信仰の自由に関する国際報告書(2013年版)―日本に関する部分

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

国務省民主主義・人権・労働局

2014年7月28日発表

エグゼクティブ・サマリー

  日本国憲法、その他の法および政策は信仰(信教)の自由を保護しており、政府は実際に、信仰の自由をおおむね尊重した。

  宗教的な帰属、信条、または実践に基づく、社会的な侵害または差別に関する報告があった。

  米国政府は、信仰の自由の状況を注意深く観察し、少数派宗教団体および非政府組織(NGO)に接触し、信仰の自由に関して日本政府と話し合った。

第1節 宗教統計

  米国政府は、日本の総人口を1億2720万人と推計している(2013年7月の推計)。日本政府は宗教団体に対し信者数の報告を義務付けていない。従って、各宗教の信者数を把握することは困難である。文化庁の2011年の報告によると、各宗教団体の報告による信者数は、合計1億9600万人であった。この数字は日本の総人口よりも大幅に多く、日本国民の多くが複数の宗教を信仰していることを反映している。例えば、多くの日本人は仏教と神道の両方を信仰している(神道は日本民族固有の宗教である)。

  文化庁の2011年の統計によると、信者数は、神道が1億人、仏教が8400万人、キリスト教が190万人、その他の宗教が900万人いる。「その他」の宗教には、イスラム教、バハーイー教、ヒンズー教、およびユダヤ教が含まれる。

  宗教的な帰属と民族性、政治的立場、または社会経済的地位との間に、有意な相関関係はない。社会は民族的にも宗教的にも、比較的同質である。主に精霊信仰を実践している先住民のアイヌは、かつて本州北部および北海道に集中していたが、現在は多くが首都圏に居住している。ほとんどの移住者や外国人労働者は、仏教または神道以外の宗教を実践している。

第2節 政府による信仰の自由の尊重の現状

法的・政策的枠組み

  日本国憲法、その他の法および政策は、おおむね信仰の自由を保護している。

  文化庁によると、約18万2000団体が、国および都道府県により、宗教法人として認証されている。その数の多さは、宗教団体の地方組織が個別に登録していることを反映している。政府は、宗教団体の登録または認証申請を義務付けてはいないが、認証された宗教法人には税制面の利点がある。

  法により、認証を受けた宗教団体を監督するためのある程度の権限が、政府に与えられている。また法により、認証された宗教団体に、資産を政府に開示することが義務付けられ、政府には、営利活動に関する規定に違反している疑いがある場合に調査を行う権限が与えられている。宗教団体がこうした規定に違反した場合、当局は当該団体の営利活動を停止する権限を持つ。

政府による実践

  政府は、法輪功(法輪大法とも呼ばれる)の中国人学習者に、人道的配慮による一時的な保護の地位を付与したが、2013年に、この地位を与えられず、入国管理局に送られた学習者が1人いた。この人道的配慮による一時的な地位により、法輪功学習者は日本国内にとどまり、日本政府が発行した渡航書類を利用して海外に渡航することができた。

  政府は、ビルマでの民族的・宗教的迫害を恐れて来日した47人のイスラム教徒ロヒンギャ族を難民と認定しなかった。これらのロヒンギャ族のほとんどは日本に5年以上居住しており、中には15年以上居住している者もいた。報告によれば、日本に不法入国し、公式の再定住プログラムに参加していない者もいた。政府は、ロヒンギャ族に対し、難民認定を行わず、短期滞在ビザを発給した。このビザは頻繁に更新する必要があった。また短期滞在の地位には、ある程度の国外退去の法的リスクが伴ったが、ビルマに国外退去させられた者はいなかった。

第3節 社会による信仰の自由の尊重の現状

  宗教的な帰属、信条、または実践に基づく、社会的な侵害または差別に関する報告があった。

  統一教会の会員に対するディプログラミングの報告件数は、1990年代以降、大幅に減少したが、NGOの「国境なき人権」は、同教会会員の拉致とディプログラミングが継続して発生していると述べた。統一教会は、同教会の会員が拉致された事例を3件報告した。会員が「行方不明」になった後、統一教会の会員が行方不明となった会員の家族の家を訪れ、警察に通報した。その後、3人の会員は全員、再び姿を現し、統一教会からの脱会を同教会に通告した。

  統一教会は、カルト団体に入会しないよう学生に警告することを目的とする「カルト防止」ワークショップで、特定の大学が同教会を不当に標的にしていると主張した。一方で、統一教会の代表は、大学がワークショップで同教会を名指しすることはなく、その理由はおそらく同教会が日本全国の学術機関に対して一連の訴訟を提起したためとみられると述べた。統一教会の代表はまた、正体を秘匿して勧誘を行っているという批判に対し、同教会は名前を隠した勧誘活動を1992年に中止したと述べたが、これを第三者により確認することはできなかった。

 千葉大学の理事でもあった教授が、10人の学生に信仰について質問し、統一教会系の学生組織から脱会するよう求めたことから、統一教会は1月に同大学に対し調停を申し立てた。統一教会は損害賠償を認められ、この教授は4月に辞職した。

  警察庁は、テレマーケティングやマルチ商法を含む販売手法に関する法の違反、ならびに医薬品の製造および流通に関する法の違反による過去の逮捕事案を挙げ、犯罪の可能性がある活動について統一教会を監視したと述べた。警察はまた、不法侵入およびストーカー行為の個別事案を報告し、強制献金の可能性について監視していると述べた。統一教会の元会員が、献金を強制されたと申し立て、同教会に対し3250万円(30万9494ドル)の返還を求める民事訴訟を起こした。

  社会は、法輪功学習者が自由に修練する権利をおおむね支持したが、在日中国大使館が、法輪功学習者を差別するよう日本の組織に働きかける運動をしたとの報告があった。法輪功学習者は、大手新聞社が法輪功の活動についての広告料金を引き上げた、または広告料金に対する標準的な割引率を適用しなかったと主張した。

  2013年には宗教の違いを超えた意義深い取り組みが継続された。異宗教の団体から成るNGOの日本宗教連盟は、宗教文化と宗教間の調和を促進した。9月には「第40回平和のための宗教者研究集会」を開催し、平和の推進に尽力する全世界の宗教の代表で構成される世界規模の連合組織の日本支部である世界宗教者会議日本委員会の役員および賛助会員ら100人以上が参加した。この集会では、宗教間対話の必要性が強調され、異なる宗教が共有する信条が明らかになった。イスラミックセンター・ジャパンのメンバーは、引き続き教会で講演し、キリスト教徒、ユダヤ教徒、仏教徒と共に宗教間の平和の祈りに参加した。

第4節 米国政府の政策

  米国大使館は信仰の自由の状況を注意深く観察し、少数派宗教団体およびNGOに接触し、信仰の自由に関して日本政府と話し合った。

  在日米国大使館の代表は、さまざまな宗教団体や宗教指導者と会合を持った。大使館の担当官は、ユダヤ人社会、およびユダヤ人社会と日本人社会との交流について、日本にいるラビ(ユダヤ教教師)の1人と意見を交わした。大使館の代表は、宗教的拉致と強制改宗について、統一教会の指導者らと話をした。大使館の担当官は、大多数がイスラム教徒のロヒンギャ族の代表と会合を持ち、この代表から、ビルマ国内での宗教的迫害を恐れるロヒンギャ族の難民認定に日本政府が消極的であることについて報告を受けた。大使館職員はイスラミックセンター・ジャパンの代表から話を聞いた。この代表は、日本政府とイスラム教徒社会との関係の概要を述べ、同センターが関与している宗教間の取り組みについて説明し、自由な礼拝の制限についての報告は同センターのメンバーからはないと述べた。大使館の代表は、法輪功学習者が報告する懸念について学ぶため、こうした学習者とも会合を持った。