オバマ大統領と安倍首相の日米首脳会談後の共同記者会見

*下記のオバマ大統領の発言および英語での質問は、英語のトランスクリプトを翻訳したものであり、正文は英文です。安倍首相の発言および日本語での質問は、在日米国大使館報道室で作成した日本語のトランスクリプトを掲載しました。

2014年4月24日、東京・赤坂迎賓館

安倍首相 国賓として来日したバラク・オバマ大統領に対して、日本国民を代表して心から歓迎の意を表したいと思います。バラクと私がホワイトハウスで初めて会ったのは昨年の2月になります。ありとあらゆるテーマについて忌憚(きたん)なく話し合い、私たちが同じ問題意識を持ち、同じ目的をシェアしていることを確認いたしました。

 日米同盟は力強く復活をいたしました。そのことを内外に示すことができた会談でありました。あの時バラクはこう語ってくれました。「アジア太平洋地域に大きな経済圏をつくることは、日本にとっても、アメリカにとっても、他のアジアの国々にとっても、大きな利益になる」と。

 まさにTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は国家百年の計。そしてバラクとの真摯(しんし)なやりとりの結果、日本はTPP交渉への参加という次なるステージに移ることができました。あれから一年程が経過し、今や日本は米国と共に、TPP交渉を大きくリードしています。今回の日米首脳会談を一つの節目として、日米間の懸案を解決すべく、甘利大臣とフロマン通商代表の間で精力的、かつ真摯な交渉を継続することとしました。

 私とバラクから両閣僚に対し、残された作業を決着させ、TPP交渉全体を早期に妥結させるよう指示を出しました。これから今日この後も、両閣僚で交渉が続けられます。従って共同声明の発表は、その結果を見て適切に行うことといたします。

 日本と米国は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった、基本的価値を共有し、そして戦略的利益を共有するグローバルなパートナーであります。そのパートナーシップを有する両国の強固な日米同盟は、アジア太平洋地域の平和と繁栄の礎となっています。日本が掲げる積極的平和主義と、米国の進めるアジア太平洋重視政策は、共に地域の平和と安定に貢献するものであり、互いに評価し、歓迎しました。そしてその上で今回、バラクとの間で平和で繁栄するアジア太平洋を確実にするための日米同盟の主導的役割を確認することができたことを申し上げたいと思います。

 安全保障に関しては日米防衛ガイドラインの見直しをはじめ、幅広い安全保障防衛協力を推進していくことで一致いたしました。在日米軍再編については在沖縄海兵隊のグアム移転や、普天間飛行場の移設を含め、着実に進めていく、その決意をお互いに改めて確認し合いました。

 普天間飛行場の5年以内の運用停止をはじめ、仲井真沖縄県知事からの要望についても私からオバマ大統領に説明をし、沖縄の負担軽減に向けて、米国のさらなる協力を要請いたしました。

 国際社会が直面している諸課題についても胸襟を開いてバラクと話し合いを行いました。ウクライナ情勢については、力を背景とする現状変更は許されないことをあらためて確認し、ウクライナ支援の重要性と、引き続き日本やG7で連携していくことで一致いたしました。

 中国については法の支配に基づいて自由で開かれたアジア太平洋地域を発展させ、そこに中国を関与させていくため連携していくことで合意いたしました。そして力による現状変更の動きに対しては、明確に反対していくことで、一致いたしました。今後とも対中政策に関して、日米で緊密に連携していくことも確認しました。

 北朝鮮問題に関しては引き続き、日米韓3カ国の連携が重要であることを確認いたしました。また、今回バラクが横田さん夫妻と飯塚さんと対話する時間をつくってくれましたが、首脳会談でも私から拉致問題の解決に向けて引き続き理解と協力を要請し、大統領から支持を表明していただきました。

 さて、ケネディ大使とは今月すでに3度にわたってご一緒させていただきました。宇宙、そしてリニア、さらに文化交流、日米の協力関係がいかに幅広いかを物語るものであります。首脳会談では米国へのマグレブ技術の導入について私からあらためて提案をいたしました。エネルギー協力についても意見交換を行いました。そして女性の輝く世界の実現をはじめ、グローバルな課題に協力して取り組んでいくことで合意をいたしました。

 今や日米友好の象徴的な絆として大活躍されているケネディ大使ともさらに緊密な連携を取りながら、日米の協力関係を一層深めていきたいと考えております。

 日米同盟の今後の発展を支えるのは両国の若者たちです。若者たちの交流を一層強化するため、今年度6000人の留学生を米国に送るプランを伝え、大統領も高く評価してくれました。日米同盟はかつてないほど盤石であります。

 バラク、あなたは昨夜のおすしを、人生の中で一番おいしかったと評価していただきました。私たちは胸襟を開いて、一時間半にわたり日本とアメリカの課題、世界の課題について語り合いました。それは日米の絆と役割を確認し、日米関係のさらなる可能性について語り合う、非常に充実した時間でありました。私にとっても昨夜のすしがこれまでの人生の中で一番おいしく食べることができたおすしであったということは、間違いありません。

 ぜひバラクと私で、これまでで一番良好な日米関係を築いていきたいと思います。私からは以上です。ありがとうございました。

オバマ大統領 コンニチハ。安倍首相の温かい言葉と歓迎に感謝します。また昨日は飛びぬけておいしいすしと日本酒をごちそうになり、ありがとうございました。再び日本を訪れることができて、うれしく思っています。今回は、私の大統領としての3回目の訪日です。米国大統領としておよそ20年ぶりに国賓として日本を訪問していることを、大変名誉に思います。また午前中には、天皇、皇后両陛下から丁重な歓迎を受けたことに、心より感謝しております。そして今回も、日本の皆さんの心温まる「おもてなし」に感じ入っております。

 これまでに何度も申し上げてきましたが、米国が太平洋国家であることは、現在も、そしてこれからも変わることはありません。米国の安全保障と繁栄は、太平洋地域の将来と切り離せないものであり、だからこそアジア太平洋地域で米国の指導力を回復することを優先して取り組む課題としました。また米国の戦略の基盤、そしてこの地域の安全保障と経済発展の土台となっているのが、日米同盟をはじめとする、歴史的な条約に基づく同盟です。

 安倍首相、日米同盟に対する並々ならぬ深い関与にお礼を申し上げます。日米同盟は近年、一層強固になっています。首相のリーダーシップの下、日本は世界各地の平和と安全保障により大きく貢献しようとしており、米国はこれを大いに歓迎します。

 昨夜、首相と私は幅広い問題について有意義な議論をし、安全保障分野での協力を引き続き深化することで合意しました。我々は沖縄をはじめ、この地域に駐留する米軍の再編に向け継続的に前進し、米軍基地が地域社会へ与える影響を軽減させます。米国は太平洋地域における防衛態勢を近代化しており、在日米軍は最新鋭の軍事能力を備えることになります。

 日米は協力して、海事問題などの太平洋地域における紛争が、対話によって平和的に解決されるよう呼びかけます。両国は、航行の自由および国際法の尊重などの基本原則を守る立場を共有しています。繰り返しますが、日本の安全保障に関する米国の条約上の義務に疑問の余地はなく、(日米安全保障条約)第5条は尖閣諸島を含む日本の施政下にあるすべての領域に適用されます。

 日米両国は韓国と共に、平和的手段による朝鮮半島の非核化の実現を決意しており、北朝鮮の挑発行為に対して断固たる措置を取ります。米国は、北朝鮮による日本人の拉致という悲劇を解決しようと努力する日本を支持します。

 日本と米国は北東アジアだけでなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国とも、経済、外交、安全保障面での連携を強化するために協力しています。昨年台風の被害を受けたフィリピンへの救援隊の共同派遣から、ロシアのウクライナへの軍事介入に対する協調対応まで、グローバルパートナーとしての協力を深化させています。

 我々はTPPで重要な進展をみました。TPPは米国の雇用と経済成長を支えるだけでなく、日本経済の改革と再生を促します。自動車や農業などの問題では、合意に近づいています。私は、米国の製造業者や農家が、日本の市場をはじめ、TPPに含まれる市場への意味のあるアクセスを得る必要があると、非常に明確かつ率直に申し上げてきました。TPPが米国にとって、米国の労働者、消費者そして家庭にとって有益な協定となるには、そうした意味のあるアクセスが必要です。私にとって肝心なのはこの点ですから、これを満たさないものは何であれ、受け入れられません。

 同時に、安倍首相は日本経済の再生に取り組んでおり、TPPはそれに不可欠です。かねてから安倍首相に伝えてきたように、日本には、今世紀のアジア太平洋地域で重要な指導的役割を果たす機会があり、そのひとつの手段がTPPです。ですから今こそ、包括的合意に必要な、大胆な措置を取るときであり、私は今も、合意できると確信しています。

 両国が、すべての国民の能力を生かせるようになれば、さらに繁栄できることも合わせて申し上げます。ですから、首相が女性の雇用促進に取り組んでいることは称賛に値します。また日米の経済の安全保障はエネルギー安全保障に依存しているため、両国は、グローバル経済を推進する一方で気候変動対策にもなりうる、化石燃料に替わるクリーンで効率的な代替エネルギーに関し、国内外で引き続き協力していきます。

 最後に、日米の国民、とりわけ私がこれから会うことになっている日本人学生のような若者同士の素晴らしい関係を、引き続き深化させることをうれしく思います。そして、渡米して、英語力を磨き、米国の企業や組織で働く貴重な体験をする日本人学生の数を一層増やす一助となる新しいプログラムを発足させることを、ここで発表します。これは、2020年までに学生同士の交流を倍増させる取り組みの一環であり、こうした若者同士の絆により両国の距離が将来、さらに縮まることになります。

 安倍首相、首相の友情とパートナーシップ、そして共に前進を成し遂げたことに感謝いたします。首相と日本の皆さんに対し、日本がこのように素晴らしい同盟国でいてくれることを感謝したいと思います。日米が力を合わせれば、必ず素晴らしいことを成し遂げられるでしょう。それでは、日本流にこう言いましょう。ガンバロウ。ありがとうございました。

 幹事社をしています朝日新聞の益満と申します。よろしくお願いします。私からは安全保障についてお伺いします。まず安倍総理にお伺いします。オバマ大統領はですね、今、尖閣諸島の防衛について、日米安全保障条約に基づく防衛義務について明言をされました。安倍総理の受け止めをお聞かせください。もうひとつ、集団的自衛権について、会談の中でどのようなご説明をされたでしょうか。認められたのかどうか教えてください。

 オバマ大統領にお伺いします。今おっしゃられた日米安保条約に基づく尖閣諸島の防衛義務、これは大統領としてはアメリカ大統領としては初めての言及になります。なぜここで言及されたのか、その趣旨、意味を教えてください。よろしくお願いします。

安倍首相 オバマ大統領との会談を通じまして、先ほど大統領からも冒頭の発言があったとおりでありますが、日米安全保障条約の下でのコミットメントを果たすため、全ての必要な能力を提供している。このコミットメントは尖閣諸島を含め、日本の施政下にある全ての領域に及ぶ。米国は尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも反対するとの考えで一致をいたしました。

 また集団的自衛権の行使については、現在日本において安全保障の法的基盤を整備するための議論を行っていること、そしてそれは日本や地域の平和と安定のために、さらにはまた日米同盟を有効に機能させ、地域の平和と安定に貢献、そして寄与できるようにするために検討を行っているという説明をしたところでありますが、この日本の検討について、日本が検討を行っていることについて、歓迎し、支持するとの立場がオバマ大統領より示されました。

オバマ大統領 米国の立場は新しいものではありません。ヘーゲル国防長官が来日したときにも、ケリー国務長官が来日したときにも、2人とも米国の一貫した立場を示しました。米国は、尖閣諸島の領有権に関する最終的な決定については、特定の立場を取っていませんが、尖閣諸島は歴史的に日本の施政下にあり、それが一方的に変更されることがあってはならないと確信しています。そして日米同盟で一貫しているのは、安保条約が日本の施政下にあるすべての領域に適用されるという点です。これはずっと一貫しており、新しい立場ではありません。

 私は安倍首相との会談で、この問題を平和的に解決すること、つまり状況を悪化させることなく、大げさな表現は使わず、挑発的行動を取らず、日本と中国が協力できる方法を見つけることが重要であると強調しました。より重要な主張をしたいと思います。我々は中国と強固な関係にあります。そして中国は、この地域のみならず、世界にとって大変重要な国です。

 当然のことですが、我々は、巨大な人口を抱え、経済成長を続けている中国の平和的な台頭を今後も促していきたいと思います。私は、貿易や開発、気候変動などの共通の問題への取り組みで、中国と協力する非常に大きな機会があると考えています。しかし、私がこれまで、そして今回の訪問でも強調し続けるのは、私たち全員に、基本的な規則や国際秩序の維持に努め、大国も小国もすべての国が、公正かつ公平とみなされるものに従い、紛争を平和的に解決する責任があるという点です。

 このメッセージを私は直接中国に伝えてきました。これは中国の繁栄と相容れないものではありません。他に可能性としては、米国や中国、あるいはロシアなどの大国が、自国にとって好都合と思われる場合には、小国に不利益となる行動を取ってもいいと考える状況がありますが、それでは長期的に安定し、繁栄する、安全な世界は望めません。

 そのために、我々は国際秩序を重視しており、それは海事問題をはじめとするさまざまな問題に当てはまります。この地域で我々は、一片の土地や特定の岩礁の領有権についてはいかなる立場も取らないが、こうした紛争を解決するために、すべての国が基本的な国際手続きに従うように働きかけるという点では、態度を明確にしています。そしてこのような地域で、中国が米国や他の国々と関与を継続することを望んでいます。それが実現すれば、中国が繁栄するのみならず、中国と日本、中国とベトナム、そして中国とフィリピンが協力する大きな可能性があると思います。そしてこうした協力が地域の人々に利益をもたらします。

カーニー大統領報道官 次はCNNのジム・アコスタさんの質問です。

 大統領、ありがとうございます。首相、ありがとうございます。大統領、尖閣諸島について間違いなく理解したか確認させてください。大統領が言っているのは、中国が尖閣諸島に何らかの軍事侵攻を行った場合、米国が尖閣諸島を守るために軍事力の行使を考慮する、ということですか。これは、大統領が何らかの措置を取らなければならなくなるかもしれない(踏み越えてはならない)レッドラインを再び引くことにはならないのですか。シリアやロシアの場合と同様、米国と大統領に対する信頼が再び揺らぐことになりませんか。もうひとつの重要な安全保障問題である北朝鮮についても、安倍首相との会談で触れたそうですが、大統領は北朝鮮に対し、再度核実験を実施してはならないという警告を発しているのですか。

 安倍首相への質問です。米国と欧州諸国がロシアのウクライナ侵攻を阻止できなかったという状況で、日本の安全保障に対するオバマ大統領の保証を信頼できますか。ありがとうございます。

オバマ大統領 ジム、質問には多くの仮定が含まれていて、中には私が同意できないものもあるので、それぞれ個別に答えましょう。

 まず、日米安保条約の締結は私が生まれる前なのですから、私がレッドラインを設定しているわけでないことは明らかです。日米同盟の条項について歴代政権が標準としてきた解釈であり、日本の施政下にある領域は条約の対象とされています。米国の立場に変わっていません。「レッドライン」も引かれていません。米国は条約を適用しているだけです。

 同時に、首相にも直接言いましたが、この問題をめぐって、日中間で対話と信頼構築ではなく、事態を悪化させる行為を続けることは、大きな誤りです。米国は対話と信頼構築を外交手段により促進するために、できる限りのことをします。

 ジム、あなたが指摘したその他の問題、米国の立場についてですが、各国は国際法を順守しなければならず、子どもたちに向けて毒ガスを発射したり、他国の領土に侵入することは、こうした法、規定、規範に対する違反であるというのが、米国の立場です。この質問が意味するところは、ある国がこうした規範に違反するたびに、米国は戦争に踏み切る、あるいは軍事的関与への準備を整えるべきであり、そうしないのは、米国が本気で規範を尊重していないということでしょうか。だとすれば、それは間違いです。

 現時点で、重大な化学兵器の87%がすでにシリアから撤去されました。約13%が残っています。これが米国のリーダーシップがもたらした結果です。これを成し遂げるためにミサイルを発射する必要がなかったという事実は、国際規範の順守に失敗したということではありません。成功したのです。ただし残りの13%を撤去するまでは、完全に成功したことにはなりません。

 ロシアとウクライナに関して我々は、ウクライナの問題で軍事的解決はありえないことを非常に明確に打ち出してきました。すでにロシア経済に影響を与える制裁を発動しており、この問題を外交的に解決できるという見通しを今も持っています。ジュネーブでの協議後に、ロシアがより賢明な方向に進む可能性も若干ありました。少なくとも今までのところ、ロシアがジュネーブでの合意の精神あるいは文言を順守しているとは思えません。逆に、民兵や武装した人々が建物を占拠し、彼らに反対する人々を攻撃し、地域の安定を揺るがしており、ロシアがさらに力を入れてそれをやめさせようとしている様子は見られません。

 その反面、キエフのウクライナ政府は、ジュネーブで協議された内容に沿って、恩赦法の制定や、憲法に関する多岐にわたる改革を提示するなど、非常に具体的な措置を取っています。私の予測するところでは、ロシアが再び、ジュネーブで協議された合意の精神ならびに文言の順守を怠ったならば、さらに重大な結果を招くことになり、制裁が追加されるであろうと予測しています。

 それで、問題が直ちに解決されるわけではありません。これは難しい問題です。しかし我々は、何を支持し、何を信じているかを明確にしようとしており、こうした価値観や規範、理想のために積極的に行動します。

 北朝鮮についてはどうですか。

オバマ大統領 質問は何でしたか。

 北朝鮮が核実験を行わないように警告が行われていますか。

オバマ大統領 北朝鮮は過去数十年の間、挑発的行動を取り続けています。過去数十年間、国際舞台で無責任な振る舞いを続けています。その間の北朝鮮に対する私たちのメッセージは一貫しています。北朝鮮は世界で最も孤立した国家です。世界中でこれほど、国際的な制裁と糾弾の的となっている国は他にありません。その結果、北朝鮮国民は世界中のどの国民より苦しんでいるのです。

 我々が言ってきたのは、北朝鮮が真剣に普通の国になろうとするなら、その行動を改めなければならない、ということです。朝鮮半島の非核化という基本原則がその第一歩です。

 では、近々北朝鮮の姿勢が戦略面で大きく変化をすると考えるほど、私は楽観的でしょうか。恐らくそうならないでしょう。しかし、日本と協力し、韓国と協力し、そして中国や地域の関係各国・地域と協力して、北朝鮮により大きな圧力をかけ続ければ、ある時点で北朝鮮が路線変更をするという確信はあります。

 その一方で、北朝鮮は危険であり、手に余るようないかなる挑発行為も起こさせないように警戒しなくてはなりません。これは、日米同盟、そして集団的自衛が重要である理由のひとつです。とは言え、北朝鮮が無責任な振る舞いをしても我々は驚きません。それが過去数十年の北朝鮮のやり方だからです。我々に必要なのは、こうした行為から生じる潜在的な危険を封じ込め、緩和する努力を続けることであり、北朝鮮に圧力をかけ続け、北朝鮮の変化を実現することです。

 そして北朝鮮の進路を変えさせるには、中国の参加も非常に重要です。中国には、そのチャンスがあるだけでなく、何世代も続く対立と、アジア太平洋地域全域で最も安定を脅かす危険な状況を平和的に解決することについて、安全保障だけにとどまらない広範にわたる利益があるからです。

安倍首相 まず最初に申し上げたいことは、かけがえのない日米同盟は揺るぎないということでありまして、このアジア太平洋地域を平和で安定した地域にするためにも、この日米同盟関係の強化は極めて有益である、そして、この日米同盟関係を強化させていくことに対するオバマ大統領の情熱を私は信じておりますし、大統領の情熱そして米国を我々は信頼をしているわけであります。

 そして今日の首脳会談において、その信頼はますます強くなったということは申し上げておきたいと思いますし、そしてまたこの日米同盟関係を強化させていくということはですね、他の国に対して圧力をかけるとか、他の国に脅威を与えることではないということでありまして、それはまさに地域の平和と安定を強化し、そしてこの地域を、法律を、法を尊ぶ地域にする、力による、力を背景とした現状変更は許さず、人々が望んでいる法を尊ぶ平和な地域にする上においてですね、日米同盟の強化が極めて重要であるということでありまして、このことについて私は完全にオバマ大統領を信頼をしているわけであります。

 今、記者が言及をされましたウクライナの問題についてでありますが、まさに先般ハーグで開催されたG7におきましても、オバマ大統領のリーダーシップによりですね、まさにG7は一致してこの現在のロシアによる国際法違反であるクリミア併合は許さないという強いメッセージを出すことができたと考えているわけでありまして、ロシアに対して我々は今後ともですね、この問題を解決すべくですね、正しいメッセージをオバマ大統領のリーダーシップの下に出していきたいと、こう考えているわけであります。

 また北朝鮮についても、彼らが今とっている政策を変更しない限り、北朝鮮の国民の未来はないんだということを理解させる必要があるんだろうと思います。そのための圧力は国際社会が協力して行っていく、取っていく、そして重要な鍵を握っているのは中国でありますが、中国に対しても日米韓が協力をしてその影響力を行使するように促していきたいと、このように思います。

 このアジア太平洋地域の問題については特にそうでありますが、国際社会全体におきましてもさまざまな課題において日米同盟がしっかりと強力な絆を持ちながら協力してですね、解決に貢献をしていきたいと、このように思っております。

 テレビ朝日の足立と申します。TPPについてお二人にお伺いしたいと思います。まず安倍総理になんですけども、TPPについて継続協議というふうに伺いましたけれども、現時点では具体的にどこまで進展して何が今残された課題なのでしょうか。また国会ではですね、重要5品目について段階的な関税撤廃も認めないと、このように決議しているんですが、総理はこうした状況の中で合意にこぎつけられるとお考えでしょうか。

 そしてオバマ大統領に伺います。日本側はコメや麦のほか牛肉とか豚肉についても関税を引き下げることに慎重です。そういった事態をどのように見ていますでしょうか。日米合意に向けて農産品の関税は具体的にどのように妥結するのが望ましいとオバマ大統領はお考えでしょうか。以上です。

安倍首相 TPPはですね、成長センターであるアジア太平洋地域にひとつの大きな経済圏をつくり、そして自由民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々と新たなルールをつくり上げるものでありまして、21世紀型の新たな経済圏をつくっていこうというものであります。この地域にとって、地域全体にとって、戦略的に極めて重要であるという認識においては、オバマ大統領と完全に一致をしているわけであります。

 今後残された課題を早急に克服をして、TPP交渉全体の妥結に向けて一致協力してさらなるリーダーシップを発揮することが、私とオバマ大統領に課せられた責任であろうと、このように思いますし、まさに大きな観点からオバマ大統領と共にですね、判断をしていきたいと考えています。わが国としては国会決議があります。この国会決議をしっかりと受け止めまして、国益にかなう最善の道を求めて行く中で、なんとか良い形で交渉全体の妥結を目指していきたいと思います。

オバマ大統領 ここでは、交渉の詳細は交渉官に譲ります。日本側に与えられてきた米国の消費者市場へのアクセスと比べて、日本経済の一部の分野、すなわち農業と自動車部門では、歴史的に市場アクセスが制限されてきたと言っていいと思います。これは、すべての人々がよく知っており、いつかは解決されるべき問題です。そして今が、その「いつか」であると確信しています。

 日本は引き続き世界で最も経済力のある国のひとつですが、過去20年で経済成長と技術革新が失速しており、この新しい世紀において日本が前進を望むのであれば、改革を断行する必要があることを、安倍首相は果敢にも、認めています。そしてすでにいくつかの改革に着手しています。

 TPPはそうした改革と矛盾しません。安倍首相が言ったように、TPPには戦略的な重要性があります。なぜなら私たちは今、世界でも最も成長著しい地域の経済環境を、今年や来年という期間ではなく、今後20年間を見据えて構築しようとしているからです。どのようなルールが適用されるのか―公正かつ透明性の高いやり方で事業を営むのか、知的財産権は尊重されるのか、市場に自由にアクセスできるのか、実際に各国は貿易を拡大し、その結果、雇用と国民はの繁栄を促進することができるのか―といった多くのことが、今まさに私たちが行おうとしている選択と決断によって決まります。TPPは、これらを実現するチャンスなのです。

 どのような貿易協議にも必ず政治的に微妙な問題が存在します。安倍首相には安倍首相の、私には私の、対処すべき政治的課題があります。例えば、連邦議会は近年、韓国をはじめ世界のさまざまな国との間の自由貿易協定を可決させてきましたが、これは、互恵主義と、今ある障壁を撤廃することで、いずれの国の貿易も拡大し、さらなる経済成長が可能であるという概念に基づいています。

 TPPにはより多くの国が参加しているので、さらに困難です。しかし私は、米国の企業が自由に新しいものを取り入れ、競争し、米国製の製品やサービスを売ることが可能で、米国の知的財産が保護されるアジア太平洋地域を実現することが、究極的には米国の利益にかなうという論理に基づいて、TPPを推し進めています。またこれにより米国内で雇用が増加すると考えています。そして国が一層繁栄することになります。しかも、これで誰もが利益を受けることができます。なぜなら米国だけでなく、日本にも、マレーシアにも、ベトナムにも、そして交渉に参加しているどの国にとっても同じことが言えるからです。

 しかし、そのためには、短期的にすべての国が、それぞれの居心地のいい場所から踏み出さなくてはならないし、自国の市場へのアクセスを提供しなければ、他の市場にアクセスすることを期待してはならないのです。そして時には、有権者や支持者に対しても、今の居心地のいい場所から一歩外に踏み出せるように、後押しする必要があります。なぜなら、それが最終的にはすべての人にとってより大きな利益を実現することになるからです。

カーニー報道官 最後の質問はAPのジュリー・ペースさんからです。

 ウクライナの状況に話を戻します。大統領は、ロシアは今のところジュネーブ合意を守っていないとおっしゃいましたが、追加制裁を科す決断はまだしていないと示唆しているように見受けられました。ですから、まず、追加制裁の決定をしたのか、まだなのか、教えていただけますか。まだだとしたら、何を根拠に、追加制裁の決定をしないことで、ロシアのもくろみを変えられるかもしれないと考えるのですか。ロシアは、ジュネーブ合意を先延ばしの口実にして、軍事的選択肢を取るか、あるいは5月のウクライナの大統領選挙に影響力を行使するかを天秤にかけているのではないでしょうか。

 安倍首相への質問です。アジアには、地域の緊張と不安定の大きな原因となっている歴史論争があります。そうした緊張をさらに悪化させることになりかねない再度の靖国参拝など、扇動的な言動を避けるために、首相をはじめとするアジア各国のリーダーたちにはどのような責任があるとお考えですか。ありがとうございます。

オバマ大統領 ジュリー、我々は一貫して、ジュネーブでの約束が果たされない場合に備えてきました。協議が終了した日に、どれくらい希望を持っているか聞かれたとき、約束を遂行できるかどうかについて過度に楽観していないと答えたことを思い出してもらえると思います。つまり、追加制裁を行わなければならなくなることも見越して準備をしてきたということです。準備は整っています。

 ただし、これには専門的な作業と他の国々との調整が必要です。まだ追加制裁を発表していないからと言って、準備が整っていないということではありません。追加制裁を発動するときがきたら、最初にAPに知らせます。

 約束は必ず守っていただきますよ。

オバマ大統領 このプロセスを通じて、プーチン氏のもくろみを変えさせることが、私たちの目標であると強調すること、そしてこの問題は外交手段による解決が望ましいと強調することが重要です。また制裁で一番困るのはロシアですが、グローバル経済にも混乱をきたします。ですから、ロシア語を母語とする人々を含むすべてのウクライナ人の権利を守る交渉に真剣に望み、もともとプーチン氏が最も重視していた方法で地方分権を進める用意がウクライナ政府にあることをロシアが認識すれば、追加制裁は必要ないと強調することも重要です。

 少なくとも今のところ、ロシアが選んだ道は賢明とは言えません。中長期的には、ウクライナと同じくロシアも損害を被ることになります。すでに、外国人投資家がロシアを信頼できる投資先と見なさなくなり、巨額の資金と多くの投資家がロシアを離れています。ロシアは経済の改革と多様化の必要に迫られています。ロシアにとって主要な収入源である化石燃料に対する世界各国の依存度がますます低下しているからです。現在ウクライナで決められようとしていることは、このプロセスを促進するものではなく、阻害するものです。

 私は、追加制裁がプーチン氏のもくろみを変えることにつながらないかもしれないことを理解しています。その可能性はあります。制裁がプーチン氏の方針転換にどれほど効果を発揮するかは、米国の制裁だけでなく、他の国々と協力できるかどうかに左右されます。それだけに、このプロセスの段階ごとに、外交手段による大変な根回しが必要なのです。

 安倍首相との会談でも、欧州の首脳らとの会談においても、米国が単独でできることもあるけれど、最終的には共同で取り組むことになると私は一貫して主張しています。ですから、我々が準備を整える一方で、追加制裁を科すたびにすべての関係国と協議することが重要なのです。

 確認したいのですが。

オバマ大統領 どうぞ。

 追加制裁についてすでに決断は下したけれど、法律上の手続きを待たねばならないということですか。それとも、追加制裁についてまだ決断していないのですか。

オバマ大統領 私が言っているのは、追加制裁を科す可能性に向けて準備をしてきたことと、その背景には法律上の問題が数多くあること、また明日かあさってかわかりませんが、ロシアが方針変換をして、異なる手法を取る可能性は常にある、ということです。異なる手法とは、ロシアは自らがジュネーブで述べたことを信じており、ウクライナ南部と東部で建物を占拠している者に退去を呼びかけ、ウクライナ政府が(退去者に対し)恩赦の措置を取る意思を明確にすることで、退去が促進されると明言することです。また欧州安全保障協力機構(OSCE)の監視団の派遣を認め、ウクライナ国民が自ら決定することができるような選挙のプロセスを支援すると明言することです。劇的な転換が求められているのではありません。必要なのは、少なくともつい先週合意したばかりの、合意文書にある措置を取ることなのです。

 ロシアがそのような行動を取ると私が思っているのか、ですか。今のところ、希望が持てるような根拠はありません。今週の初めにも言った通り、これは何週間もかかるようなことではなく、数日でできることです。ロシアがしっかりと合意に従わないのであれば、私たちは、公言したことを実行することになり、その代償は、ロシア国民が支払うことになるのです。

安倍首相 まず私の歴史に対する基本的な考え方は、政治家は歴史に対してつねに謙虚でなければいけないということであります。日本は70年前の先の大戦、終戦した時に、我々は多くの人々、特にアジアの人々に多大な損害と苦痛を与えたことを反省し、そして戦後の歩みを始めたわけであります。70年間ひたすら平和国家としての歩みを進んできたのが日本であり、日本人でもあります。

 そしてその考え方のもとで、日本はまだ貧しい時代からアジアの国々の発展に貢献すべく最大限の努力を積み重ねてきたところでございまして、多くのアジアの国々からは日本のその歩みを評価されていると思います。そして安倍政権におきましても、歴代の日本の政権と全く考え方に変わりがあるわけではありません。昨年末の私の靖国神社への訪問については、国のために戦い、傷つき倒れた方々に対して、手をあわせ、そしてご冥福をお祈りするためでもあります。そしてそれは世界の多くのリーダーに共通する姿勢ではないかと考えます。そしてまた私は同時に、靖国神社の中にある鎮霊社という社にお参りをいたしました。このことはあまり報道されていないのでありますが、この鎮霊社には世界中の戦没者の霊が祭られているところでございまして、その鎮霊社にお参りをいたしまして、二度と人々が戦火で苦しむことのない世界をつくっていくとの決意の下に、不戦の誓いをしたところでございます。

 こうした考え方を私は参拝をした際、総理の談話として発出したところでございますが、この私の基本的な考え方についてこれからも説明し、理解を得る努力を積み重ねていきたいと、このように思います。日本は戦後、自由で民主的な国をつくるために努力をし、汗を流してきたわけであります。人権を尊重し、そして法の支配を尊ぶ国をつくってきたわけでございまして、さらに日本だけではなく世界においてもそういう地域を少しでも増やしていくべくですね、努力を重ねていきたいと、思うわけでございます。

 平和で繁栄した世界をつくっていくために、貢献をしていくことによってですね、多くの国々の人々の理解を得ていきたいと、このように思っております。