しました。おそらく今年は電気自動車の販売が10万台を超えるでしょう。この増加率は、例えば15年前の同様の増加率よりも実際に高くなっています。言うまでもなく日本では、例えばトヨタはハイブリッド車の真のパイオニアです。ですから、高い効率性と電化を同時に実現した、とても興味深い、新たな自動車技術の融合がみられます。

 ここで付け加えますが、実際に米国では、安全保障および気候変動対策の目的で、石油の利用を削減する3つの柱から成る戦略―私は常に3つの点からお話しているようですね―を立てました。ひとつは、効率性の大幅な向上であり、大統領はこの点について、大まかに言って2025年までにこれまでの要件を2倍に引き上げる効率性基準を提示しました。米国はすでに効率性という点でこの政策の成果を享受しています。

 石油依存の軽減にかかる第2の柱は、代替燃料です。米国は代替燃料を開発中であり、次世代バイオ燃料について大幅なコスト削減を実現しつつあります。米国は天然ガスが豊富なため、当然のことながら、天然ガスを主要な輸送用燃料として検討することにも大きな関心があります。そして第3の柱として、すでにお話しした電化があります。ですから、ここでも、米国は安全保障と環境上の懸念に同時に対処する複数の柱を持つ手法を採用しています。

 効率性に関して、ある技術についてお話ししたいと思います。LED照明です。LED照明のコストはわずか数年のうちに5分の1程度に下がり、これが大きな普及につながっています。実際、私たちは1カ月程前に、米国のLED電球の単価が約50ドルから約15ドルまで下落したとする報告を発表しました。しかし状況はさらに先に進んでいます。それから2週間もたたないうちに、ウォルマートは、一部のLEDを10ドル未満で販売すると発表しました。これはかなり急速な価格の下落です。よくご存じのとおり、米国のエネルギー・コストは世界で最も高いわけではありませんが、その米国でさえ、そのLED電球1個が耐用期間に削減できるエネルギー・コストはおよそ125ドルです。かなり割が良いと思います。

 効率性に関する別の分野として、気候変動対策に関する行動計画では、エネルギー省が電化製品や電気機器に関する効率性の基準を高める規則を制定するペースを大幅に加速することを約束し、事実、私たちはそれを実行してきました。オバマ政権の第1期および第2期に制定された電化製品や電気機器に対する基準により、2030年までに炭素汚染をおよそ20億トン規模で緩和し、8500万を超える世帯に2年間電力を供給するのに十分な量の電力を節約できると期待しています。

 日本はすでに、省エネルギーおよびエネルギー効率の分野で世界的なリーダーです。そしてこの分野は緊密に連携できる分野でもあります。将来的に炭素排出量に関する目標を達成しようとするならば、需要サイドでのエネルギー効率の管理が不可欠であると申し上げたいと思います。

 さて、日本は現在も、そして将来も、地球規模の気候変動に対する解決策を推進する上で重要なパートナーであり、米国は日本との緊密な連携を継続し、協力関係を深めていきます。このような議論のためのひとつのメカニズムが、両国のクリーンエネルギー政策や技術面での活動を調整するクリーンエネルギー政策対話です。エネルギー政策対話を通じて、例えば、島しょ地域での技術的解決法に焦点を当てたハワイ州と沖縄県のクリーンエネルギーに関するパートナーシップで活動の調整を行いました。東北グリーン・コミュニティー・アライアンスでは、エネルギー省の国立再生可能エネルギー研究所およびカンザス州グリーンズバーグに、東北の地方自治体および民間の代表をお招きしました。グリーンズバーグは、竜巻によって破壊され、その後エネルギー省の支援により、クリーンエネルギーとクリーン技術を用いて再建された都市です。

 ですから、大地震と津波の被害を受けた東北地方を、クリーンエネルギーで再生させるアイデアやイメージを提供できたのではないかと思います。

 マイクログリッドについては、すでに少しお話ししました。米国と日本の連携は、エネルギー問題に関し、気候変動への耐性に優れた解決策を求める他の国々のモデルとなり得ます。マイクログリッドは、先に少し触れたとおり、再生可能エネルギーの使用を促進する可能性があるだけでなく、地球温暖化が進む中でより頻度を増している自然災害を受けた地域社会の復旧を助けることもできます。このようなマイクログリッドの能力は、2011年3月に日本で実証されました。地震による被害で地域の他の供給源からの電力供給が止まる中で、仙台にある東北福祉大学のマイクログリッドは熱電供給を継続することができました。この意味で、日本の送電網の耐性の強化も、2011年3月の地震から得られた教訓のひとつです。先にも述べたとおり、米国では同様の耐性を持つマイクログリッド技術を開発する重要な取り組みに着手したところです。

 燃料電池―日本が先頭を走るもうひとつの分野は、水素・燃料電池の商品化です。パナソニックや東芝などの大手企業が、天然ガスを用いた住宅用燃料電池を多数導入しています。またトヨタ、ホンダ、日産は今後数年間に燃料電池車を市場投入する計画です。エネルギー省の燃料電池技術局は、規格および基準の策定など、この分野で日本の研究者や企業と緊密に連携しています。

 典型的な事例として、エネルギー省の複数の研究所が、九州大学とイリノイ大学が共同で設立したカーボンニュートラル・エネルギー研究所に対し、水素技術の応用に関する支援をほぼ10年間にわたり提供してきました。研究者たちは協力し、燃料電池を利用した電気自動車の開発を加速させています。

 このように、私たちはこれらの再生可能エネルギー技術の分野で緊密に連携し、大きな可能性を見出しています。

 ここで化石燃料についてお話ししましょう。ご存じの通り、天然ガスは燃焼時に排出する二酸化炭素の量が石炭のおよそ半分と、他の化石燃料に比べてクリーンです。米国では豊富なシェールガスが、エネルギーの安全保障の強化、エネルギー輸入の縮小、二酸化炭素歳出量の削減、そして将来のクリーンエネルギー技術への架け橋となる燃料の提供で、非常に重要な役割を担ってきました。シェールガスのおかげで、米国は再び世界最大のガス産出国となりました。1970年代終わりのエネルギー省の研究から始まった官民パートナーシップが、その後、別の官民パートナーシップを受けた民間企業による実証実験に引き継がれ、今日では、深部地層からシェールガスを抽出する技術が採用されています。こうした長年にわたる取り組みの成果として、このような変革が生まれました。

 すでに申し上げたとおり、「包括的な」戦略とは、大統領の気候変動対策に関する行動計画の中で、クリーンな化石燃料にも引き続き重点を置くことを意味します。さて、すでに述べたとおり、私たちは日本が米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入に関心があると認識しており、日本の企業も熱心に参画するフリーポートおよびコーブポイントの2つのプロジェクトについて、条件付きながらその申請が許可されました。もうひとつのキャメロン・プロジェクトは、輸出許可審査の順番待ちで2番目です。日本の多くの皆さんにとって、これはとても喜ばしい進展であり、日本へのLNG輸出を心待ちにしていることと思います。ここでスケジュールの問題について一言ご注意申し上げたいと思います。エネルギー省が最初の許可をした申請は、その後、連邦規制委員会の環境審査を受け、その後エネルギー省に戻ってきます。私たちはできる限り早急に手続きを進めています。いくつかの段階がありますが、数年のうちに、LNGが日本へ輸出されればいいと思っています。

  もうひとつの重要な分野はすでに触れた炭素回収です。日本も火力発電で発生する炭素を回収し、海底に隔離する能力を実証しています。経済産業省が委託し、日本CCS調査株式会社 によって実施されているこの取り組みでは、北海道沖の海底に炭素を貯留する2つのプロジェクトが進められています。

 これも(日米の)連携が可能な、共通の利益がある分野の一例です。なぜなら、米国もこのような沖合の海底に炭素を隔離する可能性を検討しているからです。実際、来週にはワシントンDCで、閣僚級の炭素隔離リーダーシップ・フォーラムを開催する予定であり、これはまさに私たちが研究したい分野のひとつです。

 また、日本はメタンハイドレートの研究も主導しています。この分野も共通の利益があり、連携可能な分野です。今年の春、日本は世界で初めて、太平洋沖のメタンハイドレート埋蔵域からのガスの採取に成功しました。日米は、2012年のアラスカのノーススロープでの試験でも協力しています。加えて、日本は10年以上にわたり、メキシコ湾のメタンハイドレート調査で、エネルギー省や産業界と連携してきました。この分野では両国の継続的な連携が不可欠です。メタンハイドレートは研究課題を抱えながらも、可能性を秘めた非常に重要な資源です。

 以前に私がMITにいたころに、天然ガスについて執筆したとき、メタンハイドレートは採算のとれる事業となるまでに時間がかかることは確かだが、この資源がシェールガスの次に大きな変革をもたらし得ると指摘しました。

 さて、ここで原子力エネルギーについてお話しさせてください。原子力は「包括的な」戦略の一要素です。

 オバマ大統領は、安全な原子力が低炭素エネルギーの未来のひとつの要素であることを明確にしています。今日、原子力は、米国で発電に使用される低炭素資源のおよそ60%を占めています。米国では長年にわたり新しい原子炉の建設が停滞していましたが、現在は、5基の原子炉が建設中であり、この中には、いわゆる「第3世代」技術を使った新たな受動的安全システムを備えた原子炉が含まれており、この種の原子炉として米国で初めて許可を受ける予定です。私はここであらためて、エネルギー省がこうした新しいプラントの一部の建設を支援するために、およそ80億ドルの借入保証を提供し、この分野に積極的に関与していると申し上げたいと思います。

 言うまでもなく、日本も原子力エネルギーの開発および原子力エネルギーの平和的利用において、世界で指導的役割を果たしてきました。よく知られていることですが、両国の原子力産業は密接に結び付いています。私たちはもちろん、福島第一原発の事故後の原子力をめぐる日本の議論が複雑であることを理解し、尊重するとともに、この問題を前進させるための議論の全てに関わる用意と意欲があります。

 あの悲惨な出来事の後、米国民は強く日本の皆さんを支持しました。オバマ大統領が当時述べたように、「日本国民はこの大きな試練と悲しみの時に独りで立ち向かっているのではありません。日本が立ち直ろうとするとき、米国は太平洋を越えて支援の手を差し伸べます」

 米国は、福島第一原発の事故当初から、日本政府の即時対応および復旧活動を支援しました。今後まだかなりの時間を要する除染および廃炉にかかる作業についても支援する用意があります。

 エネルギー省は、事故後何日もたたないうちに、危機管理活動を支援するため、34人の専門家から成るチームと重量1万7000ポンド(約7.71トン)を超える機材を(日本に)送りました。また日本政府による放射線量の測定を支援するため、航空測定システムと被害管理対応チームを配備しました。さらにエネルギー省の環境管理チームは、同省および同省の国立研究所が持つ経験と技術を、東京電力による地下水の管理・処理、汚染水の処分など、廃炉への取り組みのために提供しました。エネルギー省の国立研究所は、東京電力との間で直接関係を築き、こうした取り組みを支援する分析や専門知識を提供しています。廃炉に関する分野における東京電力とエネルギー省の国立研究所の関係が、今後拡大し深まることを期待しています。

 この悲劇的な出来事が地球規模の影響を及ぼしたように、除染の成功もまた国際的に重要です。従って、私たちは皆、次なる措置が適切に、そして効率的かつ安全に取られることに直接的な利益があります。

 米国企業は、実際エネルギー省以上に、大規模で複雑な除染および廃炉のプロジェクトに対応するで幅広い経験を有しています。米国企業の中には、2011年3月の事故直後から、福島第一原発の廃炉にかかる活動で東京電力や日本企業と緊密に協力している企業もあります。米国の廃炉・除染業界もまた、日本政府と東京電力による廃炉作業および汚染水の問題で、日本が必要とする場合は支援を提供する用意があります。

 日本が引き続き国家として福島第一原発の汚染除去に関する計画を立て、日本のエネルギー経済の将来を決定しようとする中、米国はこの難しい取り組みで日本を支援する用意があります。2012年、米国と日本は福島第一原発の汚染除去、緊急対応、原子力安全規制問題、民生用原子力研究開発、原子力の安全保障および不拡散に関する戦略・実務的な関与を強化する民生用原子力協力に関する日米2国間委員会を設置しました。これらの全ての分野において具体的な成果を挙げることが極めて重要です。

 先の福島第一原発での汚染水の事故を受けて、日本政府が同所での汚染除去活動へ直接関与する度合いを高め、支援を求める決定を下したことを、米国は歓迎しています。国際廃炉研究開発機構(IRID)は最近、日本政府に代わり、福島第一原発での汚染水問題に対処するため、国内外の技術、知識および経験について情報を募集しました。これは汚染除去を支援する国際的な連携の確立へ向けた素晴らしい一歩です。エネルギー省国立研究所のスタッフは、収集した情報のIRIDによる精査を支援しています。

 東京電力と日本政府が汚染水という大きな問題に直面していることは知っていますが、東京電力が汚染水の問題に取り組みながら、他方で使用済み燃料の取り出しについても継続して努力しているという事実を見逃してはいけません。私は、東京電力が11月の半ばに4号機からの使用済み燃料の取り出しを開始すると理解しています。これは東京電力と日本政府にとって非常に大きな節目となり、廃炉プロセスで大きな意味を持つ一歩になります。

 原子力の安全と規制に関しては、福島第一原発の事故後、日本政府が新たに原子力規制委員会を設置したことを高く評価したいと思います。どのような原子力開発計画であっても、その安全性の確保のためには、独立した透明性のある規制当局が不可欠です。規制機関の独立性を実践・維持するために、皆で国の計画を継続的に検証することが重要です。米国がすでに学んだように、学んだ教訓を総合的な規制の枠組みに統合することが、対応措置の優先順位を適切に決め、長期的な持続可能性を確保するための安定したプロセスの次の一歩です。原子力規制委員会は、このような教訓を考慮に入れて、原発の運転再開の申請を審査していることが確認されています。

 米国では1979年にスリーマイル島で原発事故が発生し、この経験から多くのことを学びました。こうして教訓を学んだことで、国民が原子力を強く信頼するようになりました。日本でも原子力が同様の道をたどると、私は信じています。低炭素社会へ向けた義務を果たす方法についての判断は各国に委ねられることは承知していますが、原子力にはクリーンで信頼性の高いベースロード電源としての側面があることを見逃すことはできません。大統領が繰り返し強調するように、私たちは、全てのクリーンエネルギーを最大限活用し、炭素排出量を減少させる「包括的な」戦略を必要としています。すでに申し上げたとおり、大統領が原子力を「包括的な」戦略に含めていることは間違いありません。

 ここで不拡散について簡単に述べて、私の話を締めくくりたいと思います。日本と米国は共に、核兵器の拡散防止に取り組んでいます。核兵器不拡散条約の締結以来、両国は、効果的な地球規模の不拡散体制を構築し、北朝鮮、イラン、その他の国がもたらす問題に対処するために協力してきました。両国は、オバマ大統領の提唱した核セキュリティ・サミットの枠組みにおいて、国際的な基準の強化、核物質の安全性の向上、拡散またはテロリズムのリスクを生みかねない核物質の変換または処分について緊密に連携しています。

 日本は原子力の平和的利用を主導してきましたが、同様に、核兵器の拡散に反対する世界のリーダーでもあります。米国は今も、プルトニウムの分離と、消費または処分との間でバランスをとる必要があると考えます。原子力の不確実な将来のことを考え、この点について日本が直面する問題は認識しています。しかし、米国はプルトニウムの分離と消費のバランスという原則を日本が長期にわたり支持してきたことを歓迎してきましたし、この政策と一致する計画策定の重要性を強調したいと思います。

 日本はまた、原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)を批准することにより、指導的立場に立つことができます。日本がCSCを批准すれば同条約は発効し、福島での除染および廃炉への米国の民間企業の参加が促進されます。そして言うまでもなく、国際的な原子力市場での米国と日本の活動が促進されることになるでしょう。さらには、アジア太平洋地域および世界の他の諸国にとってリーダーとしての模範になるだけではなく、CSCを原子力損害に対する責任に関する国際的な規範として強化することにもなります。私は、他の多くの分野においても、日本と米国は基本的に足並みをそろえ、共に進んでいくと確信しています。

 締めくくりにあたり、米国がこの地域の多くの国、特に日本との間で長い歴史と深い関係を持つ太平洋国家であると、あらためて申し上げます。米国と日本のパートナーシップは、両国民の利益のために、今後も拡大を続け、繁栄するでしょう。私たちはパートナーとして、強固な関係、そしてエネルギー、環境、安全保障の分野の共通の利益を足掛かりに、両国のためにより良い将来を築くことができます。

 私たちは常に、単独ではなく協力して行動することで、より多くのことを達成できます。協力と対話を通じて最善の道を見出し、両国の強固な関係と、多様なエネルギー技術、環境、安全、安全保障の分野の共通の利益を足掛かりに、低炭素エネルギーの将来を築くことができます。そして共に、気候変動による壊滅的な影響を阻止するために努力していきます。 

 私たちに課された任務は簡単ではありませんが、これ以上に緊急かつ重要なことはありません。ありがとうございました。皆さんからご意見を伺い、質問にお答えしたいと思います。