信仰の自由に関する国際報告書(2014年版)―日本に関する部分

*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

米国国務省民主主義・人権・労働局

2015年10月14日発表

エグゼクティブ・サマリー

  日本国憲法は信仰(信教)の自由を規定している。政府は法により信仰の自由を保護し、宗教実践者の権利を保障し、社会における尊重と寛容を促進している。政府は、ビルマのイスラム教徒ロヒンギャ族や中国の法輪功学習者など、母国で迫害を受けていると申し立てた一部の宗教信者に保護の地位を付与した。

 統一教会の会員は、一部の新たな会員が、改宗させることを目的に、家族により拉致および監禁されたと引き続き述べた。

 在日米国大使館の代表は、信仰の自由の状況を観察し、寛容と受容を促すため、さまざまな宗教団体や宗教指導者と会合を持った。大使は、宗教的寛容を促進するため、イスラム教徒のためにイフタールを主催した。大使館の代表は、統一教会会員や法輪功学習者など、懸念を報告するさまざまな少数派宗教団体と会合を持った。

1節 宗教統計

 米国政府は、日本の総人口を1億2710万人と推計している(2014年7月の推計)。文化庁の2012年の報告によると、各宗教団体の報告による信者数は、合計1億9700万人であった。この数字は日本の総人口よりも大幅に多く、日本国民の多くが複数の宗教を信仰していることを反映している。例えば、多くの仏教徒は神道など他の宗教の儀式や行事に参加している(神道は日本固有の宗教である)。

 文化庁の統計によると、各宗教団体が報告した信者数は、神道が1億人、仏教が8500万人、キリスト教が190万人、その他の宗教が900万人いる。「その他」の宗教には、イスラム教、バハーイー教、ヒンズー教、およびユダヤ教が含まれる。

 主に精霊信仰を実践している先住民のアイヌは、かつて本州北部および北海道に集中していたが、現在は多くが首都圏に居住している。ほとんどの移住者や外国人労働者は、仏教または神道以外の宗教を実践している。

2節 政府による信仰の自由の尊重の現状

法的枠組み

 日本国憲法は、何人に対しても信仰の自由を保障し、国は宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならないと規定している。また国民は、憲法が保障する自由および権利を濫用してはならず、これらの権利を公共の福祉のために利用する責任を負うと定めている。

 法により、国および地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならないと規定されている。また宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養および宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならないと定められている。

 規則により、刑事収容施設の被収容者が行う礼拝を禁止してはならないと規定されている。労働組合法は、何人も宗教によって労働組合員の資格を奪われないと定めている。

 文化庁によると、約18万2000団体が、国および都道府県により、宗教法人として認証されている。その数の多さは、宗教団体の地方組織が個別に登録していることを反映している。政府は、宗教団体の登録または認証申請を義務付けてはいないが、認証された宗教法人には税制面の利点がある。

 法により、認証を受けた宗教団体を監督するためのある程度の権限が、政府に与えられている。また法により、認証された宗教団体に、資産を政府に開示することが義務付けられ、政府には、営利活動に関する規定に違反している疑いがある場合に調査を行う権限が与えられている。宗教団体がこうした規定に違反した場合、当局は当該団体の営利活動を停止する権限を持つ。

政府による実践

 政府は、法輪功(法輪大法とも呼ばれる)の中国人学習者に、人道的配慮による一時的な保護の地位を付与した。この人道的配慮による一時的な地位により、法輪功学習者は日本国内にとどまり、日本政府が発行した渡航書類を利用して海外に渡航することができた。

 政府は、ビルマで民族的・宗教的迫害を受けたと申し立てて来日したイスラム教徒に短期滞在ビザを発給した。これらのイスラム教徒のほとんどは日本に5年以上居住しており、中には15年以上居住している者もいた。報告によれば、日本に不法入国し、公式の再定住プログラムに参加していない者もいた。短期滞在ビザは頻繁に更新する必要があった。短期滞在の地位には、ある程度の国外退去の法的リスクが伴ったが、ビルマに国外退去させられた者はいなかった。大使館の担当官は、大多数がイスラム教徒のロヒンギャ族の代表と会合を持ち、この代表から、ビルマ国内での宗教的迫害を恐れるロヒンギャ族の難民認定に日本政府が消極的であることについて報告を受けた。

3節 社会による信仰の自由の尊重の現状

 統一教会の会員は、引き続き拉致を報告した。国連人権委員会は、日本の第6回定期報告に関する7月14日の最終見解の中で、「新宗教運動」への改宗者を再改宗させることを目的とした、家族による拉致および強制監禁の報告について懸念を表明した。同委員会は、「宗教または信仰を持つ、あるいは選ぶ自由を害するおそれがある強制を受けない権利を全ての人に保障するための実効的措置をとる」ことを政府に求めた。

 統一教会の会員に対する拉致と強制的なディプログラミングの報告件数は、1990年代以降、大幅に減少したが、統一教会および非政府組織(NGO)の「国境なき人権」は、同教会の会員ではない家族による会員の拉致と強制的なディプログラミングが継続して発生していると述べた。統一教会は、同教会の会員が拉致された事例が9件あり、10人が拉致されたと報告した。これらの事例で統一教会の会員は、拉致された会員から直接連絡を受けるか、あるいは会員が「行方不明」なった後、これらの会員の家を訪れた。その後6件については警察に通報した。統一教会によると、家族は9人の会員を強制監禁から解放したが、そのうち2人は地元当局が介入してから5日後に解放された。解放された会員のうち5人がその後脱会した。拘束された10人目の会員は、2014年末時点で依然として「監禁」状態にあった。

 2月、報道によれば、31の公立図書館でアンネ・フランクの「アンネの日記」265冊が破損しているのが見つかった。3月、当局は被疑者を逮捕したが、被疑者が心神喪失の状態にあり刑事責任を問えないとみなされたことから、検察は不起訴処分とした。逮捕から1週間後、安倍首相はアムステルダムの「アンネ・フランクの家」を訪れ、破損事件について残念だと述べた。

 12月、産経新聞は、ホロコーストを否定し、米国同時多発テロや2011年の地震、津波および原子力発電所事故などの大惨事の責任をユダヤ人またはイスラエル国家と関連付ける3冊の反ユダヤ本を宣伝する広告を掲載した。産経新聞は、ユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が同社社長に抗議を申し入れたことを受け、社長から同センター宛に謝罪の書簡を送付した。その2日後、産経新聞は、読者およびユダヤ・コミュニティーに対する謝罪文を掲載した。

 2014年には宗教の違いを超えた意義深い取り組みが継続された。2月、仏教、神道、イスラム教の信者が参加するInterFaith駅伝が、京都府で開催された。10チーム、計40人が参加し、世界平和を祈った。

 8月4日、滋賀県の比叡山天台宗延暦寺において、宗教の違いを超えて世界平和への祈りをささげる「第27回比叡山宗教サミット」が開催され、世界中から約1000人の仏教、キリスト教、神道信者が参集した。

 11月、ウクライナ正教会は、カトリック教会と英国国教会の信者と共に、ホロドモール飢饉の犠牲者を追悼するエキュメニカル合同礼拝を開催した。

 イスラミックセンター・ジャパンのメンバーは、引き続き教会で講演し、キリスト教徒、ユダヤ教徒、仏教徒と共に宗教を超えた平和の祈りに参加した。

4節 米国政府の政策

  米国大使館は、信仰の自由の状況を注意深く観察し、統一教会会員や法輪功学習者などの少数派宗教団体およびNGOに接触し、法執行官を含む日本政府と信仰の自由について話し合った。

 在日米国大使館の代表は、さまざまな宗教団体や宗教指導者と会合を持った。6月30日、宗教的寛容を促進するため、大使はイスラム教徒のためにイフタールを主催した。大使館の担当官は、ユダヤ人社会の交流活動についてさらに学ぶために、ユダヤ人社会の指導者と会合を持った。また仏教に根ざす日本の一宗教である創価学会の会員とも、同学会の公共教育および社会事業の取り組みについて意見交換するために会合を持った。在日米国総領事館もまた、それぞれの管轄地域で宗教団体と交流した。