オバマ大統領が5年以上前にCIAの尋問方法を禁止した理由
*この日本語文書は国務省の国際情報プログラム課により運営されているウェブサイト「シェアアメリカ(ShareAmerica)」に2014年12月9日に掲載された記事の参考のための仮翻訳で、正文は英文です。
米国の情報機関を監視する上院情報特別委員会は、オバマ大統領が2009年の就任直後にやめさせたCIAの拘束・尋問方法に関する報告書を公表した。
オバマ大統領は本日(12月9日)、この情報の機密解除と公表を支持すること、また過去のこのような行為が、現在直面するテロの脅威に対する米国の取り組み方を反映するものではないことを明確にした。
米国同時多発テロ後、さらなる攻撃が起きるかもしれないという当然の不安と、これ以上悲惨な犠牲者が出ることを防がなければならないという責任から、前政権はアルカイダを追及し、米国に対する新たなテロ攻撃を防ぐ方法について、苦しい選択を迫られた。先に述べたように、米国はあの困難な時期に多くの正しいことを行った。しかし同時に、我々が取った行動の中には我々の価値観に反するものもあった。だから私は就任直後に拷問を明確に禁止した。なぜならばテロと戦い、米国の安全を守る最も効果的な方法の1つは、国の内外を問わず我々の理想を守ることだからだ。
我々は米国の国力のあらゆる要素に頼ることになる。その中には我々の建国の理想の力と手本も含まれる。だから私は、今日公表された報告書の機密解除を一貫して支持してきた。完璧な国はない。だが米国の強みの1つは、堂々と過去と向き合い、不完全な点を認め、修正して改善する姿勢だ。これこそ米国が特別な国であるゆえんだ。
ケリー国務長官の声明からの抜粋
オバマ大統領は就任時にこの政策について新たなページをめくり、就任した最初の週に拷問を禁止し、拘束・尋問プログラムを終了させた。こうした行為を終わらせたことは、簡単だが説得力のある理由で正しい。つまり我々の価値観と相容れないからだ。こうした行為は我々らしくなく、我々がこれまで培ってきたものではない。なぜならば世界で最も大きな力を持つ国は、安全を守ることと価値観を推進することのどちらかを選ぶ必要はないからだ。
(オバマ大統領とケリー国務長官の声明の全文を以下に掲載)
オバマ大統領は就任後3日目に大統領令を出し、2001年9月11日の同時多発テロ以降、米国の情報機関が採用していた尋問方法を禁止した。
オバマ大統領の声明の全文
歴史を通して、米国ほど自由、民主主義、そして世界中の人々が生まれながらに持つ尊厳と人権を擁護するために多くのことをしてきた国はない。我々は米国民として、我々の安全を守るために働く同胞に大いに感謝しなければならない。その中にはCIAをはじめとする情報機関で献身的に職務に取り組む職員がいる。9.11同時多発テロ以降、情報機関の職員はアルカイダの中核を壊滅させ、ウサマ・ビンラディンに対し公正な裁きを行い、テロ活動を妨害し、テロ攻撃を阻止するため、たゆまず努力してきた。CIA本部の殉職者を慰霊する壁に厳粛に刻まれた星の列は、我々を守るために命をささげた職員をたたえている。米国の情報機関職員は国を愛しており、彼らの勇気ある奉仕と犠牲の上に我々の安全がある。
米国同時多発テロ後、さらなる攻撃が起きるかもしれないという当然の不安と、これ以上悲惨な犠牲者が出ることを防がなければならないという責任から、前政権はアルカイダを追及し、米国に対する新たなテロ攻撃を防ぐ方法について、苦しい選択を迫られた。先に述べたように、米国はあの困難な時期に多くの正しいことを行った。しかし同時に、我々が取った行動の中には我々の価値観に反するものもあった。だから私は就任直後に拷問を明確に禁止した。なぜならばテロと戦い、米国の安全を守る最も効果的な方法の1つは、国の内外を問わず我々の理想を守ることだからだ。
本日公表された上院情報特別委員会の報告書は、同時多発テロ後に米国が取った対応の一要素について詳しく述べている。それは私が大統領に就任直後、正式に終了させたCIAによる拘束・尋問プログラムについてだ。報告書は、米国外の秘密施設でのテロの容疑者に対し厳しい尋問方法をとった、問題のあるプログラムについて記録している。この報告書により、こうした過酷な方法は国家としての価値観に相反するだけでなく、我々のより広範なテロ対策の取り組みや米国の安全保障上の利益に反するという、私が長年抱いてきた考えをより強固なものにしている。さらにこうした尋問方法によって、国際的な米国の立場に大きな傷がつき、同盟国やパートナー諸国と共に我々の利益を追求することが困難になった。だからこそ、私は今後も大統領としての権限を行使し、米国がこうした方法を再び取ることがないようにする。
米軍最高司令官として、私には米国民の安全を守る以上に重要な責任はない。だから今後も容赦なくアルカイダ、その関連組織、その他の暴力的な過激派と戦う。我々は米国の国力のあらゆる要素に頼ることになる。その中には我々の建国の理想の力と手本も含まれる。だから私は、今日公表された報告書の機密解除を一貫して支持してきた。完璧な国はない。だが米国の強みの1つは、堂々と過去と向き合い、不完全な点を認め、修正して改善する姿勢だ。これこそ米国が特別な国であるゆえんだ。本日公表された報告書が、古い議論を蒸し返す新たな理由になるのではなく、このような尋問方法をあるべき場所、つまり過去のものとする一助となることを期待する。また本日は、我々が信奉する価値観を支持することは、我々を弱体化するのではなく、さらに強くするということ、そして米国は、これまで世界が類を見ない、自由と人間の尊厳を最も強力に支持する国であり続けることを再確認する日でもある。
ケリー国務長官の声明の全文
米国の民主主義制度の下では、自国の歴史を認識してこれと取り組み、過ちを認め、正しい方向に向かうことができる。本報告書の公表により、これこそ米国の強みの1つであることをあらためて確認できた。これで米国の歴史の1つの章が終わる。オバマ大統領は就任時にこの政策について新たなページをめくり、就任した最初の週に拷問を禁止し、拘束・尋問プログラムを終了させた。こうした行為を終わらせたことは、簡単だが説得力のある理由で正しい。つまり我々の価値観と相容れないからだ。こうした行為は我々らしくなく、我々がこれまで培ってきたものではない。なぜならば世界で最も大きな力を持つ国は、安全を守ることと価値観を推進することのどちらかを選ぶ必要はないからだ。
この報告書は、今から5年前に何が行われたかを明らかにするものであり、我々は自国の歴史について議論し、再び将来に向かうことができる。
その議論をするにあたり私が強調したいのは、この時期を振り返るのは気詰まりで不快だが、誰であっても、この時期が情報機関の特性を示していると考えないことが重要であるという点だ。国務省や外交官、その家族が日々安全でいられるのは、CIAをはじめ情報機関の職員のおかげだ。情報機関の職員は、我々外交官や軍人と同じように国に仕える誓約をする。我々の安全を守り、米国の外交政策と安全保障を強固にするため自らの生命を危険にさらす。今回公表された報告書の恐ろしい事実は、決して彼らの人となりを示すものではない。こうした背景は、我々が歴史をどのように理解するかという点でも重要だ。
Original English version of this article located here.
掲載 2014年12月16日